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今回の内容も、取り組みが難しければ、それなりに難しい科学的根拠の提示があったりと、煙たく感じるかもしれません。
難しいと感じたら、参考程度で構いませんよ。
何度もお伝えしますが、焦る必要は一切ありません。
焦る気持ちは自然とわきますが、急激な変化を拒むという脳の仕組みがあるので、少しずつでいいんです。
なお、睡眠薬を持っていない方でもできるように、睡眠薬を用いる方法は省いています。
睡眠薬の服用法
睡眠薬は、個人差がありますのでおおよそですが、寝る1時間ほど前から服用します。
食事は、消化不良の観点から眠りにつく2時間前には済ませておきたいです。
また、睡眠薬を服用すると、空腹感をおぼえることがありますが成分の影響である事が大半です。
23時に寝たいとすると、21時までには「ご馳走様でした」を終え、22時までには睡眠薬を飲み、そこからナイトルーティンをするイメージです。
しかし、豚骨ラーメン特盛から揚げチャーハンセットを食べる場合は、油の量やボリュームの問題で、21時ではなく20時までには食べ終えたいです。その後の間食は取りません。
なお、これら全て医師の指示がある場合はその通りにすることをお勧めします。
さて、冒頭から胃がいっぱいになるような文章をすみません。本題に移ります。
ナイトルーティン エビデンスレベル2
ナイトルーティンとは言葉の通り夜の習慣の事を指し、これを整えることが非常に効果的になってきます。
定着していくと、体が眠るための準備を始めてくれて、特定の行動が眠気を促す引き金にまで変化してくれるんです。
ウォーミングアップ、クールダウン、という言葉を出せば浸透しやすいでしょうか。
ナイトルーティンと聞くと抵抗があったり馴染みがなく、知識を流してしまうかもしれません。
しかしそれは非常にもったいないです。
せっかく時間を使ってくださってるあなたに向け「ナイトルーティンとは?」を知識として得られるよう、難しそうな単語に対する抵抗感を、解きほぐすところからやっていきます。聞きなじみのない言葉って敬遠しがちですよね。
ナイトルーティンとは
少しずつ馴染ませてみせましょう。
例えば、私の記事を寝る前に見てくださっている場合、それが習慣になっていたら
それはナイトルーティンです。
眠る前にスマホを30分触ってから寝る。
それもナイトルーティンです。
ここで、単語を分けてなおかつ単語の意味を再認識してみましょう。
ナイト
夜の事ですね。細かくいえば日没から夜明けまでの暗い時間帯です。
ルーティン
習慣、という意味ですがもっと掘り下げると
お決まりの手順や日課、です。
つまりほぼ必ず行う流れの事を指します。
これらから、ナイトルーティンとは
日没から夜明けの時間までに行う、ほとんど決まった流れの事を指します。
いきなり単語の意味を説明して繋げましたが、おちょくっているつもりはありません。
ここで、ナイトルーティンの例を紹介します。
ナイトルーティンの例
- 18:00-19:00 仕事から帰宅または食事の準備
- 19:00-21:00 食事や入浴
- 21:00-22:30 自由時間
- 22:30 入眠
ざっくりと書きましたが、大体の方がこのような習慣ではないでしょうか。
人によって24時に眠ったり、自由時間と入浴が違っていたりするぐらいだと思います。
このように、習慣が固定できれば問題ありません。
しかし、食事の時間がよく異なったり、入眠がいつも1時間以上バラバラだったり、他にもいろいろな要素で乱されることが多い場合は
ほとんど決まった流れがないことになり、ナイトルーティンが形成されていないことになります。
そして、眠りで困っている方の多くが眠るための習慣や時間がぐちゃぐちゃだったりします。
「言うほど習慣がぐちゃぐちゃな人っていないと思うけどなぁ」
データがあります。
睡眠実態調査報告書では、回答者の51.9%が「不眠症の疑いあり」と評価されており、これらの不眠症状の背景には、睡眠習慣の乱れが影響している可能性があります。
全国健康保険協会/協会けんぽ質の悪い睡眠は生活習慣病のリスクを高めます。
厚生労働省e-ヘルスネット
睡眠の質が悪くなる原因として、睡眠不足やシフトワークなどによる体内時計の問題が挙げられています。調査によれば、休日の睡眠時間が平日より2時間以上長い人が3割強、5時間以上長い人が約2割という結果が出ています。
Pep Upリサーチ/JMDC STORIES
このように、平日と休日の睡眠時間の差は、体内リズムの乱れを引き起こします。
それが睡眠の質の低下や体の不調につながるとされています。
どうして寝る時間が守れないんだろう?ナイトルーティンが作れないんだろう?
結論、まだ決めていないからです。
寝る時間が定まっていない場合、見たいエンターテイメントや、他にやりたい事がつまっていると、脳は余裕でそちらに流れてしまいます。
これは人間の意思決定における「意志力の限界」や「自己制御の疲労」に関する研究に基づいています。
「自制心の枯渇 (Ego Depletion)」理論」ロイ・バウマイスター
具体的には、人間は限られた意志力を使って決断を行うため、疲れていると自制心が弱まり、快楽的で手軽な行動(スマホやゲーム)を選びやすくなることが示されています。
Lin et al.(2019)
そして、決まった流れを持っていないと人間は楽を求めてしまう生き物です。
これは、行動経済学や心理学における「認知的エネルギーの節約」や「快楽原則」に関連しています。
人間は複雑な選択肢がある場合、なるべく簡単で快適な選択(楽な行動)を選びやすいという特性があります。
ハビット・ループ
「習慣の力」チャールズ・デュヒッグ
日常のルーチン化された行動は「トリガー」「行動」「報酬」の3段階で形成されると説明されています。
このプロセスがない場合、人は短期的な快楽を求める行動に流れる傾向があります。 矢沙玖要約すると
『きっかけがあり、行動をする事で、何かしらの結果がでます。
この一連の流れを自身がポジティブに体感できる形で持ってない場合、楽をしがち』
ということです。
一連の流れをポジティブに体感できていないとは?
・成果が出るまで遠すぎる
・上手くいく想像がつかない
・なかなか報酬がもらえない事を学習してしまった。
とかです。
ハビット・ループが成り立った例
「ちょっと息抜きに発散したいな。→きっかけ」
「そうだ、スマホでゲームしよう→行動」
「手軽にクリアできたり情報が見れたり面白い→報酬」
と、スマホを使う事に対してはハビット・ループが成り立ってるんです。
しかもめちゃくちゃ手軽なのでスマホを触っちゃうんです。脳がデフォルトで効率を求める直感的で速い思考に頼り、難しいことを避けやすいことが説明されています。
「ファスト&スロー」ダニエル・カーネマン
今あなたが寝る前の習慣をもっていないとしたら、スマホを触りすぎてしまったり、ゲームに夢中になったり、誰かとの交流で寝る時間を忘れて没頭してしまうことは当たり前なんです。
この睡眠に悪い流れを止めるには、何かしらのきっかけで睡眠に関心を持ち(きっかけ)、睡眠を見直し(行動)、気持ちよく眠れた・目覚めた(報酬)を体感する事が大切です。
例えば
今回の記事で危機感を覚えた(きっかけ)
寝る前にホットミルクを飲んだ(行動)
いつもより10分早くブルーライトから逃げた(行動)
なんとなくすぐ眠れた(報酬)
なんとなくよく寝れた(報酬)
起きた時の充実感がある(報酬)
起きても体が重くない(報酬)
こういった項目が挙げられます。
SNSやゲームなどは「ドーパミンの報酬系」を刺激するため、特に疲れた状態では脳はその楽しさに強く引き寄せられてしまいます。
ブルーライトの影響
Harvard Medical School
ブルーライトは体内時計を乱し、メラトニンの分泌を抑制するため、寝る直前のスマホやタブレットの使用が睡眠を妨げると報告されています。デジタル依存
Adam Alter
SNSやゲームがドーパミンのループを形成し、人を依存的にさせる仕組みが解説されています。ブルーライトの影響でどんどん睡眠が先送りにされ、デジタル依存によって睡眠改悪がどんどん強化されていくイメージです。
そして2020年の研究 (Exelmans & Van den Bulck) では、夜間のスマホ使用が睡眠時間を大幅に削減し、日中の疲労感に繋がることが確認されています。
負のループですね。
しかもこれを直そうとしても脳は習慣に沿おうとしてしまう習性があり、変化を嫌います。
どうすれば改善できる?
ナイトルーティンの話に戻します。
18時から眠るまでのスケジュールをほとんど決めましょうなどとは言いません。
まずは寝たい時間を決めてしまい、きっちり守らなくても、ズレは30分以内にとどめておくなどの小さいステップで進めるといいですよ。
そして、寝たい時間の数時間前からの行動を、入浴、読書、ブルーライト制限、瞑想、深呼吸などのようなリラックスする時間のみで固定させてしまい、それを少しずつ守っていくようにすればいいんです。別に読書しなくとも瞑想しなくとも、リラックスする時間が寝る前の習慣に組み込まれてればOKです
今私が眠る前に取り組んでいる事を開示します。
筆者の例
眠る1時間半前からをナイトルーティンとしています。
・スマホやパソコンなどの作業をやめる。(デジタルデトックスともいいます)
・水を一杯飲み、メラトニンサプリを飲む
・皆様に情報をお届けしたいので、役に立ちそうな本を手に取り読書を30分~60分する(読書にはストレス軽減効果が68%もあることがわかっています)できてない日の方が多いです
1日に6分でも読書をするだけで68%もストレスが低減する
University of Sussex study on reading and stress reduction・歯磨きをする
・光時計のアラームをセット
・寝室のカーテンを閉め、耳栓をする
・スマホの睡眠計測アプリを起動(ポケモンスリープをやってましたが、Pillowというアプリに変えました)
ここまでやると大体寝たい時間の30分前ぐらいになるので、消灯して目を閉じます。
不眠症が改善したばかりなので、まだまだ寝つきが悪いですが30分以内には眠れるようになりました。
少し話は逸れますが、光時計が私にはなかなか良いアイテムだったので紹介します。
光時計を使ってみての体感

私は心臓が弱いのでアラームだったりの音が小さめの音でもなると、ビクッと起きてしまうんです。
そのせいで「やばい!寝坊する!」という焦りも強化されてしまい結構負担に思ってたんです。
そこで光時計というアイテムを知って調べてみました。
光時計とは、設定した時間になると光りはじめるアラーム機能があり、眩しさをだんだん感じて自然に起きるようなイメージの商品です。
ナイトルーティンがあっても100%完璧ではない
ここまでナイトルーティンを作ってみても、頭の中で思考がグルグルする場合もかなりあります。
そんな時はスマホのメモに、考えていることをメモしたり、Todoアプリにやることを記しておいたり、気になる事があればググってしまいます。
もちろんこれで1時間が過ぎてしまうこともあり、翌日に悪影響する事が多いです。
ホットミルクを飲んでた時期もありましたが、私はプラシーボ効果すら起きませんでした。
故に、やれば100%上手くいくというものはない事を実感しました。が、0%は絶対にありえません。
まとめ
現代の日本人は深刻な睡眠不足を抱えています。
普通に眠れていると思っている人でも、睡眠の質が悪かったり、科学的な推奨睡眠時間が取れていなかったりと様々なデータが報告されています。
さらに、以前からの繰り返しになりますが
睡眠に問題があると脳へのダメージは蓄積されます。
脳のダメージが一定を超えるとメンタルが不調になっていきます。
さらに、脳の機能を低下させます。
脳の機能が低下している状態では
- あらゆる言葉が届かない
- 理解を途中でやめてしまう
- 快楽を求め続ける
- デメリットを承知で悪い習慣を続けてしまう
このように負のループへ陥ります。
ですが、治せます。脳の機能が低下しているだけです。
脳の機能は睡眠の改善で回復できるんです。
眠る30分前に深呼吸を2分やるだけで睡眠が良くなるならどう思いますか?
今日から5分ずつ、眠りたい時間を守るようにすれば7時間眠れて元気になれるならやりますか?
睡眠に関する知識の習得、お疲れ様でした。
行動を促すような文章が続いてしまいましたが苦しくはなかったでしょうか。
多すぎる情報に窮屈になる必要はありませんし、習得や理解に時間をかけても大丈夫です。
取り組む事に価値があり、成果は必ず、小さなところから出てきます。ただの一般人の私がそうです。
それでは今回はここまでになります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
『ぐっすり眠れる方法―疲れを取り、パフォーマンスを上げるために』(宮崎総一郎)