「また広告かよ!」「ちょうどいいところでCM入るなよ!」
誰でも経験があると思います。
テレビや動画アプリを見ていると、内容を楽しんでいる最中に突然広告が挟まれますよね。
たった数秒〜数十秒の出来事ですが、意外にも強いストレスを感じることがあります。
「広告なんてほんの1分以下じゃん!つべなんて5秒とかだよ?別にいいじゃん」
こんな声もありますよね。
それでもなぜ、これほどまでに広告にイライラするのでしょうか?
実は、この現象にはタスク切り替えストレスという科学的な背景があるんです。
タスク切り替えストレス エビデンスレベル2
読んで字のごとくですが集中していた作業から別の作業へと、意図せず移行させられることで生じるストレスのことを指します。
私たちの脳はマルチタスクに適していません。
ある作業から別の作業へ移るたびに、脳内で情報の整理が必要になり、そのたびに切り替えコストが発生します。
タスクを切り替えるたびに脳のリソースの 約40% が消費される
(Meyer et al., 2001, University of Michigan)
1つの作業に深く集中するまでに 約23分 かかる
(Gloria Mark, University of California, 2008)
広告が入るたびに、無意識のうちに認知資源を消費し、集中力が途切れているということになります。
有料会員が広告カットされることに対し納得がいくでしょうか。
強制的にタスクを切り替えられることについて
普段、動画やテレビを見ているとき、私も含め皆さんは受動的な視聴者です。
そこへ広告が挟まれることで強制的にタスクが切り替わるという現象が起こります。
先ほどの科学データと合わせて考えると
- 動画や番組のストーリーに集中 → 突然広告に切り替わる → 再び元のストーリーに戻る
- この切り替えのたびに 脳は無意識にエネルギーを消費し、ストレスを感じる
普段感じる広告の鬱陶しさは、単なる感情的な不快感ではなく、脳の仕組みによるものだったのです。
体はちゃんとストレスだと知ってるんですね。
そしてこれ、仕事でも言えると思いませんか?

私がぱっと思いつく限りでは、サービス業の方々です。
呼んだらすぐ来てくれることを当たり前と思わず、仕事だからちゃんとしてくれよ。と理解を示さない態度でいるでもなく、大変な仕事を頑張っていると思いたいですよね。経験こそありますが「また来たよ・・」は、良くない思考ではありますが科学的に正しい反応だという事ですね。
かといって、お客側が気を遣って利用しないのはお客が困るので、利用の際には「ありがとう」「お願いします」など、持ちつ持たれつの対応ができるとスタッフの方も報われそうですね。
長期的な影響 エビデンスレベル4
さて、広告などによって集中が途切れてしまう事がどれだけストレスなのか、負担なのかについて解説しましたが「広告うぜぇ!」と思うだけで、それを諦め続けてしまうのが大半かと思います。
しかしそうなると知らず知らずのうちに「短時間でのタスク切り替えが当たり前」という状態になってしまいます。
- 長時間1つのことに集中するのが難しくなる
- 新しいことを学ぶときに途中で気が散りやすくなる
- 深い思考や創造的な作業がしにくくなる
「え?まじ?広告ごときで?まさかそんなはずないでしょ」
ネットの発展により、人々の集中の仕方が変わりつつあることは以前から指摘されていました。
(Carr, 2010, The Shallows)
例えば、ニコラス・カーは、インターネットの普及によって人々の深い思考が妨げられ、注意力が散漫になりやすくなると述べています。
さらに近年ではSNSや短尺動画(TikTok、YouTube Shortsなど)の流行によって、 短時間でコンテンツを切り替える習慣が強化され、この傾向が加速している可能性があります。
「深く考える事、考え続ける、集中を続ける事ができなくなってきたなぁ・・」といった現象は起きてないでしょうか?
タスク切り替えストレスを軽減するには エビデンスレベル2
「そのストレスなんとかならないかな?」
「勉強しなきゃいけない時期で集中力が戻せるならもどしたい・・」
きちんとあります。
ひとつは簡単です。
Youtubeが多い方ならプレミアム会員になってしまえばいいです※もちろんお金かかります。2000円未満です。
そして、デジタルデトックスもいいですがこんな方法があります。
ポモドーロ・テクニック
25分は集中して作業をし、5分は休憩する。という方法の事です。
これは、一つの作業に没頭する時間を確保することに加えて、集中力を鍛える効果もあります。
集中力の維持と向上
スタンフォード大学
人間は長時間集中する事が難しいことがわかっています。
個人差はありますが30分前後が限界だという示唆もあります。
研究によれば、25分間集中して、その後5分休憩。
この流れで取り組むと集中力を持続させられる可能性があると言われています。ただし、誰にでも効果のある万能なテクニックではないため、効果の現れには個人差があります。
矢沙玖私は効果がありました。
特にこの執筆活動は、書きたい事がまとまらなくなったり、思考が散らばる事が私は多いです。それによってグダグダになるのを防ぐため、やる気に満ち溢れている日じゃない時は25分は執筆して5分休む。をやっています。
さらに、書き終わると疲れがどっときますし、見出し一つ書き終わるとひと段落したりします。まだ書きたい場合は、そこに10~20分の休憩をいれてます。
タスクの間にホワイトスペースを設ける
何か作業を続けたら、絶対に何もしない時間を間に挟み、また作業をする方法です。
このホワイトスペースとは、予定や活動の合間に「意図的な余白(何もしない時間)」を作ることで、脳の整理・休息を促し、創造性や集中力を高める考え方の事を言います。
例えば、会議と会議の間に15分間の何もしない時間を作る。だったり、作業と作業の間にぼーっとする時間を取る。これもホワイトスペースです。
このホワイトスペースの時間に、LINEを気にしたり、パソコンでメールをチェックするなど、何かしらのタスクは絶対に挟みません。考え事も無しです。
脳には「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」がある
(Raichle et al., 2001)
休憩中や何もしない時間に、脳は「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる回路を活性化させます。
DMNとは記憶の整理や内省、創造的思考を促進する役割を果たします。
つまり、意図的に何もしない時間(ホワイトスペース)を作ることで、脳の情報整理が進み、集中力や問題解決能力が向上します。認知負荷理論によれば、情報処理の負担が過度にかかると、学習効率や意思決定が低下します。
(John Sweller)1988.
休憩を適切に挟むことで、脳のワーキングメモリ(短期記憶の容量)がリセットされ、新しい情報を効果的に処理できるようになります。デフォルト・モード・ネットワークと創造性
ベンジャミン・バード(2012)
ワシントン大学の研究では「ボーッとする時間」を設けると、新しいアイデアが生まれやすくなることが示されています。スタンフォード大学の研究では、短時間の散歩(5〜15分程度)を挟むことで創造的思考が向上することが示されています。
ジョナサン・スクーラー(2014)
実験では、屋外を歩いた被験者の創造的思考テストのスコアが最大60%向上したと報告されています。ジャーナリング(書くこと)と内省
エミリー・ファルケ(2013)
ペンシルベニア大学の研究では、日記を書くことや静かな時間を持つことで、自己認識が向上し、ストレスが軽減されることが示されました。
これは、ホワイトスペースが「思考の整理」に役立つことを示す重要な証拠となります。 矢沙玖もやもやしたらメモに書くというのを普段からやっているので、私はこれめちゃくちゃ効果ありました。
そして、瞑想をちょっとだけやるようにしたことで、思考がぐるぐるしても、その思考を受け流せるようになり、ホワイトスペースが正しくやれるようになり、リフレッシュ感があります。
ホワイトスペースが有効である理由
(Marc Andreessen)(John Sweller)(Claudia Hammlet)
脳機能の回復(デフォルト・モード・ネットワークの活性化により、認知負荷が軽減される)
創造性の向上(マインドワンダリングや発散思考が活発になり、新しいアイデアが生まれやすくなる)
深層心理へのアクセス(自己認識を高め、ストレスの軽減や感情整理に役立つ)
(Jonathan Schooler)(Benjamin Baird)(Levy Herritt)
(Marcus Raichle)(Emily Falk)
まとめ
広告などが挟まったり、その後にまた元のコンテンツに集中するという連鎖は知らずのうちに負荷をかけている事を説明しました。
また、そのような習慣を放置しておくと、短時間でタスクがコロコロと切り替わる事が当たり前になってしまい、かつ、ショート動画などの流行によりその習慣が強化されてしまい、その結果集中が長く続かないといった問題を抱えやすい事をお伝えしました。
よって、広告が流れてストレスを感じるのは「脳が本来持っている集中力を維持しようとする防衛反応」という事が言えます。
「またCMかよ…」と思ったときは、 「今、自分は脳のエネルギーを消費させられているんだな」 と意識してみてください。
その対策として、課金して広告をカットするのもいいですが、ポモドーロ・テクニックやホワイトスペースを紹介しました。
個人差こそありますが、集中力の強化やリフレッシュに効果的です。
例えばここまで記事を読んでくださった後、5分だけでいいので何もしない考えない時間を作る。これを習慣にすれば集中しやすくなるとしたら、やってみる価値を感じますか?
今回はここまでになります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
『深く考える技術』 ダニエル・カーネマン
『ホワイトスペース: 余白の美学』 ジュリエット・シュワーツ
『デジタル・ミニマリスト』 カル・ニューポート