「NOを言うべきなのはわかるけど・・」トラブルの可能性を避ける反面、それを利用する奴らがいます。

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この記事のエビデンスレベルはです
この数字はAI(ChatGPT)による情報源の分析結果と著者の評価を基に設定しています。元となる参考文献は記事内に掲載しています。(ショートブログ除く)
「言うだけ時間も気力も無駄」
「できれば争いたくない」
「どうせ言ったって相手は聞きやしないよ」

大人な対応、冷静な判断と言えば聞こえはいいですが、一部の相手にとってはお腹を見せているようなものです。

正しい知識がある上での結論ならまだいいですが、泣き寝入りによる結論なら要注意です。
しかしなぜ、小さな争いを避けようとしてNOを言わなかったり権利を主張できないのでしょうか。

わかってても戦う一歩が億劫な心理 エビデンスレベル1

「向こうがおかしいのもわかってるんだけどねぇ・・」
「もめごとにするのめんどくさいし・・」
「あんなのを相手にするのも間違ってる」

このような気持ちもわかります。
ですが覚えておいてください。ご存知かもしれませんが今一度思い出してください。

手慣れた悪者はそういった感情を利用して好き放題しています

卑怯のループです。
そして、小さな裏切りや悪事は大きなものに発展します。

「大げさだよ。根拠は?」

もちろんあります。

モラル・ディスエンゲージメント理論

・悪事を働く人は、罪悪感を軽減するために相手の無力感や諦め利用する。
(例:「別に相手何も言ってこないし」「あいつだって「しょうがないなぁ」って言ってるし」)
・特に「相手が反撃してこない」と確信したとき、悪意ある行動はエスカレートする。
・泣き寝入りする人が多い環境では、加害者は「これが普通」「相手が弱いだけだから自分は悪くない」「嫌だったら反論すればいいじゃん?」と考え、悪事を続ける。

「もめごとにするのが面倒」と思う人が多いほど、加害者は罪悪感を感じずに行動しやすくなる事が説明できます。
そして泣き寝入りが続くと「やってもバレない」「何をしても大丈夫」と確信し、より大胆な行動に出る事が示唆されています。

アルバート・バンデューラ(1996)
「モラル・ディスエンゲージメント(道徳的分離)」

モラル・ディスエンゲージメント理論を補強する実験

実験内容
・被験者に「学習実験」と偽り、他者に電気ショックを与える指示を出した。
ショックのレベルは徐々に上がるが、被験者には「やめる」選択肢も持たせている。

結果
多くの人が指示に従い最大レベルの電撃(致死レベルとされるもの)まで与えてしまった。

この事から「相手が反撃しない」「指示者が自分を許している」と確信すると、人は残虐な行動をエスカレートさせる事が示唆されました。
よって「反撃しない人」に対しては、攻撃が増大しやすい事が説明できます。


スタンリー・ミルグラム
ミルグラムの服従実験(Milgram, 1963)
矢沙玖
矢沙玖

カスハラの背景がわかりそうな気がしませんか?

※ただし、ミルグラムの実験については批判的な意見もあり、その証拠もあります。

インフォームド・コンセント(事前の十分な説明)がなかった

実験の目的が事前に正確に説明されておらず、参加者は「騙されていた」と感じた。

よって、その後の倫理的ガイドライン(例えばアメリカ心理学会[APA]の倫理基準)では、参加者が実験の本当の目的を理解した上で参加することが必須とされている。

ボカロフとスミス(2001)

ミルグラムの実験から「人は権力者に服従しやすい」との結論を導いていますが、その再現性には疑問がある事も指摘されています。

実験環境が人工的すぎる問題
→実験室でのシナリオ(白衣を着た研究者からの指示など)は、日常生活ではありえない状況であり、現実の社会環境で同様の結果が出るかは不明。しかし闇バイトの事を想うと完全にズレているわけでもなさそうです。

補強する研究
ミルグラムの実験を倫理基準を満たす形で再現したところ、最大レベルの電気ショックまで進んだ参加者は、ミルグラムの実験よりも少なかったことがわかっています。いないわけではないのもポイントです。

そして、ミルグラムのデータを再分析した結果、実験の過程で参加者が自分で考え、迷う場面が多く、単なる服従では説明できないことが判明。

ジェリー・バーガー(2009)
ギブソン(2013)

指示者にただ従っただけではなく、状況要因も影響していた

ミルグラムは「人は権利者に服従しやすい」と結論づけましたが、その後の研究では「単なる服従ではなく、状況や関係性が影響する」と示されています。

被験者が「研究者のために協力する」意識があった可能性
研究者が「これは科学的に重要な実験だ」と説明したことで、参加者は協力者としての意識を持ち、指示に従った可能性が浮上しています。

補強する研究
ミルグラムの実験は「権利者への服従」ではなくアイデンティフィケーション(自己同一化)が影響したと指摘。
つまり、参加者は「ただ服従した」のではなく「科学を支援するために実験に協力した」可能性があると主張しています。

ハスラム&ライケス(2012)
矢沙玖
矢沙玖

実験や結論が完全に正しいわけではありません。
よって、「人間は一方的に恐ろしい面を秘めている」解釈しすぎるのは過剰です。
実際はいろいろな要因が絡んでいたり、そもそも実験のスタイルと実生活では差がありすぎて参考にならないのではないか?といった疑問が、ミルグラムの実験と相反しています。

ただし、再研究をしたり試行錯誤したところ、的外れだったわけでもないため「反撃を見せないから攻撃をし続けてやろう、もっと大きなことをしても大丈夫だ」という人間も一定数いる事は間違いありません。

さて、ここまでわかっててもなかなか相手と戦う気が起こらなかったり、NOを言えないのはなぜでしょうか?

戦いたいのに、一歩踏み出せない心理メカニズム エビデンスレベル2

「我慢するしかない」と思い込んでいるとき

「どうせ変わらないし、我慢するしかない…」

これは学習性無力感という心理状態です。
繰り返し理不尽を受けると「何をしても無駄」と思い込んでしまうんです。

学習性無力感

学習性無力感は、人が繰り返し制御不能な状況に置かれることで、状況を変えられないと感じ、努力することをあきらめる心理的状態を指します。
セリグマンは、実験的に「制御できない状況」が与えられた動物や人が、それを繰り返すことで自己効力感を失い、無力感に陥る様子を観察しました。

実験データ
セリグマンの有名な実験では、犬に電気ショックを与え、逃げることができないようにした後、その犬が自由に逃げられる状況になったときも、逃げる行動を取らなかったことが示されました。
この実験は、人間にも同様の現象が起こることを示唆しており、繰り返し無力感を学ぶと、未来の状況にも無力感を感じて行動を起こさなくなることが分かります。

結論
繰り返しの努力が無駄なものであると自覚してしまうと無力感が形成され、その結果「何をしても無駄」と思い込んでしまう心理が生まれます。
これが「我慢するしかない」と感じる原因となります。

マーティン・セリグマン
「やだ何それ怖い!なんとかして回復できないの!?」

バンデューラは自己効力感学習性無力感に繋がっているとし、4つの環境を用いれば自己効力感を回復することが可能だとしています。

環境つまり?えば?
① 達成経験自分で成功体験を積む小さな目標をクリアする
実際に行動し、行動した自分を認める
② 代理経験他者の成功を見ることで「自分もできるかも」と思う自分にとってのお手本となる人を見てみる(漫画のキャラでもOK)
③ 言語的説得周囲からの励ましやフィードバック「できるよ!」「できるじゃん!」「すごいよそれ!」と言われる
④ 生理的・情動的状態ストレスが少なく、リラックスしている状態メンタルや体調管理をする

戦ったほうがいいのはわかるけど「面倒くさい」「怖い」

このように、戦うメリットもあるし相手が間違ってるのは明白でも「面倒くさい」「怖い」と思ってしまうと「妥協した方が正しいかもなぁ」 と自分を納得させてしまいます。

これは認知的不協和として説明できます。

認知的不協和

認知的不協和は、矛盾した信念や態度を持つことに対する心理的な不快感を指します。
この不快感を解消するために、人は矛盾を減らす方向で行動や態度を調整しようとするのです。

実験データ
フェスティンガーとカールスミスの実験では、実験参加者が退屈な作業をしているときに「この作業は面白い」と他の参加者に伝えるように依頼されました。
報酬が少なかったグループでは、その後自分の行動を正当化するために、その作業が「面白かった」と信じるようになったことが確認されました。
これは「報酬が少ないのに退屈な作業をしている」と、矛盾した行動や態度を調整するために、心理的な不協和を解消しようとして、人が考え方を変えた(調整した)例です。

結論
「面倒くさい」「怖い」と感じることと「戦った方がいい」という理性的な思いが矛盾し、その矛盾を解消しようとする過程で、自分を納得させる行動をとる(妥協する)のが認知的不協和です。

レオン・フェスティンガー

ちょっと難しい話ですね。
「戦った方がいいのはわかるけど、めんどくさいor怖い」このセリフが矛盾していると言われて理解できるでしょうか。

認知的不協和では、この矛盾の事をモヤモヤとして解釈し、そのモヤモヤを消すために「いや、そもそも妥協した方がいいよな」のように自分を納得させてしまう事を指すんです。

このように妥協することで自分を納得させて状況を解決させてしまわないためには・・

小さな成功体験を積んで「妥協がもったいない、自分は戦えるかもしれないのに!」自己効力感を上げることが要です。
自分に力がある事を自覚すればするほど「戦う力があるのに妥協っておかしくね?」と認知不協和を起こし、行動するという選択肢があがるんです。
そのためのスモールステップとして「相談する」「証拠を集める」など、取り組みやすい事からでも十分ですよ。

また「なぜ戦ったほうがいいのか?」をメモなどに書き出したりすると、戦う理由が明確になり、認知のズレを修正できます。
「これだけの動機やメリット、今受けてる被害が大きいのに我慢っておかしくね?」プラスに認知的不協和を発動させる事も可能です。

「別に今のままでも安全だし、むしろ争う事の方が危険かも」

このように、現状維持を選ぼうとする心理についても不確実性回避の法則として説明できます。

不確実性回避の法則

不確実性回避の法則とは、人間が不確定な状況を避け確実性を求める傾向を指します。
ホフステードは、異文化間での行動パターンを調査する中で、この傾向が特に高い文化ではリスクを避ける傾向が強いことを明らかにしました。

実験データ
ホフステードの研究において、文化的な価値観が人々の意思決定にどのように影響するかを調査し、リスクを避ける傾向が強い文化では、変化や不確実性に対して強い拒絶反応が見られることを発見しました。
現状維持を好み、変更を避ける心理的な傾向が、行動をどのように選択するかにおいて現れることが確認されています。

結論
変化を選ぶことに不安を感じ、リスクを避けることで安全を選びたくなる心理が働きます。
これが「別に今のままでも安全だし、争うことの方が危険かも」という選択につながります。

ゲール・ホフステード

対策

「もし行動しなかったら、このままずっと変わらないかも」未来のリスクを意識すると、行動しやすくなります。
何もせず状況が好転することはほとんどありません。

矢沙玖
矢沙玖

私の過去、耐えるだけの毎日を送っていた頃は嬉しい事はほとんど舞い込んできませんでした。
嫌な環境が勝手に変わる事などなおさらありませんでした。


きちんと主張する事をし、主張するために学び、学びを始めたきっかけは、Youtubeでおすすめに出た動画に興味を持った事です。



例えばゲームが大好きで没頭している人の場合では、遊ぶゲームを変える事も立派な行動であり環境の変化です。

ささいでも「こんなの変化って言わないよな・・しょぼいよな・・」と思えそうなものでも、現状を変化させることが大切です。

それが習慣になれば変化を起こせる人間になれますよ。

争ったって「NO」を言ったって「どうせ勝てない」

このような諦めが初めから心にあると、そもそも挑戦する気力が湧きませんよね?

これは自己効力感の低さからくる心理として説明できます。

自己効力感

「自分はある状況において適切な行動をとり、それを成功させる能力がある」と信じる感覚のこと。

自己効力感が高い人は、新しい挑戦に積極的で、困難に直面しても粘り強く努力します。外交的内向的かは関係ありません。
逆に、自己効力感が低いと「どうせ無理」と諦めやすくなります。

アルバート・バンデューラ

「自分がやったってどうせ・・」といった心理があると

「自分がやっても無駄、失敗してきたし」といった学習性無力
「NOなんて言えるほど強くないから諦める事で納得する」といった認知的不協和
「NOを言った後が予想できなさすぎるから今のほうがマシ」といった不確実性回避

に繋がりやすいんです。当たり前ですが自己効力感はめちゃくちゃ大事です。

これまでに挙げた学習性無力感、認知的不協和、不確実性回避の法則の根本にもなりえます。

まとめ

あなたがもし、泣き寝入りをしがちなら。
妥協しがちなら。

今回の例は当てはまっていたのではないでしょうか。

そもそも泣き寝入りする必要はないんです。
NOを主張する権利があり、本来あなたの意見も聞いてもらうべきです。

NOを言えない妥協や泣き寝入りが戦うための知識がないだけなのだとしたら、これから学ぶ価値は十分にあります。

今回の記事で、一歩踏み出せない仕組みを理解できたなら自分を許すことができ、行動できるようになるためのおススメ行動法がみつかるかもしれません。

自己効力感が大きく関係しているという話でしたね。ささいなスモールステップのクリアでいいなら、何が出来そうですか?
正当なNOを言う事で、環境があなたにとって少しでも都合がよくなるとしたら言ってみる価値があると思いませんか?
NOが言えるようになれば、理不尽な扱いが減るとしたらどうですか?
NOを言っても理不尽が減らないどころか加速するなら、おかしな人間または組織だと判断することができ、撤退して正解じゃないですか?

今回はここまでです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

参考文献

『影響力の武器』(ロバート・B・チャルディーニ)

『予想どおりに不合理』(ダン・アリエリー)

『社会心理学』(デヴィッド・G・マイヤーズ)

『道徳感情と犯罪』(アルバート・バンデューラ)

『学習性無力感: 希望と絶望の心理学』(マーティン・セリグマン)

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