突然ですが質問です。
小学生・中学生のころ、風邪などの病気で学校を休んだ時、ずーっと寝て、起きたら水分補給や簡単な食事をとり、また眠る。
これを守れた方、どれぐらいいますか?
そして、今までに一度も体調不良で学校を休んだ日にテレビを見たりゲームをしたり携帯を触らなかった人、いますか?私は即答でNOです。
多分、そんな人いませんよね?
あげく、夜や夜中に体調が悪くなってきて怒られた経験や後悔した経験もあるでしょう。
体調不良で寝てなきゃいけないのになぜ遊んでしまうのでしょうか?
これは報酬予測に基づいたエスケープ行動として説明できるかもしれません。
報酬予測 エビデンスレベル2
体調不良で休んでいる日って「もう十分寝たよ」と感じて自然と退屈になったりしますよね?
実はこの退屈さが不快感になる人もいます。
他にも「今頃みんなは・・」「どうして自分がこんな目に・・」と、少し寂しく思って孤独感を抱いたり、症状が辛すぎるという不快感を覚えたりもします。
これらの不快感・不安・孤独感を人は埋めたがります。
さて、そのような感情を埋めるには皆さんなら何を想像しますか?
「えーっと、あれだよあれ」
「あれかな?」
「あの・・あれをああした・・あれだよ」
そうです。あれです。娯楽ですね。
その娯楽を取り入れようと一瞬でもよぎった瞬間、脳の中では「よし、これで不快感を取り払えるぞ」と予測をします。
この時点でドーパミンが分泌されるのですが、この現象を報酬予測といいます。
こうなったらもう娯楽へ体も心も動かされてしまいます。
報酬予測(Reward Prediction)
神経科学研究による定説
ドーパミンは「快楽を感じたとき」だけでなく「快楽を得られそうだと予測したとき」にも分泌されます。
「疲れてるけどゲームしたら気が紛れそう」と脳が判断した瞬間にドーパミンが分泌される事を意味します。
これは脳の「線条体(せんじょうたい)」という部位と「腹側被蓋野(VTA)」が関与しており「これをやれば報われるぞ!」と脳が感じた時に動きます。
エスケープ行動 エビデンスレベル2
報酬予測で少し触れていますが、簡単に言えばストレスや不快感から逃れるために人が取る行動を指します。
「退屈すぎてさすがにしんどいからゲームしちゃお」
「自分だけずっと寝てるの嫌だから家族とテレビみよ」
こういった心理が当てはまるのですが、すかさず
「なにやってんの!寝てなきゃ駄目でしょ!悪化するよ!?」
と突き放された経験をされている方も少なくないでしょう。
この場合には、完全に娯楽をつぶすよりかは適度に堪能し、ストレスを軽減しつつ、今の体に見合うエネルギー消費までに娯楽をとどめておくのが最適解と言えます。
また、体調不良の時って寂しさを覚えやすいですよね。
突き放されると傷つきやすい状態でもあります。
これはボウルビィの愛着行動とレグレッションで説明ができる心理状態です。
体調が悪いとき、人は「無防備で不安定な状態」となります。
その状態になると、脳は「安全な場所」を求めるようにできており、それが人とのつながりや甘えという形で現れます。
これを心理学では愛着行動と呼びます。
これは子どもだけでなく、大人でもストレスや体調不良などで起きる事も確認されているんですよ。一人で動けなくなってしまった時期、駆けつけてくれた人の対応に何度も泣きそうになりましたが、こういう事かもしれません。
そして大きなストレスや体の不調時、無意識に幼児期のような行動に戻ることがあるのも確認されています。
例えば、急に「誰かにかまってほしい」「甘えたい」「泣きたくなる」などが該当します。
これは防衛機制の一つでレグレッションと呼ばれます。
心理学的な解釈では、精神的に「安全だった頃(幼少期など)」に一時的に戻ることで、不安を軽減しようとする無意識の作用だとされています。

「かまってほしい」を抱いてしまう自分に嫌悪感が芽生えた経験はありませんか?
本当は、過度なストレスや不安を抱えている背景があるが故なのでしょう。
いずれも防衛本能であり生存本能です。
人に手間を取らせたくない気持ちは痛いほどわかりますが、甘えさせてくれる相手には良いのではないでしょうか。
不安が軽減されたその時にこそ、目いっぱいのお礼が言えればそれで十分ではないでしょうか。
まとめ
体調不良で休むべきなのに娯楽をとってしまうのは、単純な怠けや、ただ遊びたいだけとは異なる場面が実際に存在します。
「時間がめっちゃあるから遊んじゃお!」
というパターンも一定数存在し、なんなら私もそんな経験ありましたが、それももしかしたら時間を持て余した不快感、何かをしてないと落ち着かない不快感から起きるエスケープ行動なのかもしれません。
また、あらゆる理由でレグレッションが起きている方。
後ろめたく思う必要はありません。
心がそうしたいと望んでおり、その心を守ってくれる人に甘え、大切にできれば十分ではないかと私は考えます。
今回はここまでになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
『やさしさの科学』ポール・ブルーム
『不安のしずめ方』樺沢紫苑
『愛着障害と回復』岡田尊司
『脳はなぜ「心」を作ったのか』中野信子
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