※体の不調の話が含まれるので、食事中の方は終えてから読まれることをお勧めします
「どことなく気持ちが上がらない」
「なんか頭の中がいつもモヤモヤしてて体もだるい」
「気が晴れない」
このようなメンタルの問題に対し「自分のメンタルがなぁ・・」と、メンタルだけに目を向けていないでしょうか。
例えば
- 鼻づまり
- お通じ(食事中の方申し訳ございません)
- かゆみ
- 腹痛
- 頭痛
など、病院に行くまでではない症状や、病院へ行っても薬を渡されて終わるだけの症状を放置していないでしょうか。
実はこの軽微な不調がジワジワとメンタルに大きな負担を与えている事があります。
むせる事がメンタルへ影響する度合い エビデンスレベル1
たとえば、寒い季節で起こりがちの、乾燥した空気による「むせ」を例にしてみましょう。
この「むせ」でさえメンタルに多少なりとも影響しています。
むせること自体が一時的なストレス反応(交感神経の活性化)を引き起こし、不快感や軽度の緊張を生じさせることがわかっています。
無視できないのは、これが頻繁に起こる場合はストレス値が蓄積し、気づかないうちにメンタルに影響を与えることがある。という点です。
「えっ、むせるだけでどれぐらいのストレスになってるの?」
ストレスの影響度を具体的な数値で表すのは難しいですが、仮に1日の総ストレスを100% とした場合、以下のように考えられます。
ただし、むせが個人によってどれ程ストレスになるのかは個人差があります。
- 軽度のむせ(1回)→ストレス影響 0.5~1%
- 頻繁なむせ(10回以上)→5~10%のストレス増加
- 他の不快症状と合わさる(鼻づまり、便秘など)→ 相乗効果で15~30%のストレス増加
つまり、単発のむせはそこまで大きな影響はありませんが、1日に何度も起きるとストレスの総量が増えていくことになります。
「咳・むせ」がストレスを引き起こす研究
Mahler, D. A., & Harver, A. (1997).
咳・むせが頻繁に起こると「呼吸困難感」が生じ、これは心理的な不安やストレスの増加に直結する。
Respiratory sensations and dyspnea.1回の咳やむせでもストレス反応が生じる
Davenport, P. W. (2002).
研究によると、不意な咳やむせは交感神経の過活動を引き起こし、心理的ストレスを増やす(特に繰り返されると悪影響)。
Urge-to-cough: What can it teach us about cough?.ホルムズとラーエのストレス尺度
Holmes, T. H., & Rahe, R. H. (1967).
さまざまなストレス要因(病気、生活習慣の変化など)に点数をつけ、累積することでメンタルへの影響を予測。
軽微な身体的不調でもストレススコアが蓄積されることが示されている。
The Social Readjustment Rating Scale.日常の軽微なストレス(Microstressors)の蓄積
Almeida, D. M. (2005). Resilience and vulnerability to daily stressors.
例えば、ちょっとした痛みや不快感、むせ等、1つ1つは小さくても、いわゆるチリツモ効果でメンタルに大きな負担をかけることがわかっています。
研究では、小さなストレスでも1日のストレスレベルを5~30%増加させる可能性が示唆されています。交感神経とストレスホルモン(コルチゾール)
Sapolsky, R. M. (2004). Why Zebras Don’t Get Ulcers.
鼻づまり・むせなどの軽微な不快症状でも、交感神経を刺激しコルチゾールの分泌を促進します。
コルチゾールの過剰分泌は気分の低下・イライラ・集中力低下を引き起こす事までわかっています。
たかがむせ、されどむせ。です。
無意識にストレスが蓄積され、また別の不調を起こす事があり、それがまたストレスになっていて・・と負の連鎖が出来ているかもしれません。
だから健康管理が重要なんです。
運動とかバランスのいい食事とか、ちょっと難しく億劫な事も大事ですが、そればかりではありません。
5分の換気や今すぐ1杯の水を飲んだり、簡単だけどやった方がいい事もしっかり含まれます。
その不調、メンタルから来ているかも エビデンスレベル2
先に根拠を出してしまいましたが、今あなたが抱えている不調こそ、メンタルから来ているのかもしれません。
メンタルが悪化すると自律神経が乱れるといった言葉を聞いたことありませんか?
この自律神経って、内臓などに関わる神経の事です。
あなたの意思とは関係なく動く神経。
心臓、血管、腸、胃、あなたが意図して動かしたり止めたりできますか?
できないはずです。
それらの臓器などを、命を続けるために神経が自律して動かしてくれています。
自律神経とはその事を言います。
この説明はほぼ、後述します内科医の橋本先生の言葉になります。

ストレスによって負荷がかかると、自律神経が乱れます。
だから心臓が急にバクバクしたり、胃がキリキリしたり、お腹が痛くなるんです。
ストレスのせいで管の動きがバグって、そのせいで臓器の動き方に影響する。といったところでしょうか。
自律神経は、心臓、血管、胃、腸などの内臓の機能を無意識に調整する神経系であり、ストレスや心理的な負担がかかると、そのバランスが崩れることがあります。
『心と体のあらゆる不具合を最先端医学でみるみる解決 ドクターハッシー流 すぐ元気MAXになれる61の科学的法則』
その結果、心拍数の増加、胃痛、腹痛などの症状が現れることがあります
橋本将吉
Youtubeでも活躍されています。
そのメンタル、不調から来ているかも エビデンスレベル2
さて、これまでの話で

軽微な不調 → 慢性的ストレス → 自律神経の乱れ
↩
とループするのはご理解いただけたでしょうか。
ではその自律神経が乱れず、バランスを取るには本来どうあるべきなのか?を見ていきましょう。

交感神経(活動モード)と副交感神経(休息モード)でバランスを取っています。
これが、神経が安定している状態です。
ところがこの状況に対しストレスの蓄積によって交感神経が優位になるとしましょう。

バランスとは。状態ですね。
こうなると神経が休息しづらすぎる事になりますから、不調が続きます。
画像のように、副交感神経が入る隙もないぐらいだと危険レベルです。
そしてこの「軽微な不調」もストレスと同様に体への負担です。
これを無視すると持続的な交感神経の亢進(こうしん)が起こり、疲れやすさや無気力を引き起こす事がわかっています。

持続的な交感神経の亢進とは
交感神経が優位である状態が、高い度合にまで進んでしまっており、それが持続されている事を意味します。
「小さなストレスの蓄積が身体の適応能力を超えると慢性疲労やうつ症状につながる」
Hans Selye
「軽微な不調を放置すると、自律神経の乱れが起こり、結果的に心身のコンディションを崩す」
橋本将吉(ドクターハッシー)
どんなメカニズムでメンタルに来るのか
結論からお伝えすると、エネルギーが使われ続ける事や、脳の疲れの蓄積によって心身が疲弊するといった流れです。
- 身体の小さな異常を修正するために脳はエネルギーを使います。
軽微な不調が続くということは、小さな異常(ちょっとした炎症)が続くことになり、エネルギーを使い続ける事になるため、その結果として認知機能が低下し、ぼんやりしたり、やる気が出なくなるんです。 - ホメオスタシス(恒常性維持機能)が過剰に働くことで脳の疲労が進み、パフォーマンス低下につながる。「普段通りの状態に戻れ!体のバランスを一定に保つんだ!」という機能の事です。
「小さなストレスの積み重ねは、最終的に脳の認知機能や意欲を低下させる」
Robert Sapolsky
「些細な身体の不調でも、脳が疲労を感じることでメンタルの不調につながる」
倉恒弘彦
炎症性サイトカインと疲労感
NIMH(アメリカ国立精神衛生研究所)
軽微な不調(睡眠不足、鼻づまり、便秘など)を無視すると 慢性的な炎症が発生 し、疲労感やだるさを引き起こす。
その結果、炎症性サイトカインが増加すると、脳のやる気を司るドーパミン系に影響を与え「何もしたくない」「やる気が出ない」状態になる。
名古屋市立大学(2018)
「ちょっとした体調不良だから放っておく」という考えは、メンタルに影響を及ぼしている可能性があります。
病院に行けば100%解決するわけではありませんが、治すための行動は重用だという根拠になります。
そして、ちょっとの体調不良がパフォーマンス低下と聞いて「仕事を休むのって実は正しい?」と解釈した方は鋭い観点をお持ちだと言えるでしょう。
つまり、不調の放置っていい事ないんです。
不調になるような環境って当たり前ですが良くないんです。
なんでか?まで説明できるようになったでしょうか。
解釈の仕方は個人が決める事 エビデンスレベル5
「たかが「むせ」ごときあるあるでしょ。科学的根拠まで出してきて繊細すぎないか?」
「そんなに神経質に考えたら何もできなくない?かえってストレスだわ」
仰る気持ちはわかりますが、あくまでも科学的にわかっている不調の要因の指標の一つです。
そして、咳ひとつによるストレスの感じ方も人それぞれです。
「咳うっとうしい!まじむかつく!うぜぇ!」
と感じる人だっています。
普段は咳をしても気にならないのに
「今回やたら咳がうっとうしいなぁ・・イラつくわ~」
というケースもあります。
これに関しても、ストレスのかかり方としてデータが出ており、これが放置されるとメンタルが悪化し、無気力になる事もあるという話でしたね。
思い当たる節があり「ひょっとして・・改善してみようかな?」と感じるのでしたら、例えば、今回の例でいえば加湿、病院で薬をもらう、寝る時間を固定する、など環境を整えるだけで改善される事だってあります。
逆に、気にする方がストレスなら今回の記事は無視するもよし。
あくまで、あなたのメンタルや考え方と相談して決めて良いので自由です。
ただ、原因不明でメンタルが落ち込んでいたり、無気力続きでしんどいとすれば、今回のような科学的観点もありますので、ぜひ「不調を感じづらい環境にしてみる」というのを参考にするのも手段の一つですよ。
まとめ
今回は、小さな不調がメンタルにもたらす影響を解説しました。
身近すぎる「むせ」でさえもストレスにわずかでも影響しており、それが連続するとチリツモとして別の症状に発展することがある。という話でした。
そしてその負の連鎖を放置し続けた結果
「いつもだるい」
「いつも萎えてる」
このような状態に陥る可能性が十分あり、これを
「自分って怠けてるな」
「はぁ・・人生つまんな」
と解釈してしまうと、どんどん間違った理解が深まる事になります。
今、鼻詰まりを放置していませんか?その鼻炎、病院で薬をもらって鼻が楽になれば頭重感が和らぐかもしれません
今、咳にわずらわしさを感じていませんか?加湿の方法を試して咳をしなくなれば楽だと思いませんか?
今そのだるみが消えたら、何かやりたいことはありますか?
そして最後になりますが、不調一つとっても感じ方は人それぞれです。
なのにそれを
「たかが咳であいつはおおげさ、ほんとうるせぇ」
っていうのは共感力がない意見であり、苦しみの感じ方は人それぞれであるという知見を感じません。
一般人の批判的な声は何の根拠もないケースが多いです。
それらの言葉に傷つくより先に知識を手に入れて、無視できるようになり、自分に正しいアプローチが見つかれば幸いです。
それでは今回はここまでになります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
『ストレスの脳科学』ロバート・サポルスキー
『心と体のあらゆる不具合を最先端医学でみるみる解決 ドクターハッシー流 すぐ元気MAXになれる61の科学的法則』橋本将吉