『引きこもりの自己否定』は【電車の緊急停止にクレームを言うような見当違い】です。

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※当ブログは医療行為を意図するものではありません。エビデンスレベルの高さは治療効果や改善を保証するものではないため、身体に異変を感じている場合は必ず医師にご相談ください。

引きこもりマイナスなイメージを持っている方はいらっしゃるでしょうか。

実はそのイメージ、時代遅れです。

そして、引きこもりが慢性化している事に対し、ただの否定を続けるのは、説明書を読んでない人が「うまくいかない!」と怒っているのと同じです。

今回の記事では、引きこもりになってしまうメカニズムを解説し、初期の引きこもり継続されてしまった引きこもりの違いについても解説し、なぜ引きこもりが続くと辛くなってしまうのかがわかるような記事になっています。

原因が特定できれば、的確に心の栄養を得る方法のヒントになります。

①初期の引きこもりは緊急停止 エビデンスレベル5

皆さんに質問です。

引きこもりって、なんで起こると思いますか?

「え・・・?会社とか学校に行きたくないから?」
「働く気ない奴がかかる怠惰のことだろ?」
「一日中部屋でゲームとかして遊びたいから起こるんじゃない?」

どれもハズレです。
そして私も、即答できませんでした。

初期に起こる引きこもりは、心が傷つきすぎたからこそ起こる断絶行動だと示唆されています。
社会に適応できない自分というものを痛感しすぎると、実はものすごくストレスがかかりますが、これがわかる方はいらっしゃるでしょうか。
この繰り返しで心が崩壊しないために起こる回避行動こそが初期の引きこもりです。

つまり、防衛行動です。

そして、精神科医の先生もこのように証言しています。

引きこもりはパーソナリティ障害でも神経症でもなく、自己を守るための適応的な反応です。

初期の引きこもりは「自我の崩壊からの緊急避難的行動」とも考えられます。

斎藤環:引きこもり研究の第一人者
『社会的ひきこもり』(2003)
『ひきこもり文化論』(2003)

引きこもりになってしまった直後は、決して否定せず、それまでの苦労を労うべきです。
そして、壊れそうになる環境にいたんだという理解を示すことが大切です。

その際に
自分が適応できたか・できてなかったか。
成果を出したか・出してないか。

などの成果主義を挟むのは不毛です。

「頑張れてないんだから甘えによる引きこもりだ」なんてことはありません。

矢沙玖
矢沙玖

合わない事を無理にやったところで成果が出せるかは運です。

そして、合わない事ばかりをやるような環境にいたら適応するのがやっとで、そこに周りとの比較なんか重なれば心身壊れるのも当然です。

タイトルでは電車の緊急停止とありますが、電車に限らず緊急停止は多くの場所で見かけますよね。

その緊急停止が起こったとき、心配になりませんか?
文句を言う人って逆にやばくないですか?

人の体も同じです。

「確かにさ?引きこもりになったばかりの人には「頑張ったな、大変だったな、ちょっと休めよ」って言えるけど、何か月も続くってなると違くね?」
「引きこもりの知り合いいるけど、もう半年になるんじゃないかな。あれはだめでしょ」
「自分なんて、初期を通り越して何年も引きこもりやってるよ。どうせこれはもう甘えに分類されるんだろ?」

そうとも限りません。

皆さんがもし、命の危機を感じる心霊スポットや、今にも落ちそうなつり橋に行ってしまったとしましょう。
それを途中でリタイアしたら、次いつ挑戦しますか?というかしませんよね?
そもそも、命に関わるような魔界だとわかってて再び行こうと思う人がいるのでしょうか。

これと同じで、一度社会から拒絶を感じて引きこもりになってしまった人からすれば社会は魔界です。
にも拘わらず

「働かないとだめだよ」
「お金を稼がないと食べていけなくなるよ?」
「みんな辛い中我慢してるんだよ?」

これは魔界に向けて背中を押そうとするデーモンの声と一緒です。

そのまま魔界に再び入れば大怪我では済まないかもしれません。
入る前に適切な準備や回復が大切です。

次は、慢性化してしまった引きこもりについて解説していきます。

②慢性化した引きこもりは社会への防衛本能 エビデンスレベル3

「魔界とかデーモンとか、ふざけてる?実際に社会に適応してる人がどれだけいると思ってんの?」

大真面目です。

適応できている人や、なんとかやれている人にとっては魔界だのデーモンだのと言われてもピンときません。
むしろ「え?何言ってんの?」と感じるでしょう。

しかし、気を遣ってばかりの毎日理不尽の嵐に包まれて完全に壊れてしまった人にとって社会という場は「自分には適応できない魔界」になります。

「いやいや、大げさだろ。考え方でなんとでもなるって」

そうです。
その考え方が偏って凝り固まっているから魔界に感じてしまうんです。

「だろ?被害妄想なんだって。いい大人なんだから自分で考えを変えて適応するべき。甘えが許されるのは子供までだよな?自分のことは自分で考えて当たり前だろ」

それはデーモンの声です。

初期の引きこもりを経て慢性化した人はこれまでに、自分で甘えを許さず戦った挙句、疲れ果てたから引きこもりになったんです。

こんな自分が社会に出たら迷惑をかけるだけ。という考えが芽生えてしまったから、申し訳なさと怖さで動けなくなっています。

それに対し、考えを変えろ・自分で考えてなんとかしろ・子供じゃないんだぞ。は無責任です。
「あなたに何がわかるの?」「あなたに関係ないでしょ?外野は黙って」というトラブル待ったなしです。

本人からすれば
自分を守りつつ社会に適応する方法をずっと試行錯誤しては、怖い想像がよぎったら目を背けて自己否定
の繰り返しです。

なんの努力もしていない、葛藤していないと思ったら大間違いです。

ですが、社会から離れている期間が長くなるほど、見方が偏って考えすぎになってしまうのも事実です。

①社会的防衛理論

防衛行動が続いてしまうと、防衛するべきものに対して敵視する感覚が強くなっていくことがわかっています。

動物実験(コモンモンキー)を含む研究では、強い回避反応スタイルを持つ個体ほど、不安感や脅威感が強まる傾向が示されており、社会への警戒感や敵意の反応が強まることも観察されています。

また、避け続ける行動が繰り返されることで、社会や他者への恐怖が強化され、敵視不信感が習慣化するメカニズム(負の強化)として理解されています。

Kalin, N. H., Shelton, S. E., & Davidson, R. J. (2007).
粟生修司 (2018)
エリコ・ロウ (2023)

嫌いな人に対して身構えると、どんどん嫌いになる現象を経験したことがあるでしょうか。
それと同じことが起こります。

②ポリヴェーガル理論

引きこもって好きな時間ばかりを過ごすのってめちゃくちゃ楽ですよね。

実はこれ「社会と向き合うと安全が脅かされてしまう」という認識をしているから、社会に対しシャットアウトしようと脳が切り替わるからやってしまう事です。

ポリヴェーガル理論
自律神経系は感知された脅威に応じて三段階の防衛モードをつかい分けるとされます。

・安全を感じると外界との関係性(社会的関与)を重視するモード
・安全が脅かされると交感神経活性化
・それでも逃げられない場合に凍りつく・シャットアウトするモードへ移行します。

引きこもりのような孤立状態は、このシャットダウン状態であ
娯楽や趣味などで快適さを得ようとする行動安全が担保される範囲内での快適モードの維持に他なりません。

Stephen Porges.et.al

いわゆる現実逃避というやつです。

現実逃避は甘えだと思いますか?漢字をよく読んでみてください。

逃避です。

嫌だから逃げるんです。

なぜ嫌なのか、脳の仕組みまでふまえて分析し、考えれば、決して甘えとは言えなくなります。

③脳神経が変化する

ではここで、体の仕組みの解説も交えます。

このような孤立が進み、社会との触れ合いも減ると、脳の偏桃体や前頭前野に影響を及ぼすことがわかっています。

社会的孤立扁桃体の活動過剰化、前頭前野(特に背外側前頭前野)の機能低下に関与している事が確認されました。
fMRI実験によれば、孤独感がある人ほど他者の顔・社会的情報過剰反応または回避反応を示す傾向が確認されました。
慢性的孤立は敵意のバイアス化」「注意の選択性の変化」も生じさせることがわかっています。

Cacioppo, J. T., et al. (2009).
Social isolation causes changes in brain structure and function.
Journal of Cognitive Neuroscience, 21(1), 83–92.
矢沙玖
矢沙玖

これ、引きこもりの方だけでなく、何かしらのコンプレックスを抱えている方にも生じそうな心理ですね。

その結果【社会・他者との接触=危険】という考え方が癖になってしまうことまで示唆されています。

さてここで問題です。

Q.ここまで脳の機能がバグっている状態に

「自分で考えろ、甘えるな、大人だろ?」
これが適切な声掛けである論理があるか・ないか。

どちらだと思いますか?

簡単ですね。

そんな理論は存在しません。
むしろ、的外れで無責任な言葉です。

バグってしまっている脳に考えさせたところで、下手をすれば早まった結論が出るかもしれません。
ましてや追い込みをかけるような言葉は、現実との乖離をすすめかねません。

①現実世界で傷ついたから引きこもりになった
②シャットアウトが続いたから偏見が進んだ
③社会から孤立した
④慢性化し、脳の機能がバグり始めた

引きこもりが常態化してしまう流れです。

特に②~④はループし、深刻化していきます。
そうなると自分のことをどんどん嫌いになり、あらゆる誤解が積み重なり、無気力になり、すべてがつまらなくなります。

だからこそ、まずは偏見をほどき現実世界での嫌な部分を無理せずゆっくり思い出して、本人に合う部分・合わなかった部分を分析し、向き合えそうな場所を探すためのカウンセリングの順で立ち直る計画を立てる事が大切です。

つまり、受け取るべきは無責任な他人からの強い言葉でもなく、私の記事でもなく、医師からの正しいカウンセリングです。

まずは専門家という社会に触れて、社会からの孤立感を解消する事が大切です。

まとめ

初期の引きこもりは緊急停止
慢性化した引きこもりは防衛本能

によるものです。

そして、引きこもりが慢性化するとどんどん辛くなる理由は、外との接点がどんどんなくなっていく事で、偏見や悲観、誤解が積み重なり、人生が詰んでいるように感じてしまうからです。

それに対し、強制をかけるような正論は不要です。
根性論も逆効果です。

ただの甘えや怠惰で引きこもりが起こるわけではありません。
根本となるものが必ず存在します。

根本を無視して対症療法的な言葉を真に受けて行動するのは危険です。

自分の本音が引き出せるカウンセリングを強くお勧めします。
本音に気付ければ、何が嫌だったのか・何なら平気なのかが見えてくるかもしれません。

今回はここまでになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献

『社会的ひきこもり』斎藤環

『脳科学は人格を変えられるか』中野信子

『子どもの脳を傷つける親たち』友田明美

『感情はどこから生まれるのか』リサ・フェルドマン・バレット

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