「気合で何とかする」なんていう行動、頻繁にやってませんか?
世の中気合ですべて何とかなると思っていたら大間違いです。
「いや?俺はずっと気合でやってきてる。根性がない奴なんか話にならん」
これは勘違いです。
根性で始めた結果、頑張る意味を見出せるようになったため、結果的に根性が無くても継続ができるようになっているだけです。
いくら気合に頼ったところで、報われる経験を得られない環境では燃え尽きます。
「その燃え尽きってよ、言う奴増えたよな?しかも最近の若い連中に多いわ」
これも気のせいです。
年齢を重ねている方でも燃え尽きを感じている人はたくさんいます。だいたい、若いって何歳から何歳のことを言っているのでしょうね。
そもそも現代では、手軽に膨大な情報に触れることが可能になっていますよね。
その影響で、今の環境と自分とのズレを感じやすくなっており「頑張るべき場所じゃない」と自覚するアンテナが無意識に鍛えられています。
燃え尽きる前に撤退する、一歩引くという行動を取っている。
もしくは
深刻化が進むストレス社会により、頑張る事が難しいと感じる層が増えた。
ともいえるでしょう。
根性は誰にでも備わっています。
むやみに使われるようにならなくなっただけです。
というのを前編で細かくお伝えしました。
このように、気合に頼って行動を促すことを作業興奮と言います。
前置きが長くなりました。
そこで質問です。
Q.頑張れない時って、どう感じますか?自分のことをどう思いますか?
多くの方は「やる気ないなー」「今日はだるいなぁ」と思うでしょう。
私としてはその後「疲れてるのかな?」「ちょっと体調が良くはないか?」「今日の家事・仕事・学校はこなすけど、その後はちゃんと休もう」と、心身のサインに耳を傾けてほしいところです。
なのですが、気合に頼るという考えが癖になるとサインなんてガン無視、フルシカトです。
「たるんでるなぁ」「気合が足りてないなぁ」「なまけてるなぁ」「自分今、怠けようとしてるな?喝!!」
と、ドッジボールで顔面を狙う勢いで自分を傷つけ始めます。
今回はそのやばさを解説し、最後は頑張りどころの見極め方を解説して終わりにします。
自分のやる気が足りないという誤解が癖になる可能性 エビデンスレベル1
本当は調子が悪いのに、疲れているのに、ドッジボールで顔面ばかり狙われたらどう思いますか?
めちゃくちゃむかつきますよね?泣きたくなりますよね?ストレスマッハですよね?
それを自分にやって自分で苦しんでいる人がまだまだいます。
そこで、こんな風潮を見た・体験したことはありませんか?
「他の人は耐えてるからさ、やる気が無いってことだと思うぞ」
「こんな事でしんどくなるなんて、自分は何事もやる気が無いんだなぁ・・」
「すぐ体調崩すよな?やる気ないんじゃないか?」
「朝だるいし仕事行く気ない。やる気ないわー」
本当にやる気が無いだけのパターンもゼロではありませんが、断言します。
「やる気が無い」だけで片付く話ではありません。
心身のSOSを無視してこのような誤解をすることは、遠くない未来からみても危険です。
どれぐらいやばいと思いますか?
手持ちのポケモン6匹ともPP全切れでHPも3分の1以下で初見で四天王に「わるあがき」で挑むぐらいやばいです。
「怪我は診るのに心は診ない」
こんな言葉を聞いたことはありませんか?
例えば
足が折れていて、特に危機的状況でもない時に「走れ、さぼるな」という人はおつむが弱い以外の何でもありません。無視して治療に専念すべきです。
喉が腫れているのに「声出せ!」も悪い意味でぶっ飛んでます。
その時良ければ他人の体がどうなろうとそれでいい。という考え方です。
では、心が壊れかけているのに「やる気出せ」「やる気ないね」も同様ではないでしょうか?
前編でもお伝えした燃え尽き症候群や、作業興奮による慢性疲労の状態に「やる気出せ」は休養が必要な人に対して、酷使を意味する暴言です。
そんな状態で「最近なんだか気が乗らない」と感じれば、心の疲れからくるサインである可能性が高く、気が乗らなくて当たり前です。
「やる気を出せ」というプレッシャーがある環境では、バーンアウト(燃え尽き症候群)が顕著に観察されます。
Maslach, C., & Leiter, M.P. (2016).
Understanding the burnout experience: recent research and its implications for psychiatry.
World Psychiatry, 15(2), 103–111.
慢性疲労状態にある人に「もっと頑張れ」と言うことは、精神的・神経的にさらなる損耗を引き起こすことが実証されています。
Jason, L.A., et al. (2009). A Review of Chronic Fatigue Syndrome: Symptoms, Causes, and Management. Current Pain and Headache Reports, 13, 389–398.
「やる気が出ない」「気が乗らない」状態は、神経系の過活動による自己防衛的抑制反応であるとされ、無理にやる気を出す行為が逆効果であることが指摘されています。
Porges, S.W. (2007). The Polyvagal Perspective. Biological Psychology, 74(2), 116–143.
研究では、感情知性と自己評価の関係性に焦点を当て、このような関連が述べられています。
Keefer, K.V., Parker, J.D.A., & Saklofske, D.H. (2009).
過剰な作業モチベーションに頼る人は、自分の精神的・身体的疲労を「甘え」とみなす傾向があります。
これは「やる気が出ない自分」=「自己管理できない自分」=「根性が足りない」という自己非難戦略に陥りやすいことを示します。
実際にはバーンアウトや情緒的消耗が原因であるにもかかわらず「自分が悪い」と考えることで状況をさらに悪化させる。
Emotional intelligence and physical health.
In Assessing Emotional Intelligence (pp. 191–210). Springer.
めちゃくちゃ恐ろしくないですか?
この考えを他人に押し付けるようになってしまっては最悪です。
そんな人が近くにいたら危険ですよね?
「でもさ、人生を頑張らなくていいってわけじゃないでしょ?ここぞって時には動かないとぐうたらしちゃうよ。そういう意味では喝を入れてくれる人も大事でしょ?」
「無理するな、変なとこで頑張るなというのはわかった。でも、そもそもどんな基準でそんなの判断できるの?」
もちろん、嫌なことは全部投げ出せという話ではありません。
自分が本当に望んだ道であり、やる気がみなぎる事だとしても頑張るべきポイントは必ず生じます。
それでも停滞することも、もちろんあります。
その場合は、作業興奮を使って内発的動機に結び付くか試す価値があるでしょう。
そこで、作業興奮を使うまでもない縁のない事柄はこのように見分けてください。
作業興奮を使ってはいけない例 エビデンスレベル3
結論からお伝えすると、自分の価値観を満たさない行動、長期的に見て得にならない、報われない事に対しては、いくら作業興奮で助走をつけても長続きしないでしょう。
エネルギーと時間の無駄遣いです。
察しがついてる方もいらっしゃるかもしれませんが
「気合で何とかするっていうのをいつまで続ければいいの?」
だったり、自分の内側から興味が湧きそうにない、かつ、あらゆる箇所へも動機が派生しそうもないような事柄には作業興奮を使うのは微妙です。
おそらく作業興奮に頼っても意味がないでしょう。
具体例を紹介します。
「上司に怒られたくない」「親がうるさいからやらなきゃ」
こんな思いっきり他人軸なものはストレスです。
このように自分の価値観ではなく、他人の目を意識して無理やり始める行動にはGOサインを出さないようにしてください。
これは「統制的動機」(外発的モチベーション)に該当し、作業興奮による脳のドーパミン活性が持続しにくいです。要するにゾーンに入らないってことです。
よって、長期的には燃え尽きの原因になると思ってください。
「怒られたくない」「嫌われたくない」など、自分のためじゃない行動は、始めても心がついてこず、疲弊します。
これは自己決定理論に基づいて説明できます。
「簿記の勉強を始めたけど、やっぱり数字に全然興味がわかない」
「部屋の模様替えを始めたけど、そもそもインテリアに関心がない」
この場合は、そもそも「報酬感が得られるような事柄だ」という風に認識していないため、作業興奮を使うのはおすすめしません。
作業興奮によって「とりあえず始める」ことでスイッチは入るのですが、根本的に報酬感を感じられないタスクは、脳が途中でやめる指令を出しやすいです。
その結果「始めたけど、どんよりするだけ」ということになりかねません。
「変なことに時間使っちゃったなぁ」と、後悔することもあるかもしれません。
これは、報酬系と作業モチベーションの関係から解説ができます。
「過去に人前でプレゼンして失敗した」
「営業で否定された経験が辛い」
このような心理的ブロックが強い行動って誰でもありますよね。
これを作業興奮で無理やり突破しようとしても、ストレスが強いためおすすめしません。素人がいきなりモンスターボックスに向かって「やってやる!」と走り出したところで「やっぱ無理!」ってなって引き返しますよね?壁が高すぎるんです。
脳は「やろう」としても、同時に危険回避の警戒モードが発動するため、作業興奮によって気持ちよさが機能しにくくなります。うまくいってて怖い、いつか失敗するんじゃ・・と、常に警戒しちゃうんです。
情動ストレスと遂行行動の関係で解説ができます。
まとめ
気合という手段がいかに寿命の短い方法で、付け焼刃な考え方かわかったでしょうか。
確かに今日までも言われ続けているため、一定の根拠がある方法だという事実は変わりませんが、気合に頼ることで全てが習慣にできたり成果が出るまで頑張り続けられると思ったら実は大間違いなんです。
助走の部分を作業興奮に頼って、たまたま波に乗れて興味が惹かれたから作業興奮が長期的に意味があるように見えただけで、実は自己理解もないまま気合に頼るだけでは運ゲーです。
運ゲーにもかかわらず本当だと信じ込んで気合に頼りまくれば、最悪の場合、数年間再起不能になります。
気合、気合、根性、頑張りが足りない。こんな事ばかり言ってる人が周りにいませんか?
そういう環境にいませんか?
具体的な根拠のある話はちゃんとされていますか?
気合とか頑張るって実は抽象的すぎることに気づいていますか?
思考停止で消耗し続けられている環境に目を覚ますきっかけとなれば幸いです。
今回はここまでになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
『自分を変える習慣力』大平信孝
『モチベーション3.0』ダニエル・ピンク
『バーンアウト:燃え尽き症候群の予防と回復』水島広子
『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』ケリー・マクゴニガル
『自分を操る超集中力』メンタリストDaiGo
『感情的にならない気持ちの整理術』和田秀樹
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