「ちゃんと寝たはずなのにだるいんだよね」
「寝てばかりなくせに体がしんどいのなんで?」
「全然体を動かしてないのに体が重い」
なぜだと思いますか?
この症状、私の引きこもり時代は特に多かったですが、今もまだまだあります。
多くの人が、疑問にこそ思わなくても頭のどこかで感じているのではないでしょうか。
さて、今回はこの原因が睡眠が悪いという話で進めるわけではありません。
これ実は、ストレスがかかりすぎて心が疲弊しているため、脳が活動をストップさせようとして体にブレーキをかけている可能性があり、だから体が重くなっているのかもしれません。
当てはまっている方は心のケアを検討してみてください。
脳が体を動かしている エビデンスレベル1
まず、当たり前ですが体が動くという現象は脳が信号を送ることで成り立っています。
歩く、走る、手足を動かすというのは脳が体に、ものすごい速さで「そうしなさい」と指示しているからできることです。
なので「仕事では手を動かし、口は閉じ、歩き回れ」と脳が体に信号を送っているんですね。
体が動くという現象は、脳が筋肉へ運動指令を送ることによって実現しています。
Scott, S.H. (2004).
これは神経科学の世界的権威によっても示されており、研究によれば『脳が最適なフィードバック制御を行うことで、我々は意図的に手足を動かせる』と述べられています。
Optimal feedback control and the neural basis of volitional motor control. Nature Reviews Neuroscience, 5(7), 532–546.
脳は心とつながっている エビデンスレベル1
そして、心を生かすも殺すも脳が主導権を握っています。
心の声に従って休息をとったり、娯楽を選んだり、頑張ることを選択できれば心を生かそうと脳が働いているといえます。
逆に、心が疲労を訴えているにもかかわらず
「今休息したら周りから変に思われるかも」
「ここで遊んだら後で痛い目を見るかも」
「自分なんて休むほど頑張ってない」
こんな思考がよぎって心の声を無視すると心を傷つけてしまいます。
脳の前頭前皮質と扁桃体の連携が【心】を守っている
Rodman, A.M. et al. (2019).
研究では、感情をコントロールする際、前頭前野が扁桃体の活動を調整していることが示されました。
これは「脳が心を傷つけるか・守るかの鍵を握る」生理的証拠です。
否定的な感情が生じたとき、その感情を脳がうまく制御しないと情緒不安定・抑うつ傾向が高まるともされています。
Neurobiological markers of resilience to depression following childhood maltreatment. Biological Psychiatry.
誰でもネガティブになる瞬間ってありますよね。
そのネガティブ感情をいかにしてマイナスになりすぎず処理できて、追加でネガティブになる事が無いようにコントロールできるかが重要です。
それがうまくいかないと、情緒不安定や抑うつの傾向が高まるという意味です。
「心の声を無視すること」が自己否定感・ストレス耐性低下につながる
Yao, Z.F., & Hsieh, S. (2025).
研究では、自己否定的な感情が生じ、それを自分で評価するときに前部帯状皮質と扁桃体が高く活性化されることが判明されました。
よって「自分は休む価値がない」といった思考は、神経系にダメージを与えることを示しています。
Amygdala and anterior cingulate cortex activations during emotional Stroop and self-negativity appraisal. Personality and Individual Differences.
「疲れた・休みたい・しんどい・もう嫌だ・自分なんてつまらない」といった自己否定が生じたとき、それを押さえつける思考「他の人と比べたら疲れた部類に入らない・自分休みすぎ・しんどいとか甘え・自分の人生こんなものだ」のような、諦めた評価をつけると神経系にダメージになるということです。
長期的に心の声を無視すると「心の傷」は脳に現れる
Jentsch, V.L., et al. (2019).
研究では、慢性的なストレスが感情制御ネットワーク(ACC–扁桃体–PFC)を損傷させることが明らかになっています。
これは「心を無視し続けることが、脳の機能そのものを壊す」という実証です。
Restoring emotional stability: Cortisol effects on cognitive emotion regulation. Behavioural Brain Research.
心が疲弊すると脳がストップをかける エビデンスレベル2
さて、タイトルにあったように
「身体的には回復してるはずなのに体が重い」
この現象こそ、心のサインに対して脳がこう反応しているといえるでしょう。
「今ストレスやばいから活動しないで」
と、体に信号を送っているかもしれません。
これが
「寝てるはずなのに体が重い」
「休日しっかり休んだのに仕事が近くなると体がしんどい」
「あの人より体を動かしてないのに体がだるすぎる」
の正体だったりもします。
ストレス源の整頓 エビデンスレベル2
こんな状況で正論を受け取っても傷つくだけです。
「え、その程度しか動いてないのに?まだまだだねぇ」
「まだ何もやってないじゃん」
「これで疲れてたらもたないよ?」
「遊んでるから休んでるのにだるいんだよ」
絶対に真に受けないでください。
同じストレスでも人によって、それを受けた事でどう反応するかは違います。
脳のキャパシティも違うため、今のあなたにその発言が正しいとは限りません。
なのにこれらを真に受けて、脳が心の声を無視して体にも心にも正論を用いて鞭を打つようになってしまったら心の病待ったなしです。
鬱まっしぐらといっても過言ではありません。
脳のキャパシティとストレス耐性には「個人差」がある
Sandi, C., & Haller, J. (2015).
研究では、前頭前野と扁桃体の連携において、人それぞれの神経回路の脆弱性があり、同じストレスでも脳の反応に差が出ると報告されています。
結論
社会的ストレス(他人の評価や正論)に対して脳がどう耐えるかは脳構造の個人差に依存しています。
Stress and the social brain. Nature Reviews Neuroscience, 16(5), 290–304.
正論などの社会的評価は扁桃体を過敏にさせる
Van Wingen, G. A., et al. (2011).
ストレスに対する知覚が強い人ほど、扁桃体(情動処理)が過剰反応し、前頭前皮質による制御がうまく働かなくなることを示しました。
これは「理屈では正しいこと(正論)」が、感情的には脳を傷つける原因になりうる証拠です。
Perceived threat predicts the neural sequelae of combat stress. Molecular Psychiatry.
心が不安定なときほど、正論は「毒」に変わる
Kaldewaij, R., et al. (2021).
前頭前野の機能低下が起きている人(メンタルが弱っている状態)では、感情のコントロールが難しくなり、正論を含む否定的フィードバックによってPTSD症状のリスクが増加すると報告されています。
Anterior prefrontal brain activity during emotion control predicts resilience to post-traumatic stress symptoms. Nature Human Behaviour.
アンチによって心の傷がとんでもない事になる理由とも言えます。
なぜ言葉の暴力が年々厳しくなりつつ、法律にも適用されているのかわかったでしょうか。
メンタルの弱りは、仕事などによる疲れが継続し、回復しきれなくても生じ始めます。
そんな状態での否定的な言葉はいつもよりもきつく感じます。
普段全然怒らなくても妙に腹が立つこともあるでしょう。
これは、嫌いな仕事を続けていると性格が悪くなる理論にも基づいています。
まとめ
身体が回復しているのに動けない事を怠けであると断定するのは危険です。
「いや・・ほんとに怠けなんだよ。だって一日中遊んでる引きこもりだよ・・?」
一日中遊んでしまう。つまり、ずっと短期的快楽にのめり込んでしまうと言い換えることができます。
短期的快楽にのめり込んでしまう理由は脳の損傷とも言われています。
本当に怠けでしょうか?
壊れている所へ鞭を打つのっていじめだと思いませんか?
受け止めきれない状態に正論を突き付けるのも暴力です。
何の責任もとらない正論が世にはびこっていますが、それに心を振り回されないよう自分を大事にしていいんです。
と、肯定されたところで辛い事には変わりませんよね。
早く抜け出したいですよね?
そのための一歩となる考え方を後編ではお伝えしていきます。
具体的には、何が自分を苦しめているのかを全部洗いだす方法。
- おすすめの書き方
- 悩みへの向き合い方
- 悩みのマインドマップ
などを開示していきます。
今回はここまでになります。
後編でまたお会いしましょう。
参考文献
『脳を鍛えるには運動しかない』ジョン・J・レイティ
『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』ケリー・マクゴニガル
『なぜあなたの疲れはとれないのか』梶本修身
『脳を壊す習慣』田中茂樹
コメント