睡眠・風呂など、生きる上での当たり前な作業をキャンセルしてしまう心理

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今回はキャンセル界隈のお話です。

前にも、風呂や睡眠をキャンセルしてしまう心理を取り上げましたが、原因そのものが科学的にいくつも挙げられているため、もっと掘り下げていきますよ。

疲れてるのに寝ない、風呂に入る気力がない。脳の仕組みです。自己否定しなくてOK
「やるべき事もドタキャンしてしまう・・」その罪悪感や自己嫌悪に悩んでいませんか?本記事では、キャンセル癖の心理的原因とやさしい改善方法を解説します。

さて、次のうち皆さんはどれか該当するでしょうか。
または、該当していた経験があるでしょうか。

睡眠キャンセル
風呂キャンセル
歯磨きキャンセル
トイレキャンセル

私は睡眠と風呂キャンセルの経験があります。
厳密には、超先延ばしです。それをキャンセルというのかもしれません。

この原因をさらに探っていく記事になります。

すぐに快楽が欲しい エビデンスレベル2

動画やゲームなど、現代の娯楽は短期的な快楽特化しすぎています。
そのように感じたことはありませんか?

だからのめり込もうと思えば楽勝でできてしまいます。
これは、脳が短期的な報酬に依存している状態といえます。

「飯より先にジムリーダー倒す!」
「寝るのは削っていいからバッジをコンプリートする!」
「やべ!こんな時間!でも四天王まで倒す!」

このような経験は数多くあることでしょう。

ゲームなどのコンテンツは視覚・聴覚・感情に強い刺激を与え続けるため、脳内のドーパミン(報酬系)が異常に活性化されます。
一時的な快楽や報酬感をもたらしますが、過度な刺激は報酬系の感受性を低下させ、日常生活の中での喜びや満足感を感じにくくなる可能性があります。

それが「もっとほしい」「あれも、これも」につながります。

(Koepp et al.1998)
(Kühn et al.2011)
(David Greenfield)

すると、風呂や睡眠のような「低刺激な行動」が相対的に面倒に感じるのは自然です。
しかも「風呂に入る」「歯を磨く」「睡眠を取る」って、基本的に快楽を感じづらいですよね?

もちろん、長期的なメリットはありますが

  • 3分磨けば奇麗になる
  • 用意して風呂場に行って準備をして風呂に入りさえすれば気持ちが良い
  • 7時間後には気分が良い

など、そのメリットを得られるまでの過程がいくつかあったり、それなりの時間を所用するため、短期的快楽には敵わないですよね。

結果、脳は「快楽を求めて行動をキャンセルする」という選択肢を無意識に選んでしまうのです。

こうして娯楽による「強すぎる刺激」に脳が慣れてしまうと

  • 低刺激な日常行動が苦痛に感じやすくなる
  • 現実の「幸せ体験」が、デジタル娯楽の快楽と比べてショボく感じる

というように、現実がつまらなくデジタルが最高!になってしまいます。

特にYouTubeショートTikTokのような「超短尺動画」なのに快楽を連続で感じれられる環境では人間の注意力・集中力・忍耐力を根本的に削ります

しかも、すぐに結果が出る・答えが手に入る・成果が得られることが当たり前になってしまってる現代ではタイパを意識しやすくなることもありますよね。

「その15分あれば・・・」

タイパを意識しすぎる社会背景 エビデンスレベル4

まず現時点で
「タイパの意識がキャンセルカルチャーを起こしている」
という直接的な科学的根拠は確認されていません。

しかし、即時性や効率性を重視する価値観が増えてきており、それがキャンセル界隈の拡大に影響を与えている可能性は考慮されるべきかもしれません。

例えば

  • 風呂に入るのが15分無駄に思える
  • 睡眠が時間の浪費に思える

という無意識な感覚は、効率を重視するような考え方や発信に触れる機会が多くなった影響だという見方もできるでしょう。

「やりたいことに時間を使いたい」
「娯楽に没頭したい」

「休息してる暇があったら仕事をちょっとでも」

これは健全な欲求です。
ですがこの気持ちが先行し、自己メンテナンスの優先度が落ちている事を見落とすわけにはいきません。

この結果、身体が汚れ、体調が悪化し、結果的にパフォーマンスが下がり、自己嫌悪に陥ってしまっては、まさに悪循環です。

これによって体調が悪化し、感覚麻痺も起これば、楽しいはずのことが楽しくなくなったり、作業が遅れたり、やがて後日後悔し「自分がダメすぎる」といった自己否定につながります。とんでもない誤解の元にもなります。

感覚麻痺→快楽喪失からくる自己否定
休息を怠ると自律神経のバランスが崩れ「リラックスできない」「食事が味気ない」「風呂も楽しくない」といった感覚の鈍化(快楽喪失)が起こりやすくなります。
こうなると、脳は「何やっても楽しくない」という認知を強化し、それが「自分には価値がない」「全然ダメ」といった自己否定のスキーマへと発展します。

Treadway & Zald (2011). Anhedonia and the neural basis of motivational deficits in depression.
Pizzagalli et al. (2009). Reduced caudate and nucleus accumbens response to rewards in unmedicated individuals with major depressive disorder.

自己否定は鬱リスクを大幅に向上させてしまいます。
一度鬱になると回復するまでかなりの時間を要します。私は年かかりました。
つまり、目先のタイパに目が眩んで長期的に非効率になってしまっているんです。

これは健康知識を手に入れれば簡単に解決できます。

自己肯定感の低さや心の傷の影響 エビデンスレベル2

「風呂入ったって別に気持ちよくねーし」
「寝てもどうせすぐ寝れねーし」
「どうせ快適に生きたところで人生楽しくねーし」

この考え方を持っている人も少なくありません。
これは自己否定無力感から生まれている場合も多いでしょう。

快楽喪失
うつ状態や慢性的なストレスにさらされたときに起こりやすく、本来なら心地よさを感じる行動が、まるで何の意味もないように感じられてしまう現象をさします。

うつ状態の中核症状のひとつであるとも示唆されています。

アメリカ精神医学会(APA)『DSM-5 精神疾患の診断と統計マニュアル』
Treadway & Zald (2011):Anhedonia and the neural basis of motivational deficits in depression

学習性無力感
長期的なストレスや失敗体験、否定的な扱いなどが続くと「自分は何をやっても変わらない」という無力感のこと。
この無力感があると、次第に行動そのものが無意味だという感情が芽生え支配されてしまいます。

また、こういった状態では「行動によって変わる」という希望すら感じにくくなります。

Seligman, M.E.P. (1975). Helplessness: On Depression, Development, and Death.
Abramson, Seligman, & Teasdale (1978): Attributional reformulation of the helplessness theory of depression.

特に今の日本は、経済的な不安・社会の閉塞感・未来への悲観・人間関係の希薄化などが重なり、ネガティブなニュースが増えてきたことや、それの可視化が進んできた事から、生きている意味を見失いやすい社会に実際になっていると思う事があります。

その結果

「人生べつに楽しいことなんてない」
「ましてや風呂なんかで気分は良くならない」
「自分の健康とかどうでもいいよ」

こういう思考に至ってしまう人が増えていくのも無理はありません。
実際、厚労省の調査でも若年層の自己肯定感の低さが顕著になってきています。

どうすればこの悪循環を断ち切れるのか? エビデンスレベル1

さて、耳が痛くて暗い話が続きました。

わかってるけど改善できないしその時間がどんどん蓄積されるからつらいんですよね。

そこで、対策もセットでお届けします。

「短期的快楽」を意図的に制限する

「短期的快楽」となっている娯楽を意図的に減らしてみてください。

無制限に遊べる状態になっていませんか?

ストレスから解放されたいがために、自分の予定が娯楽で埋め尽くされたスケジュールになっており、日々の大切な習慣を差し込む暇がなくなっているんです。

これを管理するために、スマホに搭載されているスクリーンタイマーがおすすめです。

具体的には

  • 娯楽の時間を決める(私の場合はスクリーンタイマーを利用し、Youtubeを〇時間、このゲームは〇時間、と細かく分け「総合で娯楽していい時間はここまで」と細かめに設定しました
  • 風呂の時間を決める(誰かと暮らしているのなら、宣言をするのも効果的です)
  • 寝る時間は固定(いつに寝るとかではなく、まずは決まった時間に寝ると決めます)

すると、不思議と少しずつ脳が「低刺激な行動」慣れてきます。

「ドーパミン報酬回路」の再感度化
高刺激な娯楽が続くと、報酬系が鈍化してしまいます。
その結果、楽しさ・満足感を得にくくなり、さらに強い刺激を求めるようになります。

この状態で制限を設けて低刺激の行動に移行すると、徐々にドーパミンレベルが基準値に戻り、以前退屈だった行動(読書、散歩、学習)でも「満足感」が得られるようになることがわかりました。

Berridge & Robinson (1998)「インセンティブ・センシティゼーション理論」
Volkow et al. (2009):インターネット依存・ゲーム依存がドーパミン経路に与える影響

この時「できなくても自己否定しない」と自分に約束をしましょう。
できない事がデフォルトなのだと割り切れば、できた自分を少しでも褒めることが可能です。

できない事をできるようにするために頑張るわけですから、できない事を責めないでください。校庭を10周走るために1週目でバテないよう練習するとします。1週目からバテて失敗を責める人はおかしいですよね?

「未来の自分に投資する感覚」を

風呂・睡眠・歯磨きなどを「未来の自分への投資」と考えるのも超おすすめです。

これは「そのように思い込みましょう」という事ではなく、実際に時間投資としてめちゃくちゃ有意義な使い方だという事もわかっています。
風呂も睡眠もメリットがめちゃくちゃあります。

メリットを具体的に学べば学ぶほど「じゃあ短期的な娯楽を削って取り組んでみるか」と、時間の使い道をシフトすることで健康を買うという見方ができます。

例えば
  • 風呂は「翌日のパフォーマンスを最大化する行為」
  • 睡眠は「最高のメンタル状態を維持する手段」
  • 歯磨きは「口内の健康維持+口臭予防で対人運向上」

ここまで表現しても過剰ではありません。
これが信じられるぐらい知識を入れると行動のハードルが下がります

「自己肯定感」を少しずつ取り戻す

「どうせ人生クソゲー」という感覚が強い人ほど、小さな成功体験を積むことが大事です。

成功もない、したのかしてないのかもわからない、バグだらけ。
よくわからないまま時間を浪費する。

これはクソゲーあるあるです。

先ほど挙げた短期的快楽を意図的に少しでも制限をするに成功すると、自分を褒めざるを得ない感情がわきます。

それこそが、成功の実感となり、クソゲー感覚が和らぎます。

未来への投資という感覚を持ってその通りに行動し、例えば歯磨きによって口の中がスッキリすれば口内の不快というバグを直す事にもなります。

この繰り返しは自己肯定感の向上につながり「なんだ、自分ってやれるじゃん」と、自己の過小評価から抜け出し、正しい自己評価をつけられるようになっていきます。

自己効力感
何かに取り組んで成果が出た(成功体験を得た)とき「自分はできる」という感覚が生まれ、自己効力感が高まります。
自己効力感は、うつ病や不安の軽減、行動の持続性深く関連しています。

アルバート・バンデューラ

行動そのものを義務から快適なものに変える

とはいえ、これまでの案はすべて考え方によるアプローチです。

いくら良い考え方を提案し、その考え方を取り入れようとしても、そもそも考え方を変えること自体が習慣になっていないため、数日で元の考え方に戻ることも珍しくありません

例えばアプリに課金をするのが当たり前だったころに何度も

「この額課金するんだったら電動歯ブラシを買えたなぁ」

と思いつつ、ぜんっぜん買いませんでした。

ところが、いい加減時がたち、実際に買ってみたら歯磨きがめちゃくちゃ気持ちよくなり、歯磨きが自分の口を満たす最高の時間になり、歯ブラシではとてもじゃありませんが満足できないようになりました。

そこから、もっと気持ちの良い歯磨きや歯ブラシ、アイテムを気になって調べたりしていくうちに、健康にもメンタルにも良いという情報にたどり着き「やったほうがいい行動」から「絶対にやりたい行動」へ変化しました。

同じくゲーム課金に浪費しまくっていた頃の話です。

睡眠の知識をつけていくたびに、危機感と睡眠に対する期待を抱くようになりました。

てきとうな何年も使い続けた敷布団だったところを、気に入った枕と、ちゃんとしたマットレスに変えただけで、家でゴロゴロする動作がまず快適になりました。

なので当然、睡眠にも良い影響を与え、そこから睡眠環境に関心が高まり

「すぐ楽しさの期限切れを起こす課金よりこっちのほうがよくないか?」

と感じ、睡眠グッズを整えたことで寝心地がよくなり、メンタル不調と不眠に大きな改善が起こりました。嘘かと思うかもしれませんね。

長くなってしまうので、風呂・睡眠・歯磨きに関する快適な環境の紹介は別の記事で紹介します。

確証バイアスだけ紹介しておきます。

確証バイアス
自分の選択や考えに合致する情報ばかりを集めて、反対の情報を無意識に避けたり無視したりする心理のこと。
買い物で言えば「自分が買った商品が良い」という前提を守るために、良い口コミだけを見て安心するなど「これにしてよかった」と思える材料ばかりを集めてしまう行動のこと。

似た商品やもっといいものを後で見つけても
「今買うことに意味があった」
というのもこれにあたります。

ピーター・ワゾン 1960

つまり、言い聞かせや思い込みだとしても、自分の選択が良いものだったと思い込みたい心理が備わっているため、興味を持って購入すれば失敗しづらいことを指します。

正しくなくても、良い思い込み自分を良い方向に騙すことは良い効果をもたらします。

まとめ

人間がキャンセルをしていく流れを順番に説明してきました。
てきとうな順番で解説をしたわけではなく、キャンセルが強化されてしまう一連の流れとして正しく並べています。

  • ①すぐに快楽が欲しい
  • ②タイパの意識
  • ③自己肯定感が低い

キャンセル癖のある皆さんは、どこに当てはまっていましたか?

これ、誰でも環境によってなります。
私もなりました。

そして、誰でも直せます。

キャンセルという行動は、単なる怠惰ではなく「社会構造」「脳の報酬系」「自己否定感」が生み出した深刻な問題です。
ですが、少しずつ自分の心と脳を取り戻す行動を続ければ、必ず改善できます。

キャンセルしがちな行動のメリット・デメリットの記事も用意しています。
キャンセルしがちな行動を快適にするグッズの記事も紹介しています。
20分の動画を見るのなら、2分で知識が手に入る記事も設置しています。
10000円でガチャを引くなら、電動歯ブラシやシャワーヘッド、枕が買えます。
これらの行動が自己肯定感の向上につながるのなら、今から何をするでしょうか。

今回はここまでになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献

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