前編はこちら
前編では、その「遊びすぎ」という行動に隠れた背景について解説をしました。
文章にすると辛いですが、自分の人生に満足していないからこそ、自分を満たすために短期的な快楽を求めてそこでの世界にのめり込んでしまうという話でした。
しかし言い換えれば、自分の人生に満足し始める事が出来れば過度な依存はしづらくなるし抜け出せるとも言えます。
そのためには、適度に娯楽を楽しむことが重要です。
さて、今回はその適度の指標を伝えるので少々耳の痛い話かもしれません。
その理由は、自分の習慣を変えられかねない主張を読むことになるから。です。
その理由の詳細がこちら
「へー。まずそもそもさ、ただの遊びすぎの背景が訳ありの人なんてそんなにいるの?」
そろそろ、ただの遊びすぎという考え方は捨てましょう。
データがあります。
満たされない気持ちと依存行動のデータ エビデンスレベル2
SNS依存と主観的幸福感の関係
これは、幸福感を感じている人とSNS依存に因果関係があるのかを調べた結果です。
Statista (2021)
主観的幸福感が低い18~24歳の若者のうち、約45%が「SNSを使用する時間が長くなる」と回答しています。
Pew Research Center(2018)
調査では、孤独や不安を感じている人々がSNS活動を増加させる傾向があることがわかりました。「他の人はこういう時どう思ってるんだろう」「自分だけなのかな・・」「わかってくれる人いないかな」と気になる心理も関係してそうですね。
オンラインゲーム依存のデータ
世界保健機関(WHO)が2018年に「ゲーム障害(Gaming Disorder)」を公式に精神疾患として認定しています。
この診断基準に該当する人々の多くが、現実生活での充実感や自己肯定感の低下を報告しているという事実を主張しています。
適度ってどんなもん? エビデンスレベル3
「わかった。けどさ、適度がいいっていうけど、どれぐらいが適度なの?本人たちはその適度を無自覚にオーバーしてると思うんだよな」
たしかに、言うだけ言っておいて「適度にしましょう」は投げやりです。
では、ここでいう適度ってどの程度なのでしょうか。
時間的な基準
「適度」の一つの目安は、時間の使い方です。
例えば、ゲームやSNSに費やす時間が、仕事や勉強、生活の他の重要な活動に支障をきたさない範囲であれば、適度だと言えるでしょう。
具体的な時間に関しては個人差がありますが、社会的に必要とされる責任を果たしつつ、一定の時間を休息やリフレッシュのために使うのが「適度」の目安となります。
仕事で拘束される合計時間が10時間としましょう。
睡眠が7時間、風呂や食事、仕事の準備など、その他生きる上で必要な時間が3時間としましょう。
家族や誰か身内とのコミュニケーションが1時間としましょう。合計21時間ですね。
この状態に娯楽が3時間以内なら正常の範囲でしょう。
生活が問題なく築けるのでリフレッシュとして成り立っており適度と言えます。
しかし、例えば睡眠が7時間では足りない。風呂は長く入りたい。家族ともたくさん喋る。などの状況が変われば、そこに娯楽が3時間のままでは本来必要な生活の基礎となる時間が削れますよね。
これは適度とは言えないのではないでしょうか。
感情的な基準
「適度」とは、あくまで感情的なリフレッシュを得るためであり、その後に現実に向き合う意欲や能力を取り戻すことができているかどうかです。
その後の現実すらも忘れるようでは、生きている以上は困ってしまいますよね?
よって、現実逃避が終わった後に「よし、やろう」と感じられる状態になったり、切り替えができる度合いで済ませているなら適度と言えるでしょう。
そもそも何のためのリフレッシュでしょうか。
一旦の逃避でしょうか。永遠の逃避でしょうか。永遠はまずいですよね?
当初の目的が満たせたのならそこで終わらせておくのが適度なんです。多分これが一番難しい。
例えば、ソシャゲで10連ガチャというのをやった事がある人いますか?
目的のものが引けたのに追加であれもこれも欲しくなったり、目的をゲットできたのにまだ引けるからといって追加で引いたりするのは過度ですよね。
新しいものが実装された!ガチャ引きたい!引けたらちょっと試したい!それを2時間で済ませるぞ!
これなら計画的に適度にできていると言えるでしょう。
「当初の予定よりももっと楽しいを味わいたい」「キタアアア!をもっと欲しい」は適度を超えて過度になっているのがわかるでしょうか。
自己評価の基準
自分の現状や進捗に対して冷静に評価できるかが「適度」の重要な指標です。
現実逃避をすることで一時的に楽になったとしても、その後で自分が何を成し遂げるべきか、どこで問題があるのかを意識できているかはとても大切です。
自己評価をしていなかったり、自分の状況を客観的にみれていないまま現実逃避が習慣化すると、次第に「適度」が無自覚にオーバーし、依存状態に陥る危険があります。

これも、私はめちゃくちゃ経験あります。
宿題ができていない事がわかっているのに娯楽に没頭。
そんな現実から目を背けるためにさらに現実逃避。
仕事を辞め、ほんとはすぐに次も探さなきゃいけないのに「今はちょっとだけ休もう」と娯楽に没頭したら「やばい、まだ応募すらしてないのに」と気付いたら依存してました。私だけ・・かな・・?
科学的な視点からの「適度」は大切
科学的に見ても、適度な休息が重要だとされています。
研究でも、適度な現実逃避が生産性や創造性の向上に寄与することが示されています。
そして、長期的な依存状態に陥ることなく実現できる範囲が「適度」とされています。
同時に、依存行動の背景には現状の不満が原因となっている事もわかっており、だからこそ過度に没頭してしまう事もわかっています。
よって、適度の範囲がわかったところで実際の行動に結びつけるのも難しいんです。
だからこそ
「ここまで情報を得たのにできない・・」
こんな自己否定をする必要はありません。
「適度適度適度適度うっせぇよ!!」
気持ちはとても分かります。
当時の私が聞いても、きっと耳が痛いと感じたでしょう。
しかし、嫌というほど思考に染み付けば、やばさが頭の中で理解できるため、自己制御に繋がります。
「いや、やばさがわかってしまったからこそ、適度にできない自分を嫌いになって余計にストレスに・・」
何度もお伝えします。すぐできなくて普通です。
たまーーに、ちょっとだけ、意識して思い出したときだけでも出来るようになればそれでいいんです。
その積み重ねで化けます。
何かの情報を追加で得た時に、習慣を見直すやる気が膨れ上がる事だってあります。
今だけを見ない事が大切です。
オンラインゲームやSNS依存の専門家である教授は、依存行動が現実生活の不満やストレスを背景にしていることを多くの論文で提唱しています。
Mark Griffiths(英国ノッティンガム・トレント大学教授)2010.
SNSやオンラインゲームにおける依存行動は、現実世界での心理的満足感の欠如が主因であると主張しています。
別の心理学者によれば、SNSの過剰使用が人の孤独感や抑うつ感を悪化させていることを指摘しています。
特に、満たされていない感情がSNSの過度な利用と依存を引き起こしていると分析しています。
Jean Twenge(心理学者、著書『iGen』)
「この娯楽のやりすぎ、良くはないよな・・」
とわかっているのなら、当初の目的を達成したら一旦離れるという、小さい目標からスタートでいいんです。
過去の私で言えば、あれを倒したら一旦ログアウト。だったり、倒すための装備が1個作れたらログアウト。など、目的を達成したら一旦現実に戻るというのは必要だったのでしょう。
しかしこれも、その時の精神状態によるのは間違いないので、成功体験を積みまくるという観点では、一旦現実に戻るという選択肢が必ずしも正しいわけではないので、自分の状況をよくみて適した方法を選ぶのが良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
娯楽に現実逃避だとしても一旦のめり込むのは、むしろ現実のストレスから自分を守るための自然な反応でもあります。
大切なのは、この行動が続きすぎないように少しずつ生活を整えていくことです。
それもあせらず、無理に一気に変えようとせず、少しずつ調整していけば、結果的には自分の気持ちも少しずつ軽くなります。
6時間も遊んでしまうゲームを5時間50分に抑えるだけでもスモールステップです。
「いやいやいや、そんなスモールすぎるステップじゃいつ自制できるんだよ。むしろスモールステップに飽きてやめるわ」
そう感じるのなら、ストレスなく可能な範囲で時間を調整すればいいんです。
浮いた時間で何をしますか?やる事がなくなる。のではなく、生活のバランスが取れるようになるのではないでしょうか?
今回はここまでになります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
「スマホ脳」アンデシュ・ハンセン
「デジタル・ミニマリスト」カル・ニューポート
【研究論文】
Lemmens, J. S., Valkenburg, P. M., & Peter, J. (2011).
“The effects of pathological gaming on adolescents’ mental health”. Journal of youth and adolescence.