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睡眠の質向上法についての記事も、ついに上級編まできました。
科学的根拠を用いてたくさん紹介しますが、取り組みへの一歩が難しいかもしれません。
が、前回の記事のものをいくつか実践できたなら、取り組める項目に出会えるかもしれません。
とはいえ焦りは禁物です。
どうしても0か100かの思考になりがちですが、急激な変化を拒むという脳の仕組みがあるので、少しずつを心がけてくださいね。
くどいかもしれませんが、まずは睡眠薬服用の注意点を記載します。
睡眠の質向上法(取り組み難易度:やや高)
朝日を浴びる
これは夜勤や夜の活動が必須になっている方には難易度が跳ね上がります。
まずは、夜の活動は特にない方向けに解説しますね。
人の体は朝日を浴びることで体内時計をリセットしてくれる効果があります。
難しい言葉だと、体内時計の事をサーガディアンリズムといいます。
朝日が体内時計に与える影響について研究されたデータがでており、サーガディアンリズムの調整効果が明確に示されています。
Roehrs & Roth(2001)
この事から、朝日には、日中の覚醒と夜間の眠気を調整する役割があるといえます。
なので自動で閉じ開きするカーテンや、朝の散歩が推奨されているのはこのためです。
しかし本当にお悩みの方は、この1回の朝日を浴びる、という習慣がないから困っているはずです。
私もその習慣を長期間続けていました。頭がすっきりしないし体がだるい日の連続でした。
しかも、1日オールをして夜まで気合で起き続け、眠って調整するという事をやりました。
めちゃくちゃしんどかったです。
その結果、数日だけ朝起きれましたが、継続できる習慣も知識もなかったのですぐ夜型になってしまいました。
心を満たすまで娯楽の没頭し、疲れるまで起きてたんです。
そこで、このような案を今では持っています。
睡眠時間の調整とはいえ無理をしない
1日オールは人によってはきついですし、ハイリスクのわりにリターンが不確定です。
また、かなり体力を消耗する事もわかっているので、体が万全でない時にやると体調を崩すこともあります。免疫が低下しちゃうんですね。
オールはいきなりやらずに計画をたててみる
それでもオールをする場合は、休日など、翌日に重要な予定がない日がおすすめです。
くれぐれもオールする際は、水分補給や軽い運動をして、身体に気を遣いながら体調を保ってくださいね。
オールしたら次はいつ寝るかのスケジュール作成もおすすめです。
夜にリラックス
前回の記事などで取り上げた、仮眠のテクニックを使って眠る時間を調整しつつ
夜寝る前に、ストレッチや入浴、腹式呼吸などのリラックス法を習慣にしてみてください。あくまでも自然な眠りを狙うのがおすすめですよ。
改善はちょっとずつ
少しずつ寝る時間を早めて、睡眠時間帯を調整する方法です。
毎日10分からでもいいので、時間を早めていけば体内時計が少しずつ直ってきますよ。
ただし、ブルーライトの影響だったり、寝る時間のぎりぎりまで何かに取り組んでいるとほぼ必ず
「10分早めるとは決めたけど、寝るまでまだ1時間も余裕あるからいいや!」
となってなんだかんだで
「うわ!10分前になったけど眠くない!」
という現象が起きます。私はそうです。
なので、次々回にお話しするナイトルーティンや、以前紹介したブルーライトの遮断、などの寝る前のテクニックを活用して、眠る予定の時間を待つような習慣にしてしまうのがおすすめです。
ただし、メンタル面でのテクニックも必要になる事があるので、人によって難しい可能性があります。
ですが今後の記事を読み進めていくと、今回の記事に対して辻褄が合うようになり、取り組みやすさが緩和されますよ。
夜勤の方への提案
そもそも、通常の昼夜サイクルが逆転しているため、朝日を浴びることが逆効果になる場合もあるという前提があります。
大体の人は朝起きて、朝日を浴びて目が覚めて活動をして、体が疲れてくる夕方ごろには朝日も沈んでますよね?
ところが夜勤の場合だと「体は夕方モードなのに朝日あるんだけど!?」と体は感じています。
体が疲れてくる頃に、朝日という強い光を浴びる構造になってるんですね。
対策をお伝えします。
結論からお伝えすると、夜勤労働者へは光療法によるサーガディアンリズムの調整効果が有効とされています。
Smith(2004)
『疲れないカラダをつくる睡眠の技術』(枡野俊明)
夕方または夜に光を浴びる
夜勤に合わせた体内時計の調整をするには、勤務前の夕方や夜に光を浴びることが効果的だということがわかっています。
つまり「これから夜勤だ・・・」と、夜もしくは夕方起きたばかりの体に対し、朝日が浴びられない代わりに強い光を使うんです。
日中はなるべく光を避ける
夜勤明けで朝や昼に帰宅する際は、サングラスをかけ・・とまでは言いませんが
極力、光を遮り、体内時計が「朝」と認識しないようにするんです。
言うのは簡単ですね。
寝室は遮光カーテンを使って暗くしてしまい、光を完全に遮ることで、昼間に質の高い睡眠を狙ってみましょう。これは私もやっていました。カーテンの紹介を以前にしたのはこのためです。
では日勤も夜勤も問わず効果的な内容に戻りますよ。
深部体温
なんぞや?ですよね。
解説します。
人の体温には「深部体温」と「皮膚温」という2つの主要な部分があります。
これをもっとかみ砕くと、深部体温とは体の内部、つまり内臓や体の中心部分の温度の事です。
その一方、皮膚温は体の表面、つまり皮膚の温度です。
例えば、腕を触って熱い、だとか、体温計で測ってる温度は全て皮膚温です。そして、深部体温は普通には測れません。
この深部体温をしっかりコントロールすると、夜になれば体温が下がり、朝に向かって少し上がる、という理想的な状態が手に入るんです。
寝汗をかくとか、体温が下がると眠くなるとか、色々聞いたことがありますよね。
全て深部体温が関係しているんです。
なので深部体温を管理することが重要になってきます。
文献にあった例を紹介します。
深部体温のコントロールと睡眠の質については、の研究が有名です。
Kräuchi(2001)
『睡眠こそ最強の解決策である』(ショーン・スティーブンソン著、翻訳版)
規則正しい生活
毎日同じ時間に寝たり起きたりすることで、体のリズムが整い、深部体温も安定しやすくなります。
オールするとなんとなく体が熱いような気がしませんか?あれがまずいんですね。
適切な温度管理
寝る前に体を温めすぎないようにすることで、深部体温が自然に下がり、良い睡眠を促すことができます。
温度管理がここで意味を成しているのが伝わるでしょうか。
入浴をすると当然体が熱くなりますよね?
体が熱くなると、熱を放出・・・つまり、深部体温を下げようと体が反応を始めます。
深部体温が下がってくると眠気を感じやすくなり、夜になると更に深部体温が下がってくる、というメカニズムを生む習慣になるわけです。
シャワーでも効果が0というわけではないですが、39~42度の浴槽に15分は浸かる。というのを寝る1~2時間前に済ませてみてください。
寝たいなぁと思う時間に、しっかり体温が下がってきますよ。
リラックスする時間を持つ
寝る前にリラックスすることで、体が深部体温を正常に調整しやすくなります。
腹式呼吸などの深呼吸、体を伸ばす、などでいいんです。
それとは逆に「うおおお!やるぞおお!」とか「楽しい!!」のような、交感神経を活発にする動きをしてしまうと、ノルアドレナリンが分泌されて覚醒してしまいます。
ゲームや動画視聴、SNSでも生じてしまうので注意が必要です。
特に悪いケースだとストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されることもあります。対戦ゲームはまずいです。
こうなってしまうと、脳の覚醒に加えて、心拍数の増加、さらに体温の上昇に繋がってしまうのです。
そうなっては、眠ろうとする時間に体温が上がるという、理想とは逆の状態が起きてしまうんですね。
さて、次は睡眠を助けるアイテムや栄養素の話です。
サプリメント
メラトニンのサプリというのもあります。
私は使っています。睡眠薬をこれに変えてしまったぐらいです。
繰り返しになりますが、メラトニンは眠気を促すホルモンで、自然な眠りを誘発してくれるんです。
夜勤後の昼間でも眠りやすくなれますよ。
ただし日本では副作用のリスクが指摘がされているため、海外からしか購入できません。
睡眠薬と違って、自然な眠りを誘発する睡眠物質を飲むわけですから、睡眠の質もあがりますよ。
眠る1時間前に飲むのが一般的なようですが、個人差があり、また、10mg飲む場合は効き目がかなり強いです。
この辺りは専門家と相談してみてくださいね。
過剰摂取や長期の服用も避けるべきとされていますので、あくまでも自己責任で、かつ、医師からの指示を頻繁に受けている場合は専門家に相談してください。
また、メラトニン以外にもマグネシウムやGABAも有効だといわれていますよ。
これらには、リラックス作用があるので自然な眠りのサポートに繋げる事もできますし、ストレスによって途中で起きてしまうことの抑制にもつながります。
これらの成分が睡眠にどのような影響を与えるかをエビデンスに基づいて解説しますね。
マグネシウム
コルチゾールの分泌を調整する役割があります。
ストレスによるストレスホルモンの分泌を調整してくれる効果こそが、中途覚醒を減少させる可能性があると示されています。
また、GABAの作用を手助けしてくれる効果もあります。
この文章は、2012年に行われた60歳以上の成人を対象に、マグネシウムの摂取が不眠症の改善に寄与するかを調査した結果をもとに記しています。
GABA
チョコレートで見たことありませんか?あれに入ってる成分です。
正しくはγ-アミノ酪酸と言われているようです。
ストレスや不安を抑制する効果があり、睡眠に直接影響します。
さらに、GABAの作用によって脳の興奮が抑えられるため、ストレスや不安で夜中に目が覚める事が少なくなる可能性もあります。
GABAとマグネシウムが取れる食材
サプリメントというよくわかんない物体より、食べ物から取りたい気持ちもわかります。
マグネシウム
ナッツ類、緑黄色野菜、豆類、シーフード
GABA
発酵食品、トマト、玄米、ウーロン茶、玉露
おわりに
いかがでしたか?
普通に眠れている人でさえ、取り組んでいない項目がかなりあったかと思います。
次回はさらに、取り組み難易度が上がりますので「やらないとまずい・・・」という焦りは禁物で「そんな方法もあるんだ!」とあなた自身の視野を広げるという観点で読んでくださって構いません。
瞑想にも触れていきますよ。
それでは今回はここまでになります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
『体内時計のはなし』(三島和夫)
『科学的に証明された「疲労回復」最強の方法』(鈴木祐)
『疲れないカラダをつくる睡眠の技術』(枡野俊明)