後編はこちら
あなたはこんな事を思ったことがありませんか?
- SNSで楽しそうな投稿を見ると不快になる。(具体的にはムカッとしたり、鬱陶しいと感じたり、劣等感を覚えたり、萎えたりなど。)
- Youtubeなどの動画コンテンツで発信をしている人に嫌悪感を抱く。(内容が気に入らないのではなく、再生数やチャンネル登録数、コメント数、楽しそうに活動しつつ成果を得ている姿が気に食わないなど)
- ゲームをして遊んだり食事をとったりと、何かコンテンツに触れた時、その発案者や製作者、演者に対し疎ましく思ったり羨ましく思う。
- 次々とコンテンツを発信できる人に対し嫉妬のような気持ちが芽生え、視界に入らないようシャットアウトしたくなる。
何も隠しません。
実はこれら全て、過去の私の思考です。
パッと読んだ感じ
「器が小さく心も狭い人間だなぁ」
と感じませんでしたか?
「だったら見るなよ、食べるなよ」
と言ってしまいたくなりませんか?
「そうか、心も器も小さいのか、自分に余裕を持たなくちゃ・・・」
「余裕を持たせるには・・そうだ、SNSは全部消すか」
「気に入らない投稿はブロックしよう、ミュートしよう」
実はこれら、全く解決になっていません。
対症療法にすぎず、根本的解決に一切繋がっていません。
いわゆる、その場しのぎなんです。
なので、そんな正論もどきは無視しましょう。
「なんか・・・心狭いね、器小さいね・・・もっと余裕持てば?」
これはあなたのためを思っているようにみえて、無責任な発言です。
正論という凶器をあなたに振りかざしているだけにすぎません。
そもそも「こんな事思う自分・・・ちょっとよくないよな・・・」と、薄々気づいてるはずです。
相手は自分ごとではなく、あくまでも他人事として言ってるだけです。とはいえ本当に他人の事なんですけどね・・。
そもそも他人の言う「心狭いね、余裕ないね」なんて、あなたの基準ではなく他人の基準で言ってるだけなので、こんなアドバイスを受け取ったところでまず解決できないです。
「じゃあ明日から余裕ある人間になろう、もっと視野広く考えて器を大きくしよう」
無理です、抽象的すぎてできません。ふわふわしすぎなんです。
そもそも、他人から言われている指摘そのものがふわふわした発言なので、正しい答えが見つかるわけもありません。
なので、人からそう言われたからといって
「あれ・・?自分ってクズなんじゃ・・・」
と思っていたらストップをかけてください。そんなことはありません。NOです。
正しいアプローチは、その場しのぎにしかなっていない無責任な正論を受け入れる事ではありません。
他人はあなたに対する発言に責任を持つ義理がありません。
だから無責任な発言になるという当然の事実が生まれるので、あなたに合わないならそもそも耳を傾けなくていいです。
愛や人情があっても、あなたへ理解がないなら、そこから出る発言はあなたを苦しめるだけです。
正しいのは、あなたの心の状態を幾つかの観点で見て分析し、無数にある科学的に正しいアプローチの中からいくつか、あなたに合いそうだなと感じる事を選んで実施するんです。
あなたが悪いわけではない証明をしますので「自分って自分勝手なんだ・・」と卑下していたのなら新しい発見になると思いますよ。
嫌悪感は抱いて普通 エビデンスレベル2
何かしら誰かの発信に触れた時、嫌悪感を抱く事は、実は普通なんです。
決して醜い感情ではありません。
ところがそれを感情でとどめず、誰かを不快にさせる形で行動にしてしまったのなら醜くなる、それだけです。
要するに攻撃の事ですね。
「え?嫌悪感を抱く事が普通なの?悪い事じゃないの?」
「世間には嫌悪感を一切抱かず、賞賛や尊敬の感情しか湧かない人だっているのに?」
解説します。
そもそも人間が嫌悪感を抱く事は普通です。
嫌悪感を抱かない人はまずいないと思っていいでしょう。
ほんとにいないかはまだ調べたりしてません、持論です。
では今回のテーマである、努力や成果のある人に嫌悪感を抱くのはなぜ普通なのか?
それは、社会の影響で自分の自己評価が低くなってしまっているからです。
深堀りしていきましょう。
心の状態
まず、心に傷を抱えている人は自己評価が低くなっていることが多いです。
自分が「頑張れない」「やる気が出ない」と感じている状態で、他人が成功している姿を目にすると、自分との違いを強く意識してしまい、劣等感や無力感を覚えてしまうという自然な流れに繋がってしまうんです。
その結果、他人の成功や努力が逆に「自分は何もできていない」という感覚を強め、嫌悪感を引き起こすことがあります。
ですが実はこの嫌悪感、防衛本能なんです。
防衛本能って、攻撃から身を守る時に起こるだけでなく、心を守るためにも働きます。
なので、精神的に弱っている状態のところへ、追い打ちのように無力感や劣等感がかからないように働いてもくれるんです。
「この人が発信しているせいで不快になるんだ」と解釈して外部のせいにし嫌悪感を抱く事で、自分の内面の苦しみを軽減しようとします。これは無意識に起こると言われています。
心理学的研究によると、自己評価が低い人は、他人の成功を見ると自分との違いを強く意識しやすいことが分かっています。
(Festinger, 1954:社会的比較理論)
その結果、劣等感や無力感を感じやすくなり、心を守るために無意識に防衛本能が働きます。
特に、他人の成功を不快に感じるのは、自分の苦しみを軽減するために「相手が悪い」と外に原因を求める心理が働くためです
(Freud:防衛機制)
(Baumeister et al., 2003;Vogel et al., 2014)
このように心を防衛するんです。それが心の状態です。
防衛からくる嫌悪感は様々な面でも抱かれます。
紹介しましょう。
身近な具体例
例えば、SNSやYouTubeで成功者を目にしたとき「なんか不公平だなぁ」と思ったことはありませんか?私はめちゃめちゃあります。
特に、自分が努力しても報われないと感じている場合や、そもそもの環境が苦しい人にとっては、他人の成功や努力が「自分だけが報われない」という不公平感を増幅させることがあるんです。
この不公平感も、他人の成功に対する嫌悪感として表れる事もあるんです。私もありました。
公正世界信念と防衛機制
(Lerner, 1980)
心理学の研究では、努力が報われないと感じている人や、困難な環境にいる人ほど、他人の成功に対して強い不公平感を抱きやすいことが分かっています。
この不公平感は、他人の成功を「自分だけが報われない」という感覚と結びつけやすくなり、その苦しさから自分を守るために、無意識に他人への嫌悪感として表れることがあります。
(Baumeister et al., 2003)

それなりには辛い経験を何度も繰り返しては生きてきたので、うまくいっている人や頑張れている人を見るたびに、不平不満を頻繁に抱きまくっていました。
「どうせあの人の成功は家が平和だったから、そもそも頑張れる環境があったんでしょ?」
「うちの家庭はこんな風で、自分はこのように立ち回るしかないんだ。どこにそんな事を頑張れる余裕があると思ってるんだ?」
経験ないでしょうか。
話を戻します。
心の傷からくる自己批判
また、心の傷に苦しんでると自己批判的な思考パターンに陥りやすいです。
他人の成功を見ると「自分はダメだ」「自分はあの人のようにはなれない」という自己批判が通常と比べて強まってしまいます。
「すごいなぁ・・」が「それに比べて自分なんて」に変換されやすくなるという事です。
この自己批判はやがて自己嫌悪感を生み、それが他人に対する反感や嫌悪感に転じることがあります。
認知理論と防衛機制
(Beck, 1967:認知理論)
心理学の研究によると、心に傷を抱えている人は自己批判的な思考パターンに陥りやすく、他人の成功を見ると『自分はダメだ』『あの人のようにはなれない』といった否定的な自己認識が強まる傾向があります。
この自己批判は次第に自己嫌悪感を生み、それを軽減しようとする防衛反応として、他人に対する反感や嫌悪感へと転じることがあります。
(Baumeister et al., 2003:防衛機制)
つまり
「とっくにライフポイントは0ですよ、どうせ雑魚ですよ、なのにどうして実績ビンタしてくるの?ひどい奴め!」
と自分に向けられているわけでもないのに感じ取って辛くなってしまうんです。少しポップな表現になってしまいましたね。
脱線
マウントとは
自分が優位だと見せつけることです。
相手を見下したり、自分はあなたより優秀ですよ。というアピールをしてくる事を指します。
例として「私はこんなにすごい」「あなたはまだまだだね」と、直接・間接的に上下関係を作ろうとする発言や態度を示してきます。
そこそこの悪質性はありますが、相手を見下したかったり、自分が優れている部分をアピールしたい欲求からくるものなので、相手が傷つくことが目的ではない場合があります。
心理操作とは
さて、問題はこっちです。
これは、相手を意図的にコントロールし、精神的に支配することを指します。
相手を傷つける事が目的の場合もあり、自己肯定感が低い人をわざと狙う事もあり、めちゃくちゃ悪質です。
こんな例があります。
- 「そんなつもりなかったけど?」と被害者のせいにする。(ガスライティングといいます)
- わざと相手を傷つけ、落ち込んだ隙にコントロールする。(三文芝居ですね。)
- 相手を不安定にさせ、冷静な判断力を奪う。(確信犯です。)
どちらもたちが悪いのは変わりません。
心理操作をしてくる相手とは縁を切った方がいいレベルですが、マウントにおいても例え傷つけるつもりが無かろうと、受け続けると自己肯定感が下がりかねません。
どれだけ相手が優しかろうと信用していようと心理操作は極めて悪質です。
それができてしまう人とは時間がかかってでも縁を切った方がいいです。
何かあるたびにあなたの精神を意図的に崩し、支配しようとしたり、攻撃の手段として使ってくるような人は、あなたのメンタルを守るという面で見て危険です。
その理由として、アメリカ心理学会(APA)の発表では、心理操作を受け続けた人の一部は、精神的ダメージを蓄積してしまうことが分かっています。
これ、鬱に繋がりますし、PTSDを引き起こすことがあるとも言われているんです。
そんなことを意図的にやる人、本当に縁を保つべき大切な人ですか?
知らなかったでは済まされません。
繰り返します。
いくら優しくて大切な人だとしても。です。
ほんとに優しかったらそんな事しません。
もしも大切な人が心理操作の傾向があるとして、何とかしたいのならじっくり話し合った方がいいですよ。
まとめ
いかがでしたか?少しはあなた自身を肯定できましたか?
あなたが他者の成功や発信を見ると、どことなく目障りに感じてしまうのは、自己否定の強さからくる防衛本能だという事を解説しました。
そして、嫌悪感と嫉妬はちょっと違います。
先にお伝えしておきますが、今回の嫌悪感も、嫉妬も、決して醜いものではありません。
あなたが自分の人生をちゃんと生きている証拠です。
だからこそ、嫌な事は嫌、悔しい物は悔しい、見たくないものは見たくない、と心が教えてくれているんです。
他人に迷惑をかけない限りは心に従ってください。
もちろん、かけていい迷惑もあります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
『社会心理学入門』立命館大学 社会心理学研究室
『自己愛の心理学』井村光明