風呂をキャンセルしがち、後回しにしがちな皆さんに質問です。
『風呂に入る』ってめんどくさいですよね?
そう思うのも無理ありません。
多くの人が小さいころから
「汚いからお風呂に入りなさい」
「お風呂でさっぱりしてきなさい」
「お風呂入って早く寝なさい」
と言われ続けるだけで、風呂のメリットを明確に教わってきてはいないでしょう。
その状況では義務感を抱き、ただの作業になってしまうのも頷けます。

私も引きこもりのころは
「ただの作業だし時間かかるし、汚れてないならめんどいから入りたくない」
と考えていました。
よほどの汗をかいて気持ち悪い状態を除き、敬遠したいと感じてしまう入浴。
しかしこれ、実はめちゃくちゃ快感が得られる行動なのに自ら断ってしまっているんです。
入浴のメリット エビデンスレベル2
浴槽に入ることで体の疲れが取れるという話は今更ですよね。
かといって「体の疲れが取れるから風呂に入れ」というだけでは抽象的です。
理由もよくわかんないと人間は基本的に聞きません。
実は、こんなにも多くのメリットを入浴からもらっています。
- 血流改善
- 浮力作用
- 水圧によるポンプ作用
- 副交感神経が優位になる
- 幸福ホルモンの分泌
血流改善も副交感神経もなんとなく聞いたことがあるかもしれませんが、それぞれ簡単に説明します。
体が温まることで血管が広がります。
血管が広がることで、血の流れがよくなり、乳酸や老廃物といった疲労物質も流れやすくなり、酸素と栄養が体中に行き届きます。
これが、筋肉疲労の回復やコリの軽減、だるさの解消につながります。
浴槽に浸かると体が水に支えられ、重力の影響から解放されます。
立ち仕事やデスクワークで常に負荷がかかってしまう筋肉や関節が緩み、リラックス状態になります。
お湯の水圧によって、足の血液やリンパ液が心臓に押し戻されやすくなります。
その結果、脚のむくみが軽減されます。
夕方のパンパンな感じや重だるさがスッと取れる要因にもなります。
38〜40℃のお湯に入ることで、交感神経が静まり、副交感神経、つまりリラックス・回復モードが優位になります。
これにより呼吸が落ち着き、心拍数や血圧も下がり、メンタルの疲れも癒されます。
呼吸が荒いのにメンタルが落ち着くことは不可能です。
呼吸が整っているのにメンタルをあらぶらせることは不可能です。
お風呂の熱や水の音、香りなどの心地よい感覚が脳の報酬系を刺激し、その結果幸福ホルモンが分泌されます。
報酬系を刺激するとありますが、この場合に出ている物質はドーパミンのような物質ではなく、セロトニンやエンドルフィンという物質です。
よって、安心感・持続的幸福・自己肯定感といった心身を調和させる快楽となり、娯楽から得られる快楽とは違います。
よって、入浴によって得られる心地よさは、脳と体の両方が癒される持続性のある快楽であり、現代のデジタル娯楽では決して代替できない価値があることを意味します。
※ただし、この快楽と入浴による直接的な因果関係までは研究途中であり、可能性として示唆されている段階です。
そして今回は、あまり聞きなじみがない且つ言葉にインパクトのある
浮力作用(家で手軽に重力から解放される唯一かつ貴重な時間)についてお伝えしていきます。
家で手軽に重力から解放される唯一の時間
まず、インパクトのある表現ですが、重力の影響を0にできるという完全な解放ではありません。
しかし、体重を水が支えることで身体への圧迫が減少する事実には変わりないため、全てではなくとも重力から部分的に解放されるわけです。
さて、そんな重力から逃れられる時間は、入浴以外の時間で想像つくでしょうか。
「ジャンプする」
これは思いっきり重力の影響を受けて落下します。
「逆立ちする」
これも手に思いっきり体の重さがのしかかっています。重力の影響を受けまくりです。
「トランポリン」
これも落下という概念があり、重力の影響を受けています。
「入浴が重力から解放ならプールは?」
プールは正解です。
「布団で横になる」
これは半分正解です。
あとは、まず縁がない話ですが宇宙空間なら重力の影響を受けません。
こうなってくると、手軽に重力から解放される手段は入浴しかありません。プールは行くのも手間ですし気軽でもなければお金もかかります。
「重力から解放されることがなんでそんなに大事?」
こんな疑問を持った方は鋭いです。
寿命を全うする以上、重力の影響は絶対避けられません。
故に、それに耐えられる構造が人間にはあると考えるのが自然ですよね。
耐えられる構造を持っているのに、なぜ重力から解放されることに意味があるのか。
それはこんな理由です。
筋骨格系のストレス緩和と血流促進
重力を受け続ける環境では関節や筋肉が圧迫され、血流やリンパの流れが滞りやすくなります。
そこで、浴槽に浸かって浮力状態になることで、圧が軽減されます。
筋肉や関節の負担が減り、可動域が広がる→関節の可動域が向上
筋肉が弛緩しやすくなり、コリやハリの軽減→筋緊張の緩和
静水圧と浮力によって、体液の循環が促進される→血流・リンパ改善
Becker BE. “Aquatic therapy:
scientific foundations and clinical rehabilitation applications.” PM&R (2009)
『お風呂の達人』早坂信哉
脳疲労と感覚過多からの回復
重力がかかっているとき、身体は常に「どこに力を入れてバランスを取るか」を処理しています。
この情報処理は小脳・大脳・前庭系で行われ、無意識でも脳に負荷がかかっている事が分かっています。
体のバランスや姿勢を維持するために重要な働きをする器官や神経系の総称です。
内耳にある半規管や耳石器が頭の動きを感知し、脳に信号を送ることで、体が傾いたり、動いたりしたときに、バランスを保つように調整します。ググった時のAIの返答
そこで、浴槽に浸かるときの浮力がこれらの負荷を軽減します。
湯船や水中では、重力に逆らって筋肉を使う必要がなくなるため
Raichle et al. “A default mode of brain function.” (2001)
感覚処理の負担が減少。
その結果、脳内の「静けさ」が増し、脳のデフォルトモードネットワーク(DMN)が活性化しやすくなります。
DMNとは「ぼーっとしているとき」に働く神経回路で
創造性・回復力・自己認識と関わっています。
『ぼんやり脳で自律神経が整う』加藤俊徳
自律神経のバランスが整いやすくなる
ずばり、重力に逆らって姿勢を保つこと=常に交感神経が優位になりやすい状態です。
立っている・座っている状態では、身体は姿勢を維持するために微細な筋活動を続けています。
『副交感神経を上げる習慣』藤田紘一郎
これは交感神経を刺激し、若干でもストレスがかかっている状態です。
一方、浮力によって姿勢保持の必要がなくなることで、副交感神経が優位になり、リラックス・回復モードに入りやすくなることが示唆されています。
『入浴の科学』日本温泉気候物理医学会
「どれぐらい重力から解放されるの?対して重力が軽減されるわけでもないでしょ?大げさじゃない?」
入浴時の浮力効果により、身体にかかる重力の影響が最大で約90%軽減されると報告されています。
この90%というのは、頭部まで浸かった場合は体重の9割であることを指します。
よって、例えば半身浴の場合だと浮力の効果は50~60%だと言われています。
そこで、どこまで浸かるとどれぐらい効果があるのかリストを提示します。
水位の深さ(目安) | 浮力による体重の軽減率 |
---|---|
鎖骨〜首まで(ほぼ全身) | 約80〜90% |
胸(心臓下部〜みぞおち) | 約60% |
腰(へそ〜腰骨) | 約50% |
太もも〜膝 | 約30% |
日本温泉気候物理医学会
水中トレーニング理論
『健康増進資料・日本整形外科学会リハビリテーション情報』厚生労働省
浴槽に浸からないという事は、これだけ多くのメリットを自ら手放していることになります。
確かに毎回お湯をためることは水道代などの費用がかかりますが、美容・健康のためにお金を使っている事があるのなら、浴槽にお湯をためて浸かることも立派な美容・健康への投資です。
また、浴槽に浸からないことは加齢臭の発症率を増加させます。
まとめ
入浴のメリットがしっかり伝わったでしょうか。
- 血流改善
- 浮力作用
- 水圧によるポンプ作用
- 副交感神経が優位になる
- 幸福ホルモンの分泌
どれも健康・美容には欠かせません。
とりあえずキャンセルしてしまっていたのなら、健康運をそれだけ遠ざけていた事になります。
血流の改善や副交感神経を優位にする話は聞いたことがあるかもしれませんが、重力から解放される時間がどれだけ大切かについてはあまり聞いたことがないと思います。
ぜひ、筋肉を少しでも身軽にしてあげてください。
まずは今日だけでもお湯をためて浸かってみてください。
肩まで浸かってみてください。
1分でいいのでいつもより長めに、最大20分まで浴槽に浸かってみてください。

私も浴槽に入らない派で、体は常に重たかったです。
しかし、入浴のメリットとデメリットを知ることで浴槽に浸かるようになった結果、入浴後や翌日の体の重さが日に日に軽くなっていきました。
入眠にも良いという話を聞いたことがあると思いますが、あれも私には事実でした。
とはいえ、どうやったらその一歩を踏み出せるか、どうすれば風呂を快適なものにできるのか、風呂に入らないデメリットも知りたいという方もいらっしゃるでしょう。
風呂に関しては健康・美容に大きく関係します。
それはメンタルにも大きく影響することを意味しますのでしっかり記事にしてお届けしていきます。
今回はここまでになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
『最高の入浴法』早坂信哉
『スタンフォード式 最高の睡眠』西野精治
『自律神経どこでもリセット!』小林弘幸
『セロトニン欠乏脳』有田秀穂
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