あなたは自分の生活スタイルが好きですか?
- 朝はゆっくり
- 夜更かしはしたい
- ご飯より先にお風呂に入りたい
- ベッドよりソファ
- お風呂が狭い
- トイレが広すぎる
このように誰でも「自分の生活のここの部分は好きだし快適だけど、ここは嫌だ」と感じる部分がありますよね。
それを人に話したり「普段どんな生活してるの?」と聞かれることになったケースもあると思います。
その結果
「こうした方がいい」「こう生きるべきだ」
とアドバイスや提案を受けた経験はありませんか?
「変えたいとは思ってるけどそれはちょっと・・」と思ったりしませんか?
変えたくない部分に改善案が出されると億劫に思いませんか?筆者は「うわ、うぜぇ、ほっとけよ・・」ってなります。
たとえ善意からの提案だとしても、時にそれがあなたの生活スタイルにまで干渉してくると、プレッシャーを感じたり、鬱陶しさに繋がることもあるでしょう。
かといって「聞かなければならない」という義務感に駆られる必要は全くありません。
「そんな我儘でいいの?仕事に関わる事でも?」
いいんです。
「人に聞いたくせに、治したいくせに、受け入れられない我儘な自分が嫌いです」
それ我儘なわけではありません。
あなたにとって過干渉だと感じたのなら自然な反応です。
あなたの人生はその人の物じゃないので、我儘でもいいじゃないですか。
ぜひ、今回の知識も持ち帰ってください。

なお、私の記事も過干渉と感じ「え、うぜぇ・・」と感じるのなら、それもあなたの心が健やかであるために重要な心からのサインなので、無理に読み進める必要はありませんよ。
なぜ提案が鬱陶しく感じるのか? エビデンスレベル2
まず、他人の提案が鬱陶しく感じる理由は、そもそも生活スタイルが個人的なものであるからです。
つまり、あなたのものなんですよ、あなたの生活スタイルって。
生活リズムや価値観というものは、長年かけて形作られたものであり、それを変えるように言われると、時には自分自身が否定されたかのように感じることがあるから尚の事、煩わしかったりします。
俗にいう「うざい」ってやつですね。
当然ですが、人にはそれぞれ異なる優先順位や価値観があり、他人の意見が必ずしも自分に当てはまるとは限らないです。
例えば、早寝早起きひとつとっても、夜型の生活が自分にとって効率的であれば、その提案はストレスでしかないでしょう。
他者からの報酬や指示があると、もともと好きでやっていたことでもモチベーションが低下する。(内発的動機づけが削がれる)
Deci (1971):
人間は「自分で選択した」と感じることで精神的に安定するが、選択を強制されると不快感を覚える。
(社会的排除に対するストレスの研究)Baumeister & Leary (1995)
外から判断された提案はあくまでも提案でいい
他人の意見を聞くことは時に大切ですが、すべてを受け入れる必要は一切ありません。
自分に合うかどうかを見極める力が重要なだけです。
もらった情報を自分で一度整理して、合う物があれば取り入れて改善するだけでOKです。
そうすれば賢い人だと思わせる事もできます。
そもそも相手はあなたの改善のために提案してるはずなので、あなたが改善されればOKであり、改善に繋がらないなら提案を聞く必要はないんです。
にも拘わらず相手が不機嫌に思ったり不快感を抱いたりし、他者に愚痴るのなら、助言というおせっかいを超えて押し付けです。そんなのなおさら無視です。
さて、ここまでの根拠をお伝えします。
科学的根拠
人は「自分の選択によって行動すること」によって、高い満足感や幸福感を得られます。
自己決定理論
他人の提案に従うことが自己選択であればまだ良いですが、無理に従うと内発的な動機が失われ、それにより不満が積もれば、心の病に繋がったり、対人ストレスが蓄積したり、鬱の原因になることがあります。
Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000).
Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being.
American Psychologist, 55(1), 68-78.
自己決定理論
Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1985).
人間には自律性(主体性ともいえます)・有能感・関係性という3つの基本的な心理的欲求があり、これが尊重されるとモチベーションが向上する。
この心理的欲求があるからこそ、他者から提案を受けると自律性が侵害されたように感じるため、不快に思うことがあります。
Intrinsic motivation and self-determination in human behavior.
また、外からの指示や圧力に対して人間は本能的に抵抗を感じることが多いこともわかっています。
この自己決定理論の科学的根拠はこのようにも発展します。
心理的リアクタンス
強制されると逆に反発したくなる傾向があり、無理に他人の提案に従うとすると、自分の意志や選択が抑え込まれると感じ、ストレスを引き起こすこと。
「宿題しなさい!」→はい、やりたくなくなったー
「来るのが遅いからね、20分前に来た方がいいよ」→ぜったいやだ
「そろそろ提出できるでしょ?もう完成してない?」→出せるけど出す気なくなった
こんなのが当てはまりますね。
心理学観点で示されている以上、大人であろうが子供であろうが抱く事に年齢は関係ありません。ムッとしても表に出すか出さないか、聞き分けよく行く方が合理的かどうか論理的に考えて処理出来ているかの違いです。
人は自由を制限されると、それに反発し逆の行動を取りたくなる心理的傾向がある。
Brehm, J. W. (1966). A Theory of Psychological Reactance.
「生活スタイルを変えろ」と言われると、無意識に反発したくなるのは、この心理的リアクタンスが働くからだと言われています。
自分にとって「信用できる」と思う人からのアドバイスは受け入れやすいが、そうでない場合は抵抗感が生まれる事も科学的に示唆されています。
Van Swol, L. M. (2009).
よって「誰からの提案なのか?」が重要であり、アドバイスを受け入れるかどうかは相手の信頼性に左右される事も事実です。
The Effects of Confidence and Advisor Motives on Advice Utilization.

あなたが我儘なわけでもえり好みでもなく、人の仕組みとしてそうだと実際に科学が言っています。
上手に聞き流すコツ エビデンスレベル3
さて、ではそんな提案を上手に流せるようになりたくないですか?
テクニックを紹介し、提案しますよ。
え?
「心理的リアクタンスに沿って、提案って言われたから記事を閉じまーす!」
そうきましたか・・・ですがとりあえず紹介しますからね!
これが、あなたを身軽にする考え方になるかもしれませんので、お届けしますよ。
自分の価値観を確認する
「はいはい、価値観なんてよく聞く単語ですね、そんなのわかれば苦労しませんよ」
こう思うのもわかります。世に溢れまくっている言葉ですし、使いやすい言葉にさえなっています。
価値観という単語を使ってごまかすという風潮もありますから煙たく思うのもわかります。
「価値観?我儘さを示してるだけのくせに耳障りよく言ってるだけでしょ」
こんな意見があるのは承知ですが、それは個人の価値観という単語の使い方の問題です。
価値観というものは、他人に押し付けっぽく意見を言うためだとか、他者を無視するために使われるものでもありません。
そして、考え方と価値観は似ていますが違います。
価値観は、何か一つの物事に対し価値がどのように観えるか観えないか。
このような価値の見え方を意味します。
漢字の意味通りこれだけです。
この価値の観え方には当然、主観が混ざっています。
だからこそ他人に押し付けられたり押し付けるものでもないんです。
では、価値観を確認するとは?
たとえば時間ギリギリがいいのか、余裕をもつべきなのか。
時間ギリギリであることで、どのような生活に繋がっているのか。問題はないのか。価値を感じているのか。
それを他者に、理解されるかはさておきしっかり説明ができるのか。
これをかためるだけで価値観を一つ発見したことになります。
これこそが価値観を明確にした上での考え方になります。
このうえで他人の提案が合わないと感じたら、無理に聞く必要はありません。

ただし、時間ギリギリな事に明確な価値を感じない上に説明もできないなら、他者からの提案をただ鬱陶しがるのは我儘だと認識されるでしょう。ぎりぎりで良いならそれまで好き放題したい感情は誰でもありますからね。
このように価値観というのは、行動や判断を決める指針になるため、この価値観を幾つも発見しておくことが上手に受け流すために重要になってきます。
自己決定理論
『Why We Do What We Do(やる気の科学)』エドワード・L・デシ
ここでも登場です。
自己決定理論は、自己の価値観に基づいた行動が幸福度を高め、ストレスを軽減することを示しています。
価値観が明確であるほど、外部からの圧力(提案やアドバイス)に振り回されにくくなる事がわかっており、自分の意志で選択すること(自律性)は、ストレス耐性を向上させる報告があがっています。
ひとつひとつ当たり前にやっている行動や考え方を見返してみてください。
明確な理由や考え方があってそのようにしているのなら、そこには価値観が潜んでいる可能性が高いです。
それを見つけてみるんです。
提案を一部だけ頂戴する
すべてのアドバイスが有益とは限りません。
が、全て無駄とも限りません。
なので、自分の状況やスタイルに合った事だけを取り入れ、それ以外は無理に従わないようにします。
他人の指図は5つまで聞く。他者から受け取る提案は40%まで。
とあらかじめルールを決めておくのもいいかもしれませんね。
今日から取り組めると思いますよ。
軽く受け流すスキルを磨く(例えば、さしすせそ)
前提として大切な意識があり、それは
相手に悪気がないということです。
それでも、無理に生活スタイルを変えようとする提案にはストレスを感じることがあるので、それを上手に折り合いをつけるんです。
たとえば、こんなのはどうでしょう。
※過剰にやるとお相手が「うぜえええ!」ってなるので注意ですよさ:参考にします!
し:親切にありがとうございます!
す:すぐは無理ですがやってみます!
せ:先輩or先生、ありがとうございます!これはちょっと無理やりかも。
そ:それもいいですね!
「受け取りのさしすせそ」と私が勝手に作りました。
ただ聞き流すためにこの「さしすせそ」を使うのではなく「有難いけど自分に合わないから申し訳ないけど・・」という気持ちをもって感謝+さしすせそを使えば、受け流す罪悪感も軽減されます。
ポイントは、提案事態を有難いという気持ちと、「自分を尊重したい」という正直な気持ちを50%ずつ持って100%伝える事です。

あなたの人生を生きるのは他人ではありません、あなたです。
あなたが生きやすい方法を取らなければ、あなたが人生の主人公である意味がありません。
この言葉に対しても「参考にします!」
と、返答してくださっていいんですよ。
認知的不協和の観点による注意点 エビデンスレベル2
さて、ここまであなたの我を通す権利を述べてきましたが、一つ注意点があります。
認知的不協和という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
認知的不協和とは
他人の行動や言動が自分の価値観や期待に合わないときに生じる不快感のこと。
例えば、他人が「こういわれたらこう返すべき」「人のアドバイスを求めるべき」「このように頑張るべき」という個人的な基準をもっており、あなたがそれにそぐわないと不快感を覚える
という事です。それを人は無意識に持っていて、結果がズレると違和感や嫌悪感を抱きます。
このような心理が誰にでも備わっていますので、例えば相手があなたに「やってくれるはずだ」「やってもらわないと困る」「この人ならYESというだろう」と、勝手に期待をしていた場合は、あなたが提案通りに動かないと、面倒なトラブルに発展します。
つまり、相手はあなたの事を知らないので、その知識の量と、相手の価値観に基づき、勝手な期待をされます。
ここを事前に抑えておくことが面倒なトラブルの可能性をかなり減らす方法です。
こんな方法があります。
あなたから開示しておく
これにつきます。
例えば早寝早起きについても、あらかじめこのように周知させておくんです。
「夜帰ってくるのがX時なので、そこからこれしてああしてこうすると、寝るのがだいたいX時ぐらいなんですよ」
「それで、自分はX時間は寝ないとぼーっとして運転にも勉強にも支障がでますから、これ以上の早起きができないんですよねぇ・・・」
と伝えておいたり
「前はこの内容で働いていて、こういう面での能力はお恥ずかしながら全く育ってません」
「なので、急に頑張る事ができないですが、ゆっくりならやれますので、見守ってくだされば能力を出せるように努める事ができます。改善できなければ相談させてもらいます。」
と開示しておくんです。
要は
自分が無理せず成長するには、期待されるような成果やスタイルになるには、このような手順じゃないと自分には合わないため、逆にエラーが起きてしまいます。
ということを周知させておくんです。
そうすれば少なくとも、勝手な期待を抱かれづらくすませることができ、あなたもあなたのやりやすい方法で成長をする事ができるはずです。
認知的不協和の観点からすると、相手もあなたも損をしない方法です。
自己開示のメリット
『The Transparent Self(透明な自己)』シドニー・ジョーンズ
自己開示の心理学研究によると、自分の価値観や考えを事前に伝えておくことで、相手との認知的不協和が生じにくくなることが示されています。
心理学者シドニーの研究によれば「自己開示は人間関係の衝突を防ぐ有効な手段であり、自己理解を深める効果がある」としています。
そして「自分はこういう人間だから、こういう提案は受け入れにくい」とあらかじめ伝えておくことは、他者からの過干渉や押しつけを避ける事にも有効だとしています。

・・と、言われて明日からそれができれば苦労はしませんが、しっかり効果がある事は科学的に証明されています。
そして、この自己開示のメリットはまだ補強されます。
「既存の認知と一致する情報」の方が受け入れやすい
Festinger, L.
フェスティンガーの研究によれば、人は自分の価値観と矛盾する情報よりも、既存の価値観と一致する情報を優先的に受け入れる傾向があるとされています。
よって、自己開示によって、自分のスタンスを明確にしておくことで、相手のアドバイスが自分の価値観に反する場合に相手も気を遣うようになり、不必要な衝突が減る事を説明しています。
まとめ
いかがでしたか?
相手があなたに提案をしてくる事は、支配欲とはまた別の観点から生じていることがわかりました。
そして、それを鵜呑みにする必要がない事と、不快感を抱くことが自然であることを解説しました。
我儘でもありませんし、我儘で構いません。
もう一度お伝えします。
あなたの人生はあなたの物であり、誰かの物ではありません。
だからこそ、あなたが快適に生きられるスタイルがなんなのか。
どういう考えがあるからそれが快適なのか?をしっかり把握しておくことが、あなたの生きやすさに繋がります。
例えば
この記事を読んでくださるように「勉強が好き、このような知識をつけるのは役に立つ」と感じていれば、価値観を感じているのかもしれません。
この価値観をハッキリさせる事で「心に寄り添いだか何だか知らないけど、自己啓発系とか怪しいだけだよ」「そんなよくわからないブログより、有名な漫画読む方が人とコミュニケーションするうえでも役に立つよ?」とかいう声を無視することができて、自分に合わない声を無視できる心が作れたらどうですか?
生きづらさを改善するお手伝いになっていれば幸いです。
それでは、今回はここまでになります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回取りあげた科学的根拠と参考文献
『心理的リアクタンス—説得と抵抗の心理学』(山本龍生)
『モチベーション3.0』(ダニエル・ピンク)
『影響力の武器』(ロバート・チャルディーニ)
認知的不協和
【Festinger, L. (1957). A Theory of Cognitive Dissonance. Stanford University Press】
自己決定理論
Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68-78.
心理的リアクタンス
Brehm, J. W. (1966). A Theory of Psychological Reactance. Academic Press.