「理解できないならメモしろ」
「要領よくメモを取れ」
「メモなんて必要ない」
「思考の整頓が下手だねぇ」
このように、あなた自身の情報整頓能力を責められる経験はありませんか?
理解不足の押し付けなのでスルーがおすすめ エビデンスレベル1
「要領よく整理して理解できる人が普通でしょ。ちょっと能力足りないんじゃ?」
「ちょっと多く情報来たからって何?ちょっと考えればできるでしょ?」
こういった主張は認知心理学・脳科学の観点から誤りです。
「筆者が経験あるからムキになって調べたんでしょ?自己保身より勉強したら?」
責められた経験はないですが、一度にたくさんの事を理解するのは苦手ですし、したくもありません。
ですが、責められている人を何回も見かけたことはあります。
だからこそ学んでお届けしています。
結論、人が情報を処理する能力には、生まれ持った脳の特性や、そのときの認知負荷による影響があり一度に処理できる情報量には限界があるのが科学的な事実です。
よって「一度に言われてもわからない」は普通であり「他の人と比較されて責められる」こと自体がおかしいのです。
まず大前提として、人間が情報を一時的に記憶したり整頓できる量には限界があります。
理解できる範囲とそれを超えた場合の現象
マジックナンバー7(ミラーの法則)
「The Magical Number Seven, Plus or Minus Two」(George A. Miller, 1956, Psychological Review)
人間が短期記憶で保持できる情報の数は「7 ± 2 個」であることが判明しています。
つまり、一度に5〜9個程度の情報しか保持できず、それ以上は忘れる事が多いといえます。
認知負荷理論
「Cognitive Load Theory」(John Sweller, 1988, Cognitive Science)
情報量が多すぎると処理能力を超え、理解や記憶の定着が難しくなる事を説明しています。
この事から「要領よくやれ」「他の人はできてる」 という指摘は認知負荷を無視した暴論である事が証明できます。
記憶できる量や、理解への定着がどれだけできるかも常に一定ではなく、誰でも状況やストレスで変動することがわかっています。
にもかかわらず他者と比較する正当性については、比較対象の環境・前提が異なるため、合理的な根拠がなさすぎるんです。
でも自分ってほんとに劣ってるし・・ エビデンスレベル2
重複しますが、そもそもの環境や前提など、状況が全く同じ人はいません。
特定の状況下でそれが劣りとして出てしまう場面があることは否めませんが、それだけで自分を劣ってると解釈するのは判断も規模も大きすぎます。「主語がでかい」ってやつです。
劣りを心配するという事は、何かと比較しているから起こる感情です。
しかし、性別・家族構成・住所などが異なるように、職場一つにおいてもその職場を選んだ背景とその仕事に打ち込む熱量・人生で何を望んでいるのか?など挙げたらきりがありませんが、そもそもの背景が異なります。
よって、同じ基準だと誤認して比較することは不合理です。
「同じ人なんだからできるでしょ」
「同じ女性だったらわかるでしょ」
「同じ時期に入った新人なんだからさぁ・・」
「あいつor俺にもできたんだからね?」
「女の私にもできたんだよ?」
これ、比較基準ガバガバです。慰めで言ってくれている場合もあるのですべて煙たがらないように見極めてくださいね。
「また誰かのフォロー?使えないのは事実だろ」
向き不向きの問題です。使えないという単語は強すぎます。
そういった言葉を使う人にも「使えない」と周りに思われる場面は必ずあります。
持ちつ持たれつであり、自分が想像する範囲を満たしてくれないからといって使えないはあまりにも共感が無く、身勝手な感想です。
そしてなにより「劣っていないか?」と気にして慎重に真面目になっている人も少なくありません。
そういった方々への思いやりと配慮も持つべきです。
社会的比較理論
レオン・フェスティンガー(1954)
人は無意識に他人と比較し、「自分は劣っているのでは?」という不安を感じやすい事がわかっています。これは社会に適応しようとする心理が隠れているかもしれません。
しかし、比較相手の環境・経験・知識量が異なるため「同じ基準で比較することは非合理的」であるとも説明しています。
繰り返しになりますが、比較すること自体が間違っており「他の人はできてるよ?」という指摘は科学的に間違いです。
理解の催促の危険性 エビデンスレベル2
一度に処理できず責められる。こんな環境がたびたび発生するとどうなるでしょうか。
「うーん、メンタルにはよくないよね」
結論、もっと理解できなくなる可能性があります。
ストレスと記憶の関係
ルーベン・グルックスバーグ(2004)
研究によると、ストレスホルモンのコルチゾールが過剰に分泌されると、記憶力や判断力が低下することが判明しています。
ストレスが強い環境では、脳の情報処理能力が落ちることが示されており「急かされる・責められる」ことで、かえって理解力が低下するというパラドックスがあるとされています。
まとめ
一度にいろいろ言われても無理です。それを誰かと比較するなどナンセンスです。
もし今後、一度にいろいろ言われたり教わる事がある面では、一呼吸置くようにし、その行動について相手から理解を得てください。
間違っても、相手に話させ続けるのはストレス管理の面からやめてください。
そして万が一、理解量の問題で責められたときはストレスが情報処理能力を落とすことを思い出し、メモを取っているふりでもいいので行い、余計な口を挟めないように、反論の余地がある状況を作る事がおすすめです。「今メモとってるのでちょっと待ってください」など。
理解ある人はメモの時間もくれます。
メモを取り終わるまで待ってくれます。
メモを取った上で失敗しても教えてくれます。
失敗があって当たり前だと言ってくれます。
どれだけ失敗してできるようになるかも、人それぞれだという事を知ってます。
理解ある人と出会えたら、何度も確認しながら進めると良いでしょう。
最後になりますが、一度に多くの情報を処理するのが苦手!という面がデメリットとは限りません。
例えば、じっくり考えることで深い洞察を得られる場合もあります。
実際に、研究者や作家の間では、じっくり型の思考が活かされている例が多くあります。
今回はここまでになります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考文献
『考える脳 考えない脳』エルコノン・ゴールドバーグ
『ワーキングメモリと認知』アラン・バドリー
『ストレスと脳』ジョセフ・ルドゥー
『社会的比較と自己評価』レオン・フェスティンガー