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前回の『上』では、完璧主義が以下にあなたを苦しめてしまっているのかを解説しました。
具体的には、社会への進出を遅らせたり、社会へのハードルを過度に高く評価したりなど。
完璧主義をまだ上手に扱える段階にいないからこそ、実際の社会で調和することができず、何度もズレを感じてしまっていてメンタルがぼろぼろになったり、自己否定を繰り返したり、鬱っぽくなったり、対人不安に繋がったりしてしまいます。
それでは、続きをお届けしていきます。
世の中完璧で溢れてるわけではない エビデンスレベル3
その完璧主義が苦しめてしまっている・・・と何度かお伝えしました。
ですがそもそも、完璧主義を問題視する必要は実はありません。
「前回あれだけ完璧主義のデメリット書いてた・・今度はなんだよ・・・・」
非適応型完璧主義になってしまえばもちろん前回のとおりです。
ですが、適応型完璧主義になれば話は全然変わってきます。
完璧主義も扱い方を習得してしまえば、よりよいパフォーマンスや成果を出すための武器にできます。
それが適応型完璧主義です。なので途中から完璧主義が赤色から緑色になってます
しかし、扱い方を知らないから自身のパフォーマンスを下げる呪いとなってしまっている人も多いのではないでしょうか。
適応型完璧主義と非適応型完璧主義の違いは心理学研究で明らかになっています。
(Flett & Hewitt, 2002)
非適応型は心理的苦痛を伴いますが、適応型は高い成果と結びつきます。
ここで必要なのは
完璧を求めているのは自分だけかもしれない エビデンスレベル3
と、まずは見直してみる事が完璧主義をうまく扱うための一歩です。
実際に周りが求めている事や取っている行動って、実は完璧な事ではないです。
生きたり何か成果を出すうえで必要最低限、または基準より少しだけ上の事だったりしますよ。

完璧主義の人が、実際世間から求められている事を知った時「え!?そんなことでいいの!?」と感じるケースって結構あるんです。
その経験をいっぱいすると気が楽になりますよ。
ところで、前回の私の経験談を読まれた方、どう感じました?
「社会を軽視してるのかこいつは?」
と思う人さえ現れるかもしれません。
ですがそれぐらい周りは自分の事に必死で、そこまであなたの事を見る余裕がないんです。
だからこそ、完璧を実現するのを後回しにして、まずは周りと同じように、ほどほどを遂行して次のタスクもほどほどに遂行する、を繰り返すんです。
ほどほどでいいんです。完璧である必要はありません。実力はその積み重ねでつきます。
社会が最低限回る波にのった後に、あなたが思う完璧を実現させればいいんです。
人は自己中心性バイアスにより、自分の欠点が他人に強く認識されていると錯覚しがちです。
(Gilovich et al., 2000)
実際には、他者は自分のことに集中しており、他人の小さな失敗には無関心な傾向があります。
「じゃあなんで欠点を的確についてきたりするの?」
目立つ行為をしていると目を付けられ、観察されるようになるからです。
それが叱責に繋がり、欠点や失敗は全て見られていると感じるのでしょう。
「目立つ行為って?」
- ルールを自分勝手に破る
- 人に迷惑をかけ、不快な気持ちにさせる事に配慮がない
- 利己ばかりにとらわれ輪を乱し、組織のモチベーションを悪くしている
- 他者の負担を増やしている事に無自覚
といったところでしょう。
その行動で誰かが不満に思うのなら、目線が向けられて欠点を拾われるのも当然ですよね。
「えっ!?そんなことしないけど!?」
そうなんです、そんなことしないんです。
だからこそ、完璧主義により社会を難しく認識してしまっている人は現実をたくさん知ってほしいんです。
「ではなぜ叱責される人々がいるの?」
簡単な事だからこそ、気のゆるみが出て
「これぐらいはいいや」
「まぁ、自分で何とかするしいいか」
「ばれないっしょ」
「誰も言わないしいいや」
と、文化を軽んじる事で
- ちょっとルールを無視する。
- ちょっと迷惑になる事をわかっててかける。
という些細な裏切りが生じます
そういう小さな裏切りを、見ている人は見ていたり、その積み重ねが大きなことへ発展します。
叱責の原因は、そういった事が大部分を占めています。

つまり、自分のためでしかなく、自分が楽するだけにしかなってないズルをやると観察される原因になり、それが叱責に繋がるってことです。
- 成果を出しすぎたことで妬まれる(ルールちゃんと守ってるか?とそれっぽい切り口を出してきます)
- 暗黙のルールを破ったために怒られる(サビ残せず帰ったとかですね)
- 上司のストレスが溜まっていて、誰かを攻撃したいタイミングだった(ゴミです)
しかし今は、コンプライアンス違反だ!と厳しい世の中になっています。そんな環境は早く相談をして変えてしまいましょう。
完璧を実現させるのはエゴなので後回しに エビデンスレベル3
『完璧にこなしたい!という欲求を叶えたければ「やる事をやってから」だ』
という事を自覚する練習をすれば完璧主義は使いこなせるようになります。
その結果、夢中になって成果をあげられる物凄い武器になるんです。
そのためにまずは、あなたの認識から少しずつ変えていく事が重要です。
「そんな考えで社会に出ていいの?お荷物じゃない?」
「そんな理由じゃ採用されないでしょ」
「すぐ辞めそうなんだけど・・・」
前回お伝えした通り、言い方は悪いですが
「なぜ貴方雇用され続けてるの?」と聞きたいぐらい、対人の仕方や勤務の態度に問題がある人、嘘をつく人、本当によくいます。
「嫌な人間はどこの会社に行っても1人はいるよ」聞いたことがありませんか?
これ、事実なんです。
だからこそ、あなたのような優しく真面目な人はむしろOKです。
いつだって社会に行けます。
あなたなら
会社が回るように、ほどほどでの貢献は簡単にできます。
他者を不快にさせないような立ち回り、できます。
手を抜くつもりで社会に出るわけじゃありませんよね?人に嫌がらせをしに社会に出るわけじゃありませんよね?それなら、絶対にできます。
最初はうまくいかないかもしれません。でもそれは当然です。
しかしそこを
「最初からうまくやろう」
「最初が肝心だ、変なやつ来たとか思われたくない」
その思考こそが完璧主義なんです。
選択のパラドックス
(Schwartz, 2004)
行動経済学の観点では、完璧を求めることは選択のパラドックスを生み、逆に行動の停滞につながることが示されています。
まずは80%の完成度で行動し、改善を重ねる方が結果的に成功に結びつきやすいのです。

私個人としては、80%も出さなくていいと思います。
「誇りが持てるからしっかりやりたい!」と思う事に対しては80%を目指してもいいですが「とりあえず輪を乱さないように」「まだ初心者だし・・」という感じなら50%ぐらいでもいいんです。
前向きにやれば成長しますからね。
前向きを維持するためにも過度に頑張るのは逆効果です。
相手からの嫌悪感を未然に防ぐ方法 エビデンスレベル4
ここで一つ、心理学面でのデータを共有します。
第一印象に加え、自分から「私はこういうやつです」という自己開示が日頃からあるのとないのとでは、ネガティブな出来事が起きた時、相手が自分に対して嫌悪感を抱く割合が全然違ってくるという事がわかっています。
これに関して、相手が抱く自分への期待と、実際の自分とのギャップが大きいほど、相手は自分に強い反感を買いやすい事がわかっています。
つまりこれを元に例を挙げてみると
「これぐらい頑張りたい気持ちはあります」
「しかし、自分はこういうタイプなのでなかなか成果が挙げられないと思います」
「ですからこそ、ついていく努力をこのようなペースでし、いついつには成果が見え始めると思います」
とか
「頑張る気持ちはありますが、3連勤目ぐらいで急に体力がなくなってきてパフォーマンスが下がってしまうことを悩んでいます」
と、あらかじめ他人に自己開示をしておくんです。
こうするとガッカリ感による攻撃、つまり反感を買わずに済みやすいんです。
もしこれを上手に伝えられるようにしておけば、慌てずに社会で成長できます。
人に恵まれた職場なら、あなたの言葉を信じ、待ってくれる人さえいるでしょう。
そんな環境なら、あなたらしく社会に出て、完璧主義をここぞという場面で発揮して成果をあげ、人から喜ばれたいですよね。
まずそのためには完璧主義の使い方を知る事と、周りは完璧で溢れていない事を認識し、何からやればいいのだろう?
という事を意識するだけでいいんです。
わからなければ聞けばいいんです、あなたがこうして記事を読んでくださっているように、学べばいいだけです。
まとめ
- 決して臆病でも自堕落でもなく、持ち前の完璧主義が悪い方向に働いているだけだということ。
- その完璧主義をまだ上手く使えないだけであって、持ち続けてて大丈夫だということ。
- あなたの思うほど社会のハードルは高くなく、あなたが一生懸命社会や対人を考えているからこそ難しく考えてしまうだけだということ。真面目である素晴らしい証拠です。
- それだけ一生懸命考えてきたあなたなら、受け入れてくれる社会が必ず存在し、そこで時間を積めば完璧主義の使い方がわかるようになり、成果をあげられるということ。
- それらを得るためには、まだまだ焦る必要はなく、まずは意識をするだけでいいということ。
これだけです。
あなたの人生はあなたのもの。
誰かや何かに焦らされてあなたの人生の歩み方を乱されることがないよう、これからも自分を大事にしていいんです。
完璧主義をうまく扱えることで、本当に喜ばせたい人を喜ばせられる存在になれるのなら、この一歩を踏むのはどうでしょうか。
さて、次回でこの長編を締めくくります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
『幸せになる勇気』 岸見一郎, 古賀史健
『自己肯定感を上げる技術』本田健
『完璧主義の心を救う本』堀内明男
『完璧主義の心理学』Gordon L. Flett & Paul L. Hewitt