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発散のために遊んでいるつもりが、罪悪感やそれに近い感情を抱く事ってありますよね。
「ほんとはアレやらなきゃいけなかったのに・・」
「あと少しのはずがずっと遊んでしまった・・」
「遊ぶのだけはできるのに、やる事はぜんっぜんやれない」
私もめちゃくちゃあります。
これは、脳の問題で依存してしまっている場合もあれば、プロたちがつくった仕掛けにハマり遊びから抜け出せなくなっているパターンもあり、総じて自律できていない場合もあります。
しかし、実はその背後には、今の生活に満たされない感情が潜んでいる事だってあります。
そんな自分を責めることは、心をさらに疲れさせるだけなんです。
ちょっと冷静になって「その行動が自分にとっては一時的な満足を提供しているのでは?」といった視点が大切ですよ。
さらに、自己評価が低いと自分に対する肯定感が薄くなり、なおさら短期的な快楽で気を紛らわせたくなります。
ゲームやSNSの依存は、そのような短期的な報酬によって一時的に心の隙間を埋めようとしている現れかもしれません。
自己認知や満足感の欠如と依存行動の関係 エビデンスレベル3
「そうは言っても、単に娯楽にのめり込みすぎてるだけじゃないの?」
「実際、気分良くなってるんだしそれが気持ちよくて抜けれないだけでは?」
「そこでしか満たされない奴のそれっぽい理屈でしょ」
娯楽にのめり込みすぎている。抜け出せないだけ。というのはただの自制の話です。
自制ができない背景には、冒頭で記した通り精神のコンディションが影響してくることがわかっています。
これを、単に自分を制御できないだけ。というのは自己理解不足です。
自分を制御できない背景があるにも関わらず娯楽を否定しては、自分をより苦しめます。
「何故のめり込んでしまうのか」「もしかしたら理由があるのかも」という可能性を疑い、その背景までわかれば自分を制御できるようになるかもしれません。
「ただの怠けに理由もあるわけないだろ。綺麗ごとにしようとすんな」
本当にそうでしょうか。その反対意見にエビデンスはありますか?
「いちいちエビデンスがないと反論しちゃいけないのか?結局ただの怠けだろ」
エビデンスの可否がわからないにも関わらず、理由がある人々の気持ちを押さえつけ傷つける事へ繋がるのなら私はエビデンスを求めます。
根拠のない暴言・暴力は私は認めるべきでないと思っています。
さて、依存行動とその背景によっては、ほんとにただの怠けではないという根拠を紹介します。
心理学的研究の結論では、ゲーム依存症やSNS依存は、自己評価の低さや主観的幸福感の欠如と強く関連しているとされています。
①Keyes (2005)
特に、自分の生活に満足感を感じられない人ほど、短期的な快楽を得られるゲームやSNSに依存しやすいです。
①主観的幸福感が低い個人は、短期的な満足感を提供する行動(例えば、SNSでの「いいね」獲得やゲームの勝利)に過度に依存する傾向があります。
②ゲーム依存において、現実生活のストレスや不満をゲーム内で補償する「補償仮説」も提唱されています。
現実で得られない満足感や達成感を、ゲームの中で補完しようとする行動が示唆されています。
②Kardefelt-Winther (2014)
よって、今が辛いからこそ楽しい世界でなんとか自分を取り持とうとしている事の現れです。
いわば生存本能です。
「うん、だからその世界でしか満たされない奴のそれっぽい理屈でしょ」
それっぽい理屈ではなく、科学的に確認された脳の仕組みです。
よって、このように反論をする人も、環境の変化で現実生活が苦しくなれば、この傾向が強まる事もわかっています。
逆に、現実世界で満たされる方法を今は知らないだけで、ふとしたきっかけで満たされる世界が娯楽の世界から現実の世界へ変わるパターンも十分にあります。
今の瞬間だけを見てその世界でしか満たされない奴とくくるのは早計です。
人は変化しますし、今余裕をもって現実と対面できている人が環境の変化で逃避行動や依存行動をとる事もよくある話です。それがどれぐらいの年月で起こるかはわかりませんが、知識の量で早くも遅くもなると私は思っています。
よって、苦しんでいる人を下に見たり軽蔑するのは論外ですが、「全く別の人間の話だ」といった解釈は認識が甘く、誰でもその状況になりえるというのを覚えておいてください。
人の性格は環境が作ります。
ドーパミン報酬系の影響 エビデンスレベル2
しかしなぜ、依存してしまうのでしょうか。
抜け出せなくなってしまうのでしょうか。
「脳の報酬系が刺激されるためです!」
と「よくわからない単語で曖昧に結論をつけられても・・。」ですよね
先ほど出た、脳の仕組みについても見ていきましょう。
まずは報酬系ってなんぞや?という解説をします。
報酬系とは?
脳にある
腹側被蓋野(VTA)(ふくそくひがいや)
側坐核 (NAcc)(そくざかく)
前頭前野 (PFC)(ぜんとうぜんや)
扁桃体 (Amygdala)(へんとうたい)の4か所の領域を結び付け、かつ「快感」や「満足感」、モチベーション、学習に関連する神経経路のことです。
メカニズム
腹側被蓋野でドーパミンが分泌される事から始まり、側坐核で快感や報酬の感覚を手にし、前頭前野では「次同じ快感を得るにはどうすれば・・」という思考に関わり、偏桃体で感情を感じます。
これが正常に順番通り働くのは報酬系という神経回路があるからです。
難しすぎ、もっとわかりやすく
腹側被蓋野を入り口としましょう。
ゲーム等の娯楽から得る刺激を水とすると、その水が腹側被蓋野という容器に注がれ、水が変化。その水は、報酬系という名のホースをたどり、次は側坐核という次の容器に入り込みさらに変化し、それが前頭前野へ、偏桃体へ。といった流れです。
つまり報酬系とは、4つの容器をつなぐホースのようなものです。
「う、うんわかった。それがどう関係するんだっけ?」
娯楽による刺激を水と表現しましたね。
その水が腹側被蓋野という名の容器に入る事で人は快楽を感じるわけですが、この快楽の感じ方が、人のメンタルや刺激の取りすぎなどによって違ったり変化してしまうという話です。
SNSやゲームでは、短期的な報酬(「いいね」やゲームの達成感)によって、脳内の報酬系を刺激します。
①Volkow et al. (2010)
この一連の流れは、ドーパミンが分泌される仕組みと深く関係しています。
①ドーパミンの過剰分泌は、短期的な快楽を求める行動(依存行動)を助長するとされています。
報酬が得られなくなった際、満たされない気持ちがさらに悪化し、依存ループに陥る可能性があると指摘されています。
②SNS依存症患者の脳では、ドーパミン報酬系が強く活性化していることが観察されており、これは薬物依存者と類似の脳活動パターンだと主張しています。
②Montag et al. (2015)
娯楽を楽しむ。という一つの行動を取っても、明らかなやりすぎで刺激の受けすぎとなったり、快楽そのものが強すぎると「もっとほしい」「もっと強い快楽を得たい」「もう1回、あともう1回」「なんであの経験をさせてくれないんだ・・」という思考がグルグルしやすくなるという事です。
私が散々のめり込んだオンラインゲームですが、これは他者からの「いいね」に近い承認欲求や優位性、有能感を満たしつつ、クリアの快楽も得られるという面が詰め込まれたツールになります。
良い発散になる反面、刺激としては強すぎたのかもしれません。
現実逃避としての依存行動
「んー、なんかさ、現実逃避じゃないの?現実逃避を容認するとサボり癖にならない?」
確かに現実逃避という表現は的確です。
しかし、容認はするべきです。
現実逃避という概念は、ゲームやSNSに依存する背景の1つとして研究されています。
Billieux et al. (2015)
これは、自分が直面している問題やストレスから逃れるために、仮想的な空間にのめり込む行動です。
オンラインゲームの過度なプレイは、現実逃避が動機の1つとなることが多く、特に現実に満足感を持てていない人が陥りやすいとされています。
では、この現実逃避を容認すべきか問題についても触れていきましょう。
一般的に「現実逃避=悪」という見方がされることって多いと感じませんか?
実は、一時的な現実逃避は心理的には重要であり、時には必要です。
適度な現実逃避は、精神的な回復を促進するとも言われているぐらいです。
ただし、依存症のリスクがあることは知識として認識しておくべきです。
現実逃避が容認されたからと言って過度な依存症の状態に陥るとこれは問題で、社会への進出遅れの原因にもなります。過去の私です。
依存症になることで、現実から逃げることが習慣となり、根本的な問題解決が後回しになり、結果として生活に支障をきたすことになります。苦しいのがずっと、自分だけ続く感覚になります。問題解決を後回しにしているわけですからね・・
そして、これがサボり癖に繋がるかどうかという懸念ですが、必ずしもサボり癖になるわけではありません。
しかも、適度な現実逃避であればむしろリフレッシュとなり、サボり癖にもならず、かえって生産性の向上に繋がる事が多いという研究データも出ています。
休息の必要性
Herbert Freudenberger「バーンアウト理論」
「現実逃避」によって短期的にストレスを緩和し、心身の回復を助けることが示唆されています。
特に、心理学者が提唱したバーンアウト理論では、適切な休息と現実逃避が、長期的なストレス管理において重要であるとされています。
例えば「仕事のストレスと現実逃避」の関係でも、ストレスの高い環境では、適度な休息や「精神的な逃避」が生産性を高める結果をもたらすことが報告されています。
Bakker and Demerouti (2007)
依存症に対する懸念
Billieux et al. (2015)
さらに、ゲームやSNSの過度な利用が依存症を引き起こす背景として、ストレスや対処できない問題から逃避する心理があることが指摘されています。
この研究は、依存症が問題解決を後回しにし、結果的に自己効力感を低下させるという重要な洞察を与えています。

現実に満足してないとはいえ、逃避ばかりをすると・・
現実に満足できない要因となる問題点に向き合う気持ちをどんどん後回しにし、その結果、自己効力感の低下「自分ってまじで駄目な奴だな・・」「どうせ自分には無理だわ」という感情を強めてしまうという事です。
逃避のための行動がより、逃避を生むという事ですね・・・
研究では、マインドフルネスを取り入れた休息法がストレスを減少させ、生産性を高めることを示しています。
Kabat-Zinn (2003)
別の研究では、適度な休憩が創造性を高め、問題解決能力の向上に寄与することが示されています。
これにより、適度な現実逃避はむしろ生産性を向上させる可能性があります。
Pope and Galloway (2007)
まとめ
娯楽に没頭してしまうのには理由がある可能性を挙げました。
ただの怠けでは決してなく「今の満足感が低いからなんとか自分が壊れないように・・」と生存本能でもあるんです。
それって怠けでしょうか。生存戦略ではないでしょうか。
ただし、その没頭がいきすぎるから妙な事が起こるんでしたね。
過度に娯楽にのめり込まない事が、遊びすぎから抜け出す方法です。
リフレッシュ習慣のはずが、負の連鎖になってしまうのには理由があることまで解説しました。
以前私は「気になるなら遊び倒す」を推していましたが、この理論を知ると人によってはかえって逆効果なのかもしれません。
しかし
「過度って言われても・・じゃあどれぐらいならいいの?」
こんな言葉を苦い表情をしながら心に抱く方もいらっしゃるでしょう。
後編では「適度とはどれぐらいなのか?」の目安をお伝えします。
自己コントロールが難しくなっていて依存から抜け出せない人への指標となれば幸いです。
最後になりますが
今だけを見て自己否定しないようにしてください。必ず変化が訪れます。
その一歩となる知識をお届けできていれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
『インターネット・ゲーム依存症』マーグレット・ショー / アリソン・クラーク
『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン
『iGen』ジャン・M・トゥエンジ
『ブルーオーシャン戦略』W.チャン・キム
『スタンフォードの自分を変える教室』ケリー・マクゴニガル
『グリット やり抜く力』アンジェラ・ダックワース