わかってても行動できない・・・。それ、あなたが怠惰なわけではありません。~後編~

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    この記事は『前編・後編』の二部構成です。テーマに沿った情報を二回に分けてお届けするものになります。
この記事のエビデンスレベルはです
この数字はAI(ChatGPT)による情報源の分析結果と著者の評価を基に設定しています。元となる参考文献は記事内に掲載しています。(ショートブログ除く)

「わかっててもできない・・・」
その理由はきちんと腑に落ちていただけたでしょうか。
自分を責めてはいませんか?

休息をしてみては?と書きこそしましたが「わかっててもできない」でしょう。
なので、できてなくても問題ありません。

しかし一体、体の中では何が起きているのでしょうか。

脳は心を守ろうとする エビデンスレベル2

さて、前編では

前頭前野という脳の一部が、疲労やストレスによるダメージの影響で働きが悪くなっていて、それにより先延ばし癖がついてしまうという事をお伝えしました。

しかし、その前頭前野以外でも「わかってても動けない」を誘発している体の一部があるんです。
それはです

怠惰なのではなく、心で保護反応が起きているんです。
つまり、行動できない理由の一つは、脳が心を保護しようとしているからなんです。

「え?脳は疲れていて働きが悪くなっているんじゃ?なのに心に命令できてるの?」

確かに脳は疲れていますが、限界ながらも必死に抵抗を示してます。

脳は「限界である」と信号を出している

まず、あなたが過去に経験した失敗不安プレッシャーというネガティブな記憶、ありますよね?
そのネガティブな記憶が一瞬でも思い出されて、それがきっかけとなり、行動すること自体がストレスだなぁと感じてしまう事もあります。

そのようなストレスを抱いた瞬間、脳が即座にこう反応します。

「今それをやるな、ダメージを受けてる脳には余計に負荷がかかるから・・」

と判断し、行動を回避することで自分を守ろうとします。

過去の失敗や不安などのネガティブな記憶が想起されると、脳はそれをストレスとして認識し、行動を回避することで自己防衛を図る。

LeDoux, J. E. (1996).
The Emotional Brain: The Mysterious Underpinnings of Emotional Life. Simon & Schuster.


脳は過去のネガティブな経験に基づき、同様の状況での行動を抑制することで、さらなるダメージを避けようとする保護反応を示す。

Gray, J. A. (1982).
The Neuropsychology of Anxiety: An Enquiry into the Functions of the Septo-hippocampal System. Oxford University Press.

脳の疲労は、行動意欲の低下やタスク回避の原因となり、これは脳が自身を保護するためのメカニズムである。

Hockey, G. R. J. (2013).
The Psychology of Fatigue: Work, Effort and Control. Cambridge University Press.

これがわかってても動けない理由であり、心が関与している面になります。

完璧主義という単語を聞いたことがあるでしょうか。
似ていると感じませんでしたか?

過去の失敗経験をもとに、同じ感情を抱きたくない。失敗したくない」と、心がサインを出しているともいえるんです。

だからそもそも動きたくなくなるし気がわかないのです。

そもそも行動せずにいれば、失敗した時の嫌な感情を感じずに済みますよね?

この事から、行動しない事は決して怠けているわけではなく、あなたの心が自己防衛反応を起こしているということが言えます。

自分が行動を起こすと「不快な感情を抱く可能性がある・・」脳が判断する事で、意識的にも無意識的にも行動を避けさせるのです。

そうすれば、心が傷つくことをその場では防げるんです。
根本解決でなくとも、一旦でも心が傷つくことを防げるならOKになっちゃってるんです。

これは、目先の快楽に逃げやすくなっている状態にもなっているからです。

正しい思考があるかどうかで、脳は心を攻撃するか守るかが変わる エビデンスレベル2

さて、ここまでお伝えしてきましたが、自分を無理にでも動かそうとしたり根性というものを起こそうとしたり誰かからの影響で抱く恐怖心によって動くなどは、全て逆効果です。

あなたが行動できないのは決して、甘えでもなければ怠惰でもなく、脳へのダメージや、過去からの注意勧告があなたを阻害しているだけです。

と言われて、納得がいくようになっていますか?

先ほどに記した知識がないままだったらどうでしょうか。
間違った解釈を持ち続けると自分で自分を攻撃する事になりかねません。
そうなると、心の傷が治るものも治らなくなったり、治りが遅くなります。

自分で自分を攻撃する例

恐怖や不安が行動を阻む

研究によると、特に強い不安や恐怖を感じる状況では、脳の扁桃体が過剰に反応し、恐怖回避行動が強化されます。

このため、行動する意欲が低下し、どうしても動けなくなってしまうことがあります。

と、ここまでは説明しましたね。
これを、無理な言動で押し殺すと脳は心を攻撃します。

無理な言動で押し殺す例
  • 自分が怠けていると思い込む。
  • 周りはやっていると言い聞かせる。
  • こんな事も出来ない自分は駄目だ。と否定する。
  • 自分はできない奴だ。と決めてしまう。
  • 自分の我慢力が弱いせいだ。と解釈を間違える。

自己批判は逆効果

「自分は怠け者だ」自分を責めることは、さらに行動を起こしにくくする悪循環に陥ります。

なぜなら、自己批判自己効力感(自分ならできる!という自分への信用度)を低下させ、モチベーションを削いでしまうからです。
結果として、ますます行動を先延ばしにしてしまう可能性が高まります。

これを、更に自己否定して「怠けものなんだ・・」と蔑めば、脳は心を攻撃するでしょう。

「行動しない自分が悪い!自分なんて!」と戒めのつもりだったとして、それを行動のきっかけにしようとしても、結果的にその戒めが自己効力感を下げ、なおさら行動力低下に繋がりかねません。

自己批判

自己批判が強いと自己評価が低下し、心理的なストレスが増加します。
これにより、行動に対するモチベーションが低くなり、行動を先延ばししやすくなります。
自己批判の強さ抑うつ不安との関係は多くの研究で示されており、自己批判的な思考は行動を妨げ、むしろ回避を促進する結果につながります。

(Shahar et al., 2015)

自己効力感と行動の関係

心理学者のアルバート・バンデューラによると、自己効力感が高い人は、自分の行動はしっかり結果に結びつける事ができるという信念を持っており、困難な状況でも努力を続けることができるとされています。

逆に、自己効力感が低い人は、行動に移す前に諦めたり無力感を感じたりする傾向があります。

これを、ケアせず「怠惰」で片づけると、自己否定につながり、脳は心を攻撃します。

自己効力感が低いのなら、先に自己効力感を上げる事が大切です。
具体的には、小さな成功実感できる形で頻繁にゲットする事で少しずつ「自分はこういう面でなら上手くいくぞ」と、自分にもできる事がちゃんとあるという事実を体に刻みます。
これはゲームでもいいですし、本を理解できた。とかでもいいですし、漫画のストーリーを理解した。とか、このセリフは体に響くほど理解できた。というものでもいいです。さすがに呼吸した!は成功と思うには無理があります。
ですが例えば、ご飯をちゃんと食べた。は生活習慣の成功だったり、食べる事が難しい人には十分な成功でもあるので、あなた自身が成功だと解釈できることなら何でもOKです。

自己効力感

自己効力感とは、自分が目標を達成できるという信念のことです。

自己効力感が低いと、人は挑戦に対して自信を持てず、行動を起こすことに対して恐れや回避感を抱きやすくなります。
研究によると、自己効力感が高い人は困難な状況でも積極的に行動し、逆に低い人は行動を避ける傾向があります。

(Albert Bandura 1997)

あなたの今のメンタルはどうですか?

行動に移せないときでも、怠惰という強い言葉をすぐに使わないようにしてください。

行動できない状態ひとつとっても、怠けの一言で済ませられない事が体の中では起きている可能性が、科学的には多く言われています。

むしろ、脳や心が自分を守ろうとする自然な反応である事が多く、無理に行動しようとすると、かえって逆効果になることもあります。

ところで「明日やろうは馬鹿やろう」という言葉を使って無理をしようとしていませんか?
これは確かに一部の人にとって有効なモチベーションとなる場合があります。
ただし、メンタルが疲弊している人や、後回しにしてしまうことに罪悪感を抱く人には、逆効果になることが多いんですよ。

あなたにはあなたのペースがあります。

今のあなたを作った環境に目を向け、その結果あなたがどんな傷を負ったのかを考える事はありますか?

例えば、怠惰とか甘えと言ってくる人間が周りにいませんか?
もしいたとすれば、あなたの背景にまでは無関心で無責任になっています。それゆえに、暴力に近い言葉を自己満足のためにあなたに投げてる事になっていないか再確認してみてください。

あなたを無理強いしようとする環境にいないか今一度確認してみるといいでしょう。

さて、あなた自身のメンタルの状態は把握できていますか?

簡単なワークシートを用意しましたので、自分がどんな行動を取ればいいのかの参考にしてください。

メンタルチェックワークシート

  1. 今の気分はどうですか?
    • ストレスが溜まっている(5点)
    • 少し疲れている(3点)
    • リラックスしている(1点)
  2. 最近、物事を後回しにすることが増えていますか?
    • よくある(5点)
    • 時々ある(3点)
    • あまりない(1点)
  3. 行動に移す前に、何か不安を感じますか?
    • いつも感じる(5点)
    • 時々感じる(3点)
    • ほとんど感じない(1点)
  4. 休む時間は十分に取れていますか?
    • 取れていない(5点)
    • 時々取れている(3点)
    • 十分取れている(1点)
  5. 物事に対して完璧を求める傾向がありますか?
    • いつも完璧を求める(5点)
    • 時々そう感じる(3点)
    • ほとんど気にしない(1点)

点数の結果

  • 15~25点:心の疲れが蓄積しています。少し休憩を取ることが必要です。無理に進めず、療養を大切にしてください。
  • 10~14点:ややストレスが溜まっています。生活リズムを整え、無理のない範囲で少しずつ取り組むのが良いでしょう。
  • 5~9点:比較的安定した状態ですが、自分のケアは忘れずにしましょう。やることが多すぎると感じた場合は、少し手を抜いても大丈夫です。
  • 4点以下:おめでとうございます。
    自己管理が届いており、ストレスを無駄に抱えない生活が今は送る事ができています。
    しかし、環境によっては一気に変化する事もありますので、引き続き今の感覚を大切になさってください。

ここまで実施くださった上で、今のあなたがどうするべきかを納得くださっていれば、後は少しずつあなたに合う習慣を手に入れていくだけです。

あなたに合う習慣を得る事に関しては、脳は応援してくれますし、心はもっと情報をくれます。

「ほんとはもっと寝たい」「今は遊びたい」「これはやりたくない」「ああいう人からは離れたい」

これ、社会的には望まれない事が多いですが、今のあなたの状況にはそれがぴったりだと心が教えてくれていたりします。

現状に納得せず、焦って奮い立たせようとすると、脳は心を攻撃し、心はいずれ壊れます。

それでも行動したい、でも行動できない時の対処法

焦って一度に大きな目標を達成しようとするのは危険です。
まずは小さなステップから始めましょう。

たとえば「2分だけやってみる」「1ページだけ読む」「後回しにしないで今すぐほんのちょっとやる」など、取り組みやすい条件にして、それを継続するんです。

それすらもできなかったとしても自分を責めないでください。
習慣になっていないんですからできない事はおかしいことではありません。

ですが、やる以上は成功させたいですよね?

そのためには、例えば作業環境を整え、部屋を綺麗にした方が意欲がわくのなら綺麗にして、通知はなるべく切る。など、自分に合う環境づくりを学ぶのも十分な一歩ですし成功に繋がります。

そして、その行動をすると自分にどんなメリットがあるのかを再認識すると取り組みやすくなります。

まとめ

いかがでしたか?

「わかってても行動できない」という状態が体の中ではどうなっているか説明し「これをするとまずい」を解説し「わかっているから少しぐらいは行動に移すぞ」という思考がわいたでしょうか。

「わかっててもタスクに取り掛かれない」状態を焦るのではなく、科学的に見て疲弊しきっている可能性を疑うべきです。
タスクに取り掛からなくちゃいけない事をわかっているからこそ、そのための行動として、休息を取るであったり、無理をせずあなたのペースを尊重する事が大切ですよ。

そんなに頑張っても、喜ぶのはあなたとは程遠い他人または社会です。
あなたが喜べもしないのならそれは犠牲活動です。
自分が幸せであることをもっと求めていいんです。

それでは今回はここまでになります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

参考文献

『脳はなぜあなたを支配するのか』(河合隼雄)

『心を操る神経科学』(ジョン・A・ジョンソン)

『自分を責める人が知っておくべきこと』(デボラ・リー・ベンジャミン)

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