前編はこちら
前編では、頑張りたくても頑張れない状態がなんなのかを解説し、あなたが気付いていないところで頑張りすぎていて、疲れ切っている可能性を挙げました。
甘えと思わず、疲れているのかも?と仮定し、その理由を辿っていけば原因が見つかるかもしれません。
答えは、あなたの心が知っているはずだと私は考えています。
辿っていった結果、万が一今のあなたが既に頑張りすぎでエネルギーがなくなっており、まずいところまで差し掛かってしまっている場合は早急な対策を知る必要があります。
あなた自身が自分を思いやり「本当に必要な事ってなんなのか?」を自発的に探そうと思えるようなお手伝いをします。
あなたに残っている余裕 エビデンスレベル2
大まかに二種類に分けます。
①「もうだめだ、頑張れない、頑張りたくない、やりたくない」
②「しょうがない、やらないと生活が詰む、人生こんなものだ、自分は忍耐力がないだけ」
①はほぼ限界
②は少しだけ猶予がある状態です。
ほぼ限界まできているのなら、無駄な人付き合い、ハラスメント、ストレス作業
可能な限りシャットアウトしてください。
診断を受けて休業申請をしたり、有休を得て自然を感じに行くなどのリフレッシュに出かけたり「今の自分は自由だ!」と思える期間を設けてください。
間違っても、瞬間的な娯楽を発散と思い込み、ケアもしないまま自身をごまかさないようにしてください。
誤った状態を続けると、重度の精神病に発展したり、他人を攻撃したり、自分を攻撃して保つような状態へ移行する可能性があります。
長期間の強いストレスは、うつ病、双極性障害、統合失調症などの精神疾患のリスクを上昇させることが分かっています。
McEwen, B. S. (2007). “Physiology and neurobiology of stress and adaptation: Central role of the brain.” Physiological Reviews, 87(3), 873-904.
Lupien, S. J., et al. (2009). “The effects of stress and stress hormones on human cognition: Implications for the field of brain and cognition.” Brain and Cognition, 65(3), 209-237.
うつ病や適応障害を適切に治療せず放置すると、より深刻な精神疾患(統合失調症、重度のうつ病など)へと進行する可能性があるとされています。
Hammen, C. (2005). “Stress and depression.” Annual Review of Clinical Psychology, 1(1), 293-319.
文書では、強いストレスが長期間続くと、うつ病が悪化しやすくなることが報告されています。
Kendler, K. S., et al. (1999). “Stressful life events and previous episodes in the etiology of major depression in women.” American Journal of Psychiatry, 156(6), 837-841.
①強いストレスを感じる人ほど、自傷行為を行う可能性が高いと報告されています。
①Klonsky, E. D., & Muehlenkamp, J. J. (2007). “Self-injury: A research review for the practitioner.” Journal of Clinical Psychology, 63(11), 1045-1056.
②ストレス管理が不十分な場合、自傷行為がストレス発散の手段として用いられやすいことを示唆しています。
②Nock, M. K., et al. (2006). “The functions of deliberate self-injury: A review of the evidence.” Clinical Psychology Review, 27(2), 226-239.
まだ少しだけ心に猶予がある場合は、頑張らなくても大丈夫な範囲をみつけてみてください。
正直に、大げさでもいいので、限界かも・・と思っている場合 エビデンスレベル3
ほぼ限界まで来ている場合、可能な限り誰かに愚痴ってください。
頑張ることをすぐにやめてください。
仕事、対人、自己管理、頑張ってまでやるようなことは一つもありません。
あなたの頑張りの使いどころは、あなた自身が快適に生きられる方法を知るために使ってください。
我慢と忍耐は違います。前編で紹介した八木仁平さんも放っています。
あなたが自然体でいては窮屈に感じるような環境なら、変えてしまうことを検討してください。
資格やスキルがないから今は無理だとしても、その道が本当にあなたが進みたい道なら、頑張るを使う道がみえてきませんか?
今日から、今まで使っていた「頑張る」エネルギーは仕事でも対人でもなく、あなたが環境を変えるために必要な資格もしくはスキルの習得です。
もちろん、自分自身を知る自己対話に充てるのもいいでしょう。
では、少しずつでいいので何か見つけるところからでもはじ・・め・・・・
と言われて、その通りに動けるなら誰も苦労しません。
わかっていても動けないから苦しんでるわけです。
やった方がいいに決まっているけど、もう体は限界なんです。
自分を否定するには根拠がない エビデンスレベル4
「わかってるのに動けないから困ってるんだよ!」
「動けない日々が続いたからこうなってるんだよ!」
「そんなこともできない自分だから苦しいし、どんどんダメになってるんです!」
今のあなたを、あなたが否定してはいないでしょうか。
そしてそのように思うのは「これ以上何かに取り組む事も億劫」というサインです。
その状態の自分を許し、心配する姿勢を持ってください。
脳のエネルギー節約と「学習性無力感」
「Learned Helplessness in Humans」(Seligman, 1975)
脳は「無駄なエネルギーを使わないようにする」仕組みを持っています。
自己否定が強まると「どうせ何をやっても無駄」と脳が学習し、学習性無力感が発生した結果、行動意欲が消失してしまいます。
これは、抑うつ症状のある人の脳をfMRI(機能的MRI)で調べた研究でも確認されており、行動意欲を司る側坐核の活動が低下していることが分かっています。
科学的には「何もしたくない」という感覚は、脳の報酬系が正しく働かなくなっている証拠だとしています。
「Neural mechanisms of learned helplessness」(Maier & Seligman, 2016)
自己否定が続いた結果、自分の能力を信用することができなくなり「何をやっても無駄だ」と学習してしまい、行動に移せなくなり「動かない自分」を心が作り出してしまっているんです。
「いや・・けどそんなの認めたら周りに甘えとか思われるし・・できない奴って思われたくないし・・」
いったい誰がそんなひどい事を言い、思うのでしょうか。
そんな人がいるのなら、その人に対し、心の中でこう思ってやってください。
「それってあなたの感想ですよね?」
聞いたことがあるかもしれませんね。こんな反発が適切である理由をお伝えします。
あなたは低くない
あなたの特性も知らない、状況も背景も知らない、どれだけ療養が必要なのかの思考や考察もなしに、今のあなたが休息を取ろうとすることを甘えと認識したり、できない側の人間だと判断するのは、何の根拠も持たない感想です。
「なに君?周りはできているけど?」
そんなのは理由になりません。人は皆違います。
他者との間に違いがある事は積極的に認めましょう。
「嫌われる勇気」岸見一郎
しかし、われわれは「同じではないけれど対等」なのです。
人は誰しも違っている。
その「違い」を善悪や優劣と絡めてはいけないのです。
人は誰でも、環境や条件が揃ってしまえば、周りから「甘え」と思われるような状況に陥ります。
しかし現代では、鬱になる仕組みが科学的に証明されてすらいます。
今、あなたの事を「甘えの傾向が強い」だとか、「ちょっと人として頼りない」、なんていう人がいるとしたら、その人もまた、状況によっては同じようになります。
だから、人は皆対等なんです。あなたがたまたまそういった環境にいるだけなんです。
だからこそ、善悪や優劣と絡めるべきではなく、人間扱いすべきです。
さて、あなたも、あなた自身を人間扱いしましょう。
「生産性・・」などとまるでロボットや機械に使うような言葉を人間にあてないでください。
苦しい状況にいる人が目の前で丸まっていたら、心配しませんか?優しくしませんか?
「無理に頑張らなくていい、今は何もしなくていいんだよ」そう声をかけませんか?
今のあなたにも同じ言葉をかけてあげてください。
さて、私のこの考え方もいわば感想です。
ここまでを読んでいただいたあなたは、どのような感想を抱き、心に従うでしょうか。
自分を認めようとすることで生じる焦り エビデンスレベル4
「だってさっき・・頑張りは自分が暮らしやすくするために使えって・・・」
「すぐにでも暮らしをよくしたいからさ・・・」
焦る気持ちはものすごくわかりますが、いくら自分のためと言えど、振り絞って行動するのは暮らしやすさではありません。
短期的な安心をすぐに求めたり、安心がすぐに手に入ると錯覚して先走ると大失敗をしやすいです。

私はそんな経験もしました。その結果、数十万円の損失を被る羽目にさえもなりました。
だからこそ
「何もやりたくない、今すぐに動けない」
そんな自分を認めることが、あなたがこれからも快適に生きていくための大事な一歩であり、近道です。焦らせてくる人物など尚のこと無視です。
心に従って何もしなかったりと、心のままに行動する事が、あなたを正しく機能させるためのあなたのトリセツの内容でもあります。
心に従い続けると、やがて本当に必要なものが見えてくる瞬間が訪れる事が多いです。
その時、休息をして回復ができたあなたなら、それを手に入れるための方法を自然と模索し行動するようになります。
「そうはいっても少しずつは何かした方がいいんじゃないの・・?」
焦りを感じず、疲れも尊重しつつ前進する方法
まず、心の声をこのように発してください。独り言が言える方は独り言でもいいですよ。
「今はなんもしたくない!やりたくない!!!やーらない!」
こうやって宣言するだけで、休息に対する罪悪感が軽減されます。
「だらだらしたい!だらだらしよう!」「娯楽したい!娯楽しよう!」
と、休息やリフレッシュをする事にも宣言をしてみる事で、自分で自分に許可をだすんです。
ただこの時、だらだらしながらSNS見ながらゲームしながらおやつを食べる。などのように
複数を同時にこなそうとするような動きは休息にもリフレッシュにもならず、脳に高負荷を与える行動になるので注意が必要です。順番をつけると良いですよ。
毎日1回だけでも良いので、このように宣言してみる練習をするとやがて習慣になります。
脳には、急な変化や習慣の取入れを嫌う習性があります。
少しずつの変化を継続的に起こす事で、脳に対し「あ、これって習慣なんだ、理解理解」というアプローチがかかり、当たり前の行動に近づけるというテクニックもあります。
『次余裕ができた時に取りたい行動』をリストアップ
心にゆとりができました!さぁ行動だ!
これは早とちりです。
さて、少し難しくなりますよ。
ここでは、心に余裕ができた段階で「この調子で次も余裕ができたら何をしようかな?」という、行動の計画を立てるまでに留めておく事がおすすめです。もちろん、気力にあふれていたらその先へ行っても構いません。
次はとにかく小さなステップでなおかつ、自分が取りたい行動を計画します。
計画だけですよ。
この計画も、5分だけ考えたらまた明日やる。のように、少しずつがコツです。
そしてまた、何もしたくなくなったら、休息やリフレッシュの宣言をして回復にあてます。
説明ばかりだったので具体例を挙げてみますね。
具体例
- 夜更かししたい!と宣言し、ほんとに夜更かしする
- 好きな時間まで寝てていい!と宣言し、ほんとに寝る
- 動画を見る→ゲームする→ケーキ食べる→テレビ見る。のように都合よく順番を組む
- 動画見たいしテレビも見たいしゲームしたいしケーキも食べたい!
これらを繰り返し、心の回復を待ち、回復を試みます。そして計画を立てます。
- 今の自分がやらなきゃいけない、またはやった方がいい事を5分だけ考えてみる。
- 思ったことを3分だけ、ノートでもスマホのメモでも書きだしてみる。
- 例えば仕事を変える事が大事とわかったら、どんな仕事が合うかを調べる時間を2分だけ設ける。
- 場合によっては転職活動やスキル習得の時間を5分から設ける。
この繰り返しをして、自分が得たい結果を得るための小さなステップのループを作るんです。
さて、前半は簡単かもしれませんが後半から難しそうな、億劫なイメージがしませんか?
そう思う理由は、あなたにとってそれが習慣ではないからです。
だからこそ記載していますね?「たった数分だけ」というのを意識して計画に含んでいるんです。
そして、自分の人生を良い物にしようと取り組めるようになると、心の疲れが軽くなり始めます。
まとめ
いかがでしたか?
「頑張らないとまずいのに頑張れない・・このままじゃ・・」
はい、まずいのでしっかり休息をとってください。
間違っても、頑張るべき!のサインではなく、休息してくださいのサインです。
にもかかわらず、あなたを不安にさせるような発言や考え方は、あなたの心を無視する敵です。
たとえそれが心配からくる物であっても、愛があろうと、理解がなければあなたを苦しめるだけです。
心の疲れが軽くなると、眠りの良さにもつながります。
眠りが良くなると、脳の機能回復につながり、脳が回復をすると心身が健康になっていきます。
自分を心配することの価値、あると思いませんか?
それでは今回はここまでになります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』八木仁平
『レジリエンスの鍛え方』リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット
(日本語版では久世浩司さんです。)
『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』ケリー・マクゴニガル
『マインドフルネスストレス低減法』ジョン・カバット・ジン