「なんでもいいよ」
「まぁ、いいんじゃない?」
よく聞きますよね。
ほんとにそう思っている場合が多いのですが、言葉の裏ではこの心理が隠れているなら要注意です。
「別に自分が話しても大したこと言えないし」
こうなっていては、あなたは今、意思力を削られている環境にいる事を示している可能性があります。
家族での自分・知人周りでの自分・職場での自分・いずれかでも経験ないでしょうか。
特に、正論マンが近くにいる場では、このような心理状況に置かれてしまう方もいらっしゃるでしょう。
環境により、考える事を無意味にさせられてしまい、思考力も損なわれています。
本来、考える事ができれば価値ある発言は誰でもできるものです。
「人のせいにするなよ」
と言いたくなる声も理解できますが、正論で押しつぶす行為は暴力です。
正しかろうと言えばいいわけではありません。
否定され続ける危険性 エビデンスレベル2
「否定が続くと喋る気を失くすってこと?」
学習性無力感の観点から「その人と喋っても意味がないから発言しない、考えない」といった状態になり、それがやがて誰にでも話すときでさえ、考えて主張する習慣がどんどん削れていき、結果的に自分の意志がなくなっていきます。
学習性無力感
マーティン・セリグマン
繰り返しコントロール不能な状況に置かれると、人は努力することをやめるという事が結論付けされています。
研究データ
犬を使った実験があり、逃げようとする犬に対し電気ショックを与えるものです。
結果、電気ショックを受け続けた犬は、逃げられないうえに痛みを伴う事を学習し、逃げられる状況になっても動かなくなりました。
結論
これは人間にも適用され、職場や家庭などで継続的に否定されると「どうせ何を言っても無駄だ」と考えるようになる現象と同義だとしています。
例えば、否定され続ける環境で自分に自信を失くし、その愚痴を誰かに話しても理解されないケースがあったとしましょう。
「話しても意味がない」と感じるパターンが増えるとどこにおいても、発言する気力を持たなくなっていきます。
「否定され続けて萎えてるというか、自分が何言っても意味がない気もしてるんだよね」
学習性無力感だけでなく、自己効力感も低下しているんです。
自己効力感とは
自分が自分の能力に対する信頼度のようなものです。
自己効力感の低下
アルバート・バンデューラ
自分には発言しても意味がない、影響を与えられないと感じることで、発言しなくなる事が挙げられます。
研究データ
バンデューラの実験では、自己効力感が高い人は挑戦し続けるが、低い人は避ける傾向がある事がわかりました。
また、否定的なフィードバックを受け続けると自己効力感が低下し、発言の回数も減る事がわかっています。
学習性無力感と同じことを説明しているのではなく、否定され続ける事でどちらの影響ものしかかってくるという事です。
否定され続けて起こるあなたの変化 エビデンスレベル3
学習性無力感、自己効力感の低下を繰り返した挙句このような事に繋がります。
こんな経験のある方もいるかもしれません。
「相手の言っている事が正しいかもしれない、その通りな気がしてきた」
「結局丸め込まれてしまった。相手が正しくない気もするけど自分の意見は間違ってるだろうし、そもそも考えても言葉が浮かばない」
さて、こう考えるようになってしまう原因もあります。
ガスライティング
ロビン・スターン
相手の意見を意図的・無意識的に否定し続けることで、自信を失わせる心理的操作の事を指します。
研究では、ガスライティングを受けた人は自己不信が強まり、自分の意見を言わなくなる事がわかっています。
これは夫婦関係や職場で起こりやすく、その結果、被害者は加害者の意見を受け入れるようになってしまう事も示唆されています。
否定が常態化するとどうなるか エビデンスレベル4
難しい言葉が続きましたが、つまり身近でどのような現象が起こるのでしょうか?
意思決定の放棄
- 「相手に決めてもらうほうが楽」と考えるようになり、自己主張しなくなる。
- 夫婦間では「私は何を食べてもいい」「あなたが決めて」と言うようになりがち。
自己同一性の喪失
- 「自分が何をしたいのか分からなくなる」状態になる。
- 精神医学の分野では「自己の確立ができず、他人に依存する」ことが問題視されている。
メンタルヘルスへの影響
- うつ症状、不安障害、PTSDのリスクが高まる。(継続的な否定によるストレス)
- 実際に家庭内での否定的コミュニケーションが長期的なメンタルヘルスに悪影響を及ぼすとの研究もあります。
どのように対処すればいいか エビデンスレベル4
自己効力感が削れている
こんな一文に自覚があるとしたら、小さい成功を積み重ねるのがおすすめです。
- テレビや動画などでつけた知識を誰かに説明するでもOK
- ゲームが上手になる(考え、試行錯誤し、苦労するほど効果があります)
- 人を助けたり、教える事ができる(相手が喜ぶなど、自分の目的が叶えばOK)
些細でも、自分が考えて行動した結果上手くいったと自覚する瞬間がとても大切であり、自己効力感の向上に繋がります。
「うーん・・確かにあの人から否定はよく受けるなぁ・・」
と感じていて自覚しても、夫婦や職場となると、距離を取る事は容易ではありません。
むしろ、ハードルが高すぎるなど非現実的な場合もあるでしょう。
そんなときは正直に相談をしてみたり心理的距離を取る事も検討してください。

正直な相談をしても否定的な態度を示す場合は、本当に環境を見直す必要があるかもしれません。
- 相手の言葉を鵜呑みにしない(根拠のない主観だ。と冷静になるのも手です。)
- 相手が「支配的な人間だ」と気付き、自覚する(「こういう人だ」と一線引くと落ち着くこともできます。
- 「あまり人の話を聞かない人だ」などの気付きや違和感を大切にする(一歩引いて客観的になれます。)
「否定し続けてくる人いるけど多少は会話できるよ」
この場合なら、あなたの今後を守るために主張をやめないようにしてください。
- 相手を尊重しつつ自分の意見も伝えるようにするのも効果的です。これはアサーティブ・コミュニケーションといいます。
- 「私はこう思う」と、NOを言う事も効果的です。(相手の主張に対し、考えて意見を返す。これも立派なNOなんですよ。ただ断る事だけがNOではありません。)
まとめ
否定をされ続ける環境の危険性について説明しました。
「自分なんか何を言っても無駄だ」
「自分の発言力は弱い」
といった学習性無力感や自己効力感の低下を招くことがあるため、そのような環境とは距離を取ったり、別の環境では成功を繰り返すといった自分を守る行動が大切です。
ガスライティングが起こり、相手の意見を受け入れるようになってしまうと人生の展開が大きく変わってしまう事もあります。
しかも、間違った意見を受けいれてしまった挙句、それを他人に押し付けるようになると最悪です。
そして、これができれば苦労しませんが自分を受け入れてくれる、意思を持たせてくれる環境に移るのも生存戦略です。
あなたが無自覚にコントロールされている状況はありませんか?
あなたの意見はどこかでは必ず有力です。その環境を探すことが、あなた自身が人生を楽しむ事にも繋がります。
あなたの話を聞いてくれる場は、お互い気分が良い物だったのではないでしょうか。
今回はここまでになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
『学習性無力感』(マーティン・セリグマン)
『自己効力感―行動のエネルギーを高めるメカニズム』(アルバート・バンデューラ)
『ガスライティング―他人を支配する人々』(ロビン・スターン)