前編はこちら
前編では『なぜ周りはあなたを理解してくれないのか、されにくいのか?』を解説しました。
そして、あなた自身すらもあなたを無視している可能性についても述べました。
そんな状況にストップをかけるため、あなたの心が実は出しているサインに気付くようお願いをしました。
「そもそも最近なんでこんなに疲れるんだろう、思えば全部対人だなぁ」
「周りは普通にやれてるのになんで自分ばっかり・・・」
こんな自己否定や対人ストレスが生じるメカニズムを知り、あなたが自分自身を少しずつでも理解するためのお手伝いをさせてください。
仕組みがわかれば対処法もわかります。
心が疲れる理由 エビデンスレベル2
世の中は思った以上に冷たくて、でも、意外と温かいのが現実です。
しかし、簡単に温かい環境に身を置けるわけではないのも現実です。
だからあなたは心身ともに疲弊してしまい、私の記事にたどり着いたと思います。
心が疲れる理由、と大きなことを書きましたが、内容は人それぞれ。
ですがどれも、根本は人が関わっているから心が疲れるんです。
科学的な観点と実際の例を照らしながら見てみましょう。
3つの科学的観点を紹介します。
社会的ストレス理論
心の疲れの多くは社会的ストレスから来るとされています。
他者との交流や人間関係における期待、不安、摩擦が引き金となり、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を引き起こし、精神的な負担を感じるためです。
コーエンとウィルズ (1985) 「ストレス、社会的サポート、健康」
例えばある研究では、職場の人間関係が仕事での満足度やメンタルヘルスに大きく影響を与えることが示されています。
退職理由のTOP1が対人関係である事はこの理論を知れば納得ですね。
実際に厚生労働省や転職サイトの調べで、退職理由として「人間関係の不和」が頻繁に挙げられていますよ。
「社会的サポートとストレス」の研究
コーヘン、アンダーウッド、ゴットリーブ編 (2000) 「社会的サポートと健康」
ストレスが高いと感じる人の90%以上は、対人関係に関連した問題を挙げるというデータもあります。(例えば、家族問題、職場の人間関係、友人との衝突など)
つまり、心の疲れの多くに人が関わっている事の証明になります。
エネルギー消費の観点からの説明
シュワルツ、シュルキン (2003) 「ストレスとエネルギー消費: 神経内分泌系の役割」
心の疲れの原因には、人との関わりは心理的なエネルギー消費が大きい事がわかっています。
これは、社会的な期待や自分の役割を果たすための努力が重なると、心のリソースが消耗しやすくなるためです。
なんとなく伝わったでしょうか。
そして、社会的ストレスとメンタルヘルスの相関を示すデータも出ています。
メタ分析によると、社会的孤立やストレスの多い人間関係は、喫煙や運動不足と同等の健康リスクを持つことが示唆されています。
(Holt-Lunstad, 2010)
また、職場における人間関係のストレスは、うつ病リスクを1.5~2倍高める報告もあがっています。
(Bonde, 2008)
人と関わる事が疲れる例
「人と関わる事って疲れるよね・・・」という事はわかっていても
なぜ疲れるのか?までは説明が難しいでしょう。
ここまでの科学的観点を元に、実際に例を挙げてみて照らし合わせてみましょう。
職場での人間関係のストレス
上司の期待に応えられないことへのプレッシャー、同僚との競争や対立、過剰な責任感や失敗への恐れなどが挙げられます。
これ、当然ですが業務の押し付けなどのパワハラも該当しますよ。
パワハラだと気付かないうちは、多すぎる業務内容にプレッシャーを感じますし、相手から威圧的な態度や、挨拶に問題がある場合もプレッシャーになります。
パワハラまではいかなくとも、あなた自身がイメージする社内環境や対人とは違う事が起きてもプレッシャーになりますよね。

誰でも抱くんです。私も例外なく抱きまくりました。
だから、繰り返すうちに社会の圧力に立ち向かえなくなり、症状として現れ、ひきこもる期間が生じてしまったんです。
「自分だけが・・・」と何度も思いました。
家庭内の摩擦
家族間での価値観の違い、パートナーとの口論、子育ての負担、親の介護などが心の疲れの原因となることがあります。
こちらもよく聞く話ですよね。私もありました。

自分の悩みを身内にすら理解されず「それが社会なんだ」「かといって社会に出ない事はまずい」と、説き伏せられる一方で、そのあげく
「そうか自分はダメなやつなんだ、じゃあ無理だ、世の中に合わない、もうしらね・・・」という段階までいきました。
社交疲れ
社交の場での人間関係の維持や、新しい人との出会いに対する不安、無理をして会話を続けるストレスなどがあります。
こちらも誰もが経験があるでしょう。
「いわゆる陽キャはこんな悩みなさそう(笑)」
いいえ、誰でも抱きます。
社交的な方でも、合わない人と関わる事になったり、自分から歩み寄って謙虚に出る事も社交疲れに繋がります。

私は社交に疲れ切り、すっかり苦手になってしまったので、もう社交の場に行かないようにしています。バリアをがんがんに張っています。
孤立感と孤独感
自分が孤立していると感じる場合や、人間関係で認められていないと感じることも、心に大きな負担をかける原因となります。
なんとなく「惨めだ、無様だ・・」と感じる環境にいると、ものすごいストレスを感じるんです。
私もありますよ。
社交の場で孤立するのもそうですし、かといって社交の場に行かない分、コミュニティに関して知らない事だらけになるので、孤立に繋がりました。
集団において無理をしていないでしょうか。
なんとなく心がざわついたり、集団にいるのに次第に元気がなくなっていく経験ありませんか?
「私は周りが楽しそうに会話してるのを聞くのが好きだから!」
という方もいると思います。
でもそれ、常にそうでしょうか。
無意識のうちに孤立を感じると、めちゃめちゃ心が疲れるんです。
例えばこんなのも該当します。
同性2人、異性1人
の3人で仲良くしようと思っているのに、やたら、男女が仲良く話し続けていて、少し込み入った話をしだすと、残された同性1人はあぶれている感じしませんか?
これ、本人はめちゃめちゃ疎外感を感じている可能性があります。
故に物凄く心が疲れる事でしょう。
この場合、帰宅してそれぞれが1人になると、その男女は満たされているかもしれませんが、あぶれてしまった人はドッと疲れたり、もやもやしている可能性があります。
研究としてその反応は自然です。
経験のある方、決してあなたの器が小さいわけではありませんよ。
また、こうならないように気を配って全員と話している優しい方、それも疲れて当然ですよ。
そういった気遣いができない人を見ると、むかつくこともあるでしょう。
日本の研究によると、強い社会的ネットワークを持つ人は、ストレスによる健康リスクが30%低下する。
(厚生労働省, 2020)
※情緒的なサポートを感じられる対人関係においての話です。
強い社会的ネットワークと言われてもわかりづらいでしょう。
「身近な人たちとのつながりがしっかりしている人」
「友達や家族、支えてくれる人が多い人」
「周りに支えてくれる人がいる人」
こうした関係性の事を指します。
その上で
『友達や家族など、身近な人たちとのつながりがしっかりしている人は、ストレスが原因で健康に悪影響が出るリスクが30%低くなるという研究結果があります』
という表現ができます。
ネットワーク上のストレス
SNSなどのオンラインのやり取りでのプレッシャーや、他人と自分を比較してしまうことなども心の疲れの原因の一つです。
特に、今まで挙げた例が全てネットでも遭遇するといっても過言ではありません。
自分が経験のあるネットゲームを挙げて照らしてみますね。
ネットゲーム等のオンラインでも、私生活で感じるストレスと極めて近い物が潜んでいる
職場での人間関係のストレス
いわゆるギルドみたいな組織で発生しますね。
先輩であるとか、あの人の方が強いからとか、中身が年上だとか。
指示厨、効率厨とか聞いたことありませんか?
このように色々あり、実際に起きてる事はリアルのコミュニティと同じと考えます。
家庭内の摩擦
家庭ではないですがこちらも、オンライン上ですごく仲の良い人が相手だと起こりえます。
始めたての新人さんをサポートしたりだとか、でもその方と自分ではゲームに対する価値観が違ってすれ違ったりとか、よく聞く話です。
社交疲れ
間違いなく起きます。
オンラインならなおさら、全く知らない人が集まっているところに飛び込むこともありますし、友人の紹介で新しい組織や人脈に飛び込むこともありますね。
野良と聞いて通じる方、それの事です。
孤立感と孤独感
こちらもネットで起きますし、実例を本当によく聞きます。
このストレスがいきすぎると、人によっては掲示板だったりに書き込んだり、自身のSNSに晒したりと、問題行動に発展しやすいです。
対人のストレス要素は当たり前のように潜んでいる
あなたが疲れる理由は科学的にしっかり証明されていて、実際の例も挙げられており、それを身近な例にまで落とし込むと
「全て人間の仕組みとして当たり前なんだ」
と繋がってくるわけです。
あなたが弱いわけではありません。
ストレスのかかる環境にばかり身を置いているのかもしれません。
疲弊して当然です。
エゴ消耗理論
Baumeister, 1998
人は自己抑制を続けると認知リソースを消費し、ストレスを感じやすくなる。
神経科学的研究によると、人と接することで前頭前野のエネルギー消費が増大し、疲労感が強まる。
(Porges, 2007)
では最後に、なぜあなたばかりが抱えているのかを読み解いていきます。
自分ばかり耐えれないと感じる理由 エビデンスレベル4
※(訴えかける言葉が含まれているので、そこまで求めてない方はここで閉じてください)
まず、めちゃくちゃ簡単に理由を大雑把にお伝えします。
- 今の環境が合っていない
- 今の人間関係が合っていない
- 自分の分析ができていない
というところなのですが、なぜこんな事を抱くのかというと
あなたは、今までの経験をふまえ、今後どうなりたいか、何なら我慢できるのかを、心は実はもう知っているんです。
それが事実上可能か不可能かをごちゃごちゃにして、頭が余計な思考を混ぜてくるからみえないだけです。
よって、実は抱いてるイメージと、実際が異なりすぎているから、自分だけが耐えられない人間なんだと錯覚を起こすんです。
そして冒頭に書いたこの言葉
世の中は冷たいけれど、温かい所もある。しかし、簡単に見つからないのが現実。
あなたが適応できないわけじゃないんです。
見つけられていないだけです。
あなたの選んだ環境と、あなたが無意識に期待している他者や環境へのイメージ。
これがミスマッチを起こしているから疲れきってしまうんです。
その結果「なんで周りは耐えれるんだろう?」となってしまうんです。
周りの人は、それなりにその人の思うイメージに対しミスマッチとまではいかないぐらい順応できているだけなんです。
ややこしくなってきました。例を挙げてみましょう。
自分のイメージと事実のすれ違いの例
「挨拶をしたら挨拶を返してくれる」という経験があるとします。
これって、今まで生きてきたうえで当然なので、他者に対してもある意味期待をしてしまっているんです。
だから、挨拶が返ってこない、「お疲れ様」を目を見て言ってくれないだけで、あなたのイメージとのギャップでストレスが発生します。
加えて、過去がこうだったらこうなりえます
挨拶をされたら挨拶を返さないと体罰を受けるような環境で当たり前に育ってきた場合
挨拶を返さない事が信じられないような思考があるわけですから、これを他人にやられると「挨拶を返さないなんてどういう神経をしてるの?」とか「自分何かやったか?」と、他の人と比べてより強いストレス反応を示し、過剰に考え込んでしまいます。
経験ありませんか?
私はあります。
亭主関白の家庭で暮らした経験があるので、大勢からは理解を得られないわけのわからない習慣を当たり前な事として植え付けられて育ちました。例えば
- 家の中で歩いていい場所の指定
- 家の中でも親にすれ違う時は会釈
こんな経験ありますか?
「え、嘘でしょ?」「いやいや、話盛ってるだろ」
と思いますよね?これが世間の感覚と本人の事実によるギャップです。
この経験を世間の当たり前にされても困りますよね?
これこそが、いざ外に出た時にギャップとして生じやすく、本人の生きづらさというストレスへつながるわけです。
本人が「これが普通なんだな」と認識してしまうとその時点で、他者や環境への期待や妥協点を、勝手に設定してしまうわけです。
また、現実とのギャップに気付き「自分はあんな環境で厳しく辛く生きてきたのに、なんで・・」と不平感を覚える事もあります。
その結果、攻撃的な態度を取る人もいます。
だんだんとイメージできてきたでしょうか。
「パワハラなんてありえない、時代遅れの行為だ」
「セクハラとかきもすぎ、だって相手が傷つくでしょ」
「こういう言われ方をすると、相手は嫌な気分になるだろう」
これらすべて、あなたが今までの人生で得た常識でしょう。
ですがこれらに対しても、それっぽい反論をかまして理解しようとしない人達もいますよね?
このように、あなたにとっての常識を得ていない人が世の中にはたくさんいる事も事実です。
だからあなたのイメージと実際の世の実情にギャップがあり、疲れるんです。
共感ギャップがここで発生します。
では何をすればいいのでしょうか。
まとめの中でしめくくりましょう。
まとめ
3つの科学的根拠を紹介し、疲れる理由を科学的に説明しました。
個人の経験が違うからこそ別の思考が培われ、その人と人同士が関われば摩擦が起こるのも自然です。
しかし
「人と人が関わるのって摩擦が起きて当然だよね」
と、思考停止にして妥協できるわけがありません。これからも生きていくんですからね。
ですが「あの人が嫌」「こんな環境耐えれない」と考えた場合、なぜなのかを深掘りして言語化したことはありますか?
実は、あなたが抱えている「耐えれない」「嫌だ」と思う事をしっかり認識し、向き合い、なんで嫌なのか?をもっと分析すると見え方が変わるんです。
そうしたら、自分はこういう常識を持っているから世間のこの部分とすれ違って不快な思いをしている。と仮でもいいので結論を出してみてください。
その結論こそが、あなたの持つ考え方や価値観です。
それをふまえ、今あなたが置かれている環境や対人が、どれだけあなたの出した結論とズレているのかを確認してみてください。
環境や対人を見直す機会が訪れるかもしれません。
身の回りが変えてしまえば、あなた自身も変化します。
実際に思考するために、嫌な事、耐えれない事、今日あった不快な事などを紙に書いたり、スマホのメモを使ったり、アプリを使うのもいいですよ。
10年日記やMindMeisterもお勧めです。
https://www.mindmeister.com/ja マインドマイスター
https://web.10nikki.com/welcome 10年日記
大谷翔平選手が実施したマンダラチャートも効果的です。
特に、マインドマイスターやマンダラチャートを使えば、現実的かはさておき自分ってどうなりたいのか?がみえてきます。
今の環境のまま頑張りますか?
環境を変える事を頑張りますか?
正解はありません。決めるのはあなたです。
ただ私なら、自分が納得できる環境を得る事に全力を尽くします。
あなたの優しさはどこへ向けますか?
それでは今回はここまでとなります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考文献
『ストレスのはなし』(小川捷之)
『社会的孤立と健康』(Holt-Lunstad)
『ウィルパワー』(ロイ・バウマイスター)
社会的ストレス理論
コーエンとウィルズ (1985) 「ストレス、社会的サポート、健康」
「社会的サポートとストレス」の研究
コーヘン、アンダーウッド、ゴットリーブ編 (2000) 「社会的サポートと健康」
エネルギー消費の観点
シュワルツ、シュルキン (2003) 「ストレスとエネルギー消費: 神経内分泌系の役割」