後編はこちら
今回は「頑張らなきゃやらなきゃ」と感じているのに「どんどん動けなくなっていく・・・」
という心の問題についてみていきます。
無意識の頑張る行為は心の傷や自己否定に繋がっています。
「頑張る事って美しい」
これは誤解です。ただの自己損傷です。外から見て美しいだけです。
心も体も健やかでいるには、外部からの評価は関係ありません。
周りが頑張りを褒めるから頑張る事が美しいと錯覚しているだけです。
「周りが褒めてくれるから、頑張らないと周りに嫌な顔される、それって心身の健やかさに影響するでしょ!何言ってんだ!」
それは他人軸で生きているからです。
交流が満足度に影響する事実やデータはありますが、心身の健やかさは他人軸で生きなくても得られる事実もデータもあります。
頑張る事は自己犠牲でもあるんです。記事を読み進めて自分軸に気付いてみませんか?
頑張りすぎで枯渇しています エビデンスレベル3
「頑張る」はエネルギーの前借り
こちらは私の言葉ではなく、著者である八木仁平さんという方の言葉になります。
ご本人の解説を知れば知るほど非常に共感できる言葉なので、私自身でも調べてみました。
まずは「頑張る」がなんなのか、簡単に解説します。
人間はあらゆる行動に対し、エネルギーを消費し活動を続けます。
一定までエネルギーが無くなってくると休息が必要だというサインを出しますよね。
それが眠くなるだったり、疲れるだったり、空腹になる、だったり。
ここに「頑張る」という単語が入ればどうなってしまうでしょうか。
- 寝ないで頑張る
- 休まず頑張る
- 食べずに頑張る
という文章になりませんか?
この文を読んでいただき、心のサインに対し頭が「頑張れ」と
体に鞭をうって、無理やり動かしているイメージ
に繋がれば正常です。ところが
「まぁよくあるし普通でしょ」
こうなったら現代の考え方に洗脳されていて思考停止状態です。心のサインを無視しています。
Q.次に、こちらの状態に「頑張っている」様子を入れるとどうですか?
- いつも通り働く
- ゆっくり仕事をする
- 散歩する
- 普通の接客をする
変換してみましょう
- いつもより頑張って働く
- てきぱき仕事をする
- ジョギングする
- お客様を満たすような接客をする
通常よりも多いエネルギーを使っていると感じませんか?
大変そうで、しんどそうで、だるそうなイメージがわきませんか?ポジティブならこの限りではありません。
休むべきサインが出てる人がこのようにしていたら「休みなよ」と感じませんか?
このように「頑張る」というのはエネルギーをいつも以上に消費したり、ない所から呼び起こす行為です。
こんなのを続けさせられたら、体も心も疲れてしまうと思いませんか?
そのサイン、今出てませんか?
頑張りすぎが健康に与える影響は疫学研究で証明されています。
『意志力の科学』Roy F. Baumeister
具体的には、過労が心血管疾患リスクを増大させるなどの報告もあります。
『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』ケリー・マクゴニガル
ソロモンのパラドックスという言葉があります。
他人の状態なら見ても適切な判断ができる。にも関わらず、自分の事となると適切な判断ができなくなる事を意味する
ソロモンのパラドックス
優秀な方でさえこのような事が起き、例えとしてこんな言葉が生まれるぐらいです。
多くの方が自分の事になると見えなくなるのも普通です。
だからこそ、自分への心配を今一度してみてください。
頑張るって当たり前なのに大げさでは? エビデンスレベル2
現代の主張に流されて頑張る事を当たり前だとした場合、当たり前のように頑張った結果心が疲弊し、最悪の場合は精神に大きな影響を与え、病に陥る事までセットで当たり前になるようでは大問題です。
実際に、頑張りすぎが健康に悪影響を及ぼすデータも出ています。

極論でしょうか?たくさんの被害の声がある以上、事実に基づいていると私は思います。
頑張るを続ける事が以下に危険か科学的根拠を求めていくと、こんな内容を調べる事ができました。
エゴの枯渇
エゴの枯渇
『自己コントロールの心理学: 意志力を高める10の方法』Roy F. Baumeister 著, ジョン・ティアニー
自己制御や意志力を長時間にわたって使い続けると、そのエネルギーが枯渇し、その後の自己制御能力が低下する現象を指します。
研究によると、意志力や自己制御は限られたリソースであり、使い続けるとそのリソースが減少していくとされています。
例えば、一日の中で何度も自己制御を行うと、徐々に意志力が弱まり、後のタスクでのパフォーマンスが低下することが示されています
人間には一定のエネルギーが設けられていて、制限があります。
それを「頑張って」使い続けると、あらゆる面で支障がありますよ。という話です。
意志力がどのように枯渇していくかを示したデータも出ています。
Muraven, M., & Baumeister, R. F. (2000). Self-regulation and depletion of limited resources: Does self-control resemble a muscle? Psychological Bulletin, 126(2), 247–259.
「ストレスたまるけど外に出さないようにしなきゃ」
「ムカつく人がいるけど我慢しなきゃ」
これも自己制御です。
頑張るという行為だけで自己制御や意志力を使うわけではありません。
頑張ることにより、限りのあるリソースを使う。
つまり、頑張るがエネルギーの前借りと言えます。
「あらゆる面での支障?心身へのダメージ?つまりどうなるの?」
これです。
燃え尽き症候群
バーンアウトとも言われています。
文章を紹介します。
長期間にわたって過度に「頑張る」と、エネルギーの枯渇が進み、燃え尽き症候群(バーンアウト)になるリスクも増大します。
バーンアウトの心理学 久保真人
燃え尽き症候群は、過度のストレスや負荷が持続することで起こる精神的・身体的な疲労状態で、意欲の喪失や無力感、疲労感を引き起こします。
「頑張る」を続けすぎると、心身共に疲労状態に陥り、何も意欲がわかなかったり、疲れ切ったり、虚しさを覚えてしまうという事ですね。
この文言達があることで、頑張るという行為がエネルギーの前借りという考えを肯定してくれています。
科学的根拠からわかる身近な例
それでは、以下に身近な問題なのか知っていただくために、例を用いながらまとめてみます。
いつも通りの仕事に対し、何かしらの理由で、しばらく頑張る必要が出てしまいました。
いつも通りに加えて追加のエネルギーが、しばらく必要だということになりますね。
ところが、人間には一定量のエネルギーしかないため、頑張る事でエネルギーを多く消費してしまいます。
そんな日がしばらく続きます。
すると、一定量のエネルギーしかないところを、振り絞ってエネルギーを使うことになり、その結果、心身共に疲れ切ってしまい、虚しさ、へ繋がってしまう。
という流れになります。
この事から、明日も明後日も普通に活動できたはずなのに、頑張ったせいで活動できなくなるぐらいにまでエネルギーが枯渇してしまった。と表現することもでき、まさに
エネルギーの前借りをしてしまった
と言えるのではないでしょうか。
身近にある現象 エビデンスレベル4
ここまで読んで、なんとなくでもこう浮かぶでしょうか。
「最近頑張れないな・・」
「やらなきゃっていう環境に囲まれててしんどいな・・・」
それ、心からのサインです。
「頑張る」をやっている例
無数にありますが、あなたも頑張るという行為をたくさん続けているはずです。
- 仕事で結果を出さなければならない
- 提出期限までに成果を上げなければならない
- 人前に立って話さなければならない
- 時間に起きなければならない
- 通勤・通学しなければならない
- 苦手な人と話さなければならない
- 嫌な事をしなければならない
- 人に会わなければならない
- 嫌な事が起きた時、考えないようにしなければならない
- 自分の行動を考え直さなければならない
挙げだすと病む気がしませんか?
ねばならないのために「頑張る」というエネルギーの追加消費が生じていると思いませんか?
今挙げた例は、上の方の項目は仕事、仕事に関わる事、下に行くほど私生活の例になります。
そして誰もが「頑張ること」として共通して認識している内容です。
同じ頑張りで皆同じ量消費してるわけではない エビデンスレベル1
ここまで例をいくつか挙げましたが、個人によって「頑張る」エネルギーの消費量が異なるのも事実です。
性格の違いで「頑張る」に対してエネルギーの消費量が違うという考え方は、心理学や神経科学で広く研究されています。
Costa, P. T., & McCrae, R. R. (1992). Revised NEO Personality Inventory (NEO-PI-R). Psychological Assessment Resources.
その中でもビッグファイブを用いた研究を紹介します。
ビッグファイブ性格特性
ビッグファイブ理論は、性格を5つの特性で分類します
外向性 神経症傾 向誠実性 開放性 協調性
これらを出すことで個人の性格特性を算出し、どのような心理的傾向があるかを分析するものです。
例えば
外向的な人は、社交的な場面でエネルギーを得ることが多いですが、内向的な人にとって同じ場面はエネルギーを消耗することがあります。
神経症傾向が高い人は、ストレスへの感受性が強く、同じタスクでも他人より疲労を感じやすい傾向があります。
そして、ビッグファイブの結果で、どの特性が高い・低いからといって優劣の差はまったくありません。
各特性はその人の性格の個性や傾向を示しているだけで、どの特性も状況や目的によって強みになったり、課題になったりします。
よって
「やっぱり君、内向性高いね。
それだと社会でやってくのきついかもね?
もっと外に出たり人と喋ったり、人と会える場所に行って磨いた方がいいよ」
という人がいればこれ、とんだお門違いです。
ビッグファイブの説明にこのようなものもあります。
ビッグファイブは、性格を科学的に捉えるための枠組みであり、どの特性も「良い・悪い」ではなく、その人の行動傾向を表すものです。
例
- 外向性が高い人は社交的でエネルギッシュですが、一人で過ごす時間が生じる場面では疲れやすいかもしれません。
- 内向性が高い人は静かな環境で集中力を発揮しますが、過度に社交的な場面では消耗しやすい場合もあります。
状況次第で特性が強みになる
- 高い誠実性は、場合によっては融通が利きづらいと感じる場面がありますが、仕事の計画性や責任感を示し、信用されやすいことを意味します。
- 高い神経症傾向は、不安を感じやすい面がある一方、危機管理能力や繊細さが強みになることもあります。
多様性が社会の中で重要
人が異なる特性を持っていることで、チームや社会全体がバランスを取りながら機能します。
たとえば、開放性が高い人が新しいアイデアを生み出し、誠実性が高い人がそのアイデアを現実に落とし込む、といった協力関係が生まれる事もあります。
つまりビッグファイブは、出た結果に対し性格を磨く指標にする事を目的としたものではありません。
ビッグファイブを基に性格を変えるのは、個人が勝手に作り出した全くエビデンスのない行為であり、性格を変えようとする事は高負荷をかける事になります。
そして心理学者ブライアン・リトルはこのように提唱しています。
「人格特性に基づく行動は、環境や状況に応じて調整することができるが、それを無理に変えることは不要で、むしろストレスを増大させる」
さて、長くなりましたが結論。
あなたの性格により、他の人にとっては平気な事でも、あなたにとってはエネルギーが必要な事だって普通にある。という事なんです。
この繰り返しを毎日しなければならない世の中だからこそ、心が疲れている人が続出し、「自分だけが耐えれない・・」という事態にもなったりするんです。
ここに追い打ちして、それが誰にも理解されないと余計に疲れますし、ふさぎ込みますし、自己否定や心の傷に繋がってしまいます。
まとめ
頑張りすぎや我慢の危険についてお伝えしました。
人は1日のリソースが限られており、1日のあらゆる行動に対して使う物です。
頑張るという行為は頻繁に起こすものでも継続して起こすものでもありません。
それは、1日を波がなく過ごすため、安定してパフォーマンスを出すため、健康を維持するために重要だからです。
「頑張ると苦しいのはわかるけど、生きるために我慢しないと・・」
と心に刻んで頑張っているのに、低賃金は見直されず、物価や税金は上がり、リフレッシュに使うお金もなくなってきている。これが今起きている事です。
「かといって国の制度に頼りたくない。」
人生つまらなくなって当然です。幸福度が下がって当然です。
何のために頑張っているのかを問いたくなります。
今を、頑張る価値のある環境だと感じているでしょうか?
ですが、そもそも頑張らなくていいということです。
もう頑張れないぐらいに、エネルギーの前借りをしていないでしょうか。
そもそも「頑張らなくちゃ・・」という受け身の環境で消耗さえさせられていなければ
普通に起きれます。
人と喋れます。
楽しいかはさておき、人とも会えます。
自分の行動を見直す必要はなく、ありのままでいいです。
頑張る事を強要されているように感じる世の中にいるから、感覚がバグっているだけです。
怠惰や甘えなどでは断じてありません。
間違っても、エネルギー切れの自分を否定することはしないでください。
自分で自分の事を言葉で殴るなど、自分にパワハラをしないでください。
それでは今回は以上となります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。